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会計人のリレーエッセイ

2019年02月号

二面性

吉井 利幸

中国会

  

岡山県岡山市吉井 利幸

税理士になってもう30年以上経つ。税理士になって良かったのか悪かったのか自分ではよく分からない。良かったのであろうと思うしかない。

最近、何事も二面性があることが理解できるようになってきた。まだまだ、と諸先輩方にお叱りを受けそうではあるが...(笑)。

社員が辞める。残念なことである。しかし、それは辞めた人にとっては良かったのかもしれない。また、それで新しい人が入社できる枠が生じ、新しい出会いがある。活性化する。恋愛もそうかもしれない。

ある社長が自己破産しそうな社員の自宅を買い取り、「社員に貸したい」と言う。「ある程度したら社員に格安で売ってやりたい」とも言う。私に意見を求める。勤め人で自己破産するには何か大きな問題があるような気もするが、「社長がそうしたいと思うならいいんじゃないですか。賛成です」。すると、「初めて賛成された。相談したらみんな反対した。分かった。貸す。しかし、従業員は幸せ者ですよね。私みたいな社長がいて(笑)」と冗談気にニコニコしながら話した。私は「従業員よりも社長のほうが幸せ者です。だって、そこまでしてやりたいと思えるほどの従業員と巡り会えたのですから。そんな社長はなかなかいません」と応えた。

ある社長が「8年前に貸した20万円がクジラの肉を添えて戻ってきた。喜んでいたら手紙が入っていて『50万円貸してほしい』と書いてあった。こりゃあ吉井さん、どうするべきかなあ?」と聞かれた。私は「社長、貸してあげてください」。すると、「吉井さん、税理士じゃなくても分かるじゃろ。20万円の金が8年間も返って来ないのよ。今度50万円貸したら戻ってこないのでは? わしももう80歳で」と問われた。「はい、間違いなく返ってきません」。「なら何で貸してあげてください、と言うのか理解できん」と社長。私は「以前に貸すほどの仲なんでしょ。今回貸さなかったらきっと恨まれます。社長はもう80歳を越えておられてお金には困っていない。むしろたくさんある。50万円ぐらい返ってこなくてもどうってことない。恨まれるより、返ってこないことが薄々分かりながら貸したら『さすが、あの社長は器が違う』と言われるでしょう。ご検討ください」と応えた。

何事も二面性。

私は税理士になって良かったのか悪かったのか...。

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