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会計人のリレーエッセイ

2019年12月号

おとぎの国のIT先進国

平松 荘介

中国会

岡山県岡山市平松 荘介

おとぎの国にいるようなタリン旧市街地

おとぎの国にいるようなタリン旧市街地

 今年の春、念願かなってエストニアを訪れることができた。エストニアと言えば、IT先進国、スタートアップ、ユニコーンなどの言葉を思い浮かべる方も多いと思う。首都タリン空港に到着するやいなや、タクシー配車アプリ「Bolt」を利用してタクシーを予約、宿泊先のホテルへと移動した。早速この国を代表するサービスを利用し、IT先進国としてのエストニアを実感した。

 IT先進国ということもあり、タリンは近未来的な都市と勝手に想像していた。実際のところ、ヨーロッパの古き良き街といったほうが適切かもしれない。ホテルの部屋の窓からは、おとぎの国にいるような光景が広がっていた。世界遺産でもあるタリン旧市街地が近いせいもあったかもしれない。少なくとも世界の名だたる都市のようなエキサイティングな印象は感じられなかった。どちらかと言えば穏やかな雰囲気である一方、「若さ」を強く感じた。

 タリンの街中では、旧ソ連領の名残もかなり目にした。その最たるものが、宿泊したホテルにあったKGBミュージアムだ。KGBにより盗撮、盗聴設備が設置され、スパイ活動が行われていた旧ソ連時代のものが、ほぼそのまま残されていたものだという。スパイ映画を彷彿とさせるような大規模な設備から小道具まで展示されており、盗撮・盗聴活動が普通に繰り広げられていた。今のエストニアの姿からは全く想像もできない。

 わずか4日の滞在ではあったが、エストニアの光と影の部分を見ることができたように思う。エストニアが世界を代表するIT先進国として発展することができたのは何故か? やはり、強く感じた「若さ」ではないかと思った。世界の名だたる都市のようなエキサイティングな印象はないと感じたが、あくまで「世界の名だたる都市」であって、新しい概念で注目を浴びる都市になっていくのだろうと思う。そして、新しい概念が世界標準になっていくのかもしれないと感じた。

 ところで、エストニアの今後の展開を少しでも肌で感じてみたいとの思いから、「e-Residency(仮想居住権)」も取得してみた。酒席のネタぐらいにしかならないかもしれないが。

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