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中部会企画②

2020年07月号

国宝「犬山城」と
その城下町を歩く

室町時代の天文6年(1537年)に織田信長の叔父である織田信康によって創建され、現存する日本最古の木造天守を有することでも知られる国宝「犬山城」(通称、白帝城)。2019年末には2年がかりの令和の大修復(天守保存修理工事)が完了し、再びその美しい姿を取り戻しました。そんな犬山城の魅力や城下町の風情を残す町並み、犬山市内外の名物や見どころについて、一般社団法人犬山市観光協会の後藤 真司氏にお話しいただきました。

信長・秀吉・家康ら戦国武将の戦いの舞台

 国宝「犬山城」は木曽川沿いにある標高約85mの小高い丘の上に築かれた平山城です。天守が国宝に指定されている5城(他は姫路城、松本城、彦根城、松江城)の一つで、日本最古の木造天守を備えています。犬山城がある犬山市は、室町時代には尾張国と美濃国の境、現在は愛知県の最北端、岐阜県との県境に位置する人口7万5000人の都市です。名古屋市からは北25㎞に位置し、電車だと名古屋駅からは25分、岐阜駅から30分の距離にあります。

 犬山城付近は木曽川が濃尾平野に流れ出た場所にできた約1800㎢におよぶ扇状地の頂点にあります。そのため、この地は古くから軍事・交通・経済の重要拠点とされてきました。また、その小高い山の上からは周囲が一望できる他、木曽川を背にすることで防衛面を強化しやすいことから、この地に城が築かれたのだと思います。

 犬山城は一見すると3層ですが、実は内部は4階建て地下2階建て、天守の高さは地上約24mとなっています。天守の構造は高欄と廻り縁からなる望楼型となっており、天守からの眺めは素晴らしく、木曽川の雄大な流れと広大な濃尾平野を一望できます。天守最上階から見渡す360度の絶景は日本に現存する12天守の中でもトップクラスではないでしょうか。天守の他に現存する建物はありませんが、本丸の石垣や空堀は残っており、天守内部には築城当時の木材が多く残されています。

 ちなみに、犬山城は最近まで個人所有の文化財でした。江戸時代に尾張徳川家の付家老を務め、250年間、城主を務めた成瀬家が2004年まで個人所有していたのです(現在は公益財団法人犬山城白帝文庫に移管)。近年は来訪される方が増加傾向にあり、03年には年間20万人程度だった登閣者が、この2年は連続で60万人を突破しています。武将ブームとともに「気品漂う天守と立ち姿の美しさ」が国内外から高く評価されている証かと思います。

犬山祭の車山。13輌すべての車山にからくり人形が設置されている

犬山祭の車山。13輌すべての車山にからくり人形が設置されている

天守から木曽川下流方向の眺望。犬山頭首工ライン大橋(通称ライン大橋)を渡った北岸は岐阜県各務原(かかみがはら)市

天守から木曽川下流方向の眺望。犬山頭首工ライン大橋(通称ライン大橋)を渡った北岸は岐阜県各務原(かかみがはら)市

犬山城は外観こそ3層だが、内部は4階建て地下2階建てとなっており、天守の高さは地上約24mとなっている

犬山城は外観こそ3層だが、内部は4階建て地下2階建てとなっており、天守の高さは地上約24mとなっている

木曽川の南岸にそびえ立つ「国宝犬山城」。川の向こう側(北岸)が岐阜県、手前に本町通りを中心にした城下町が広がる

木曽川の南岸にそびえ立つ「国宝犬山城」。川の向こう側(北岸)が岐阜県、手前に本町通りを中心にした城下町が広がる

江戸時代の面影を残す犬山城下町のまちづくり

 そんな犬山城の城下町は、城を起点として南側に広がっています。町の中央部には町人町が置かれ、その外側に武家屋敷が広がるという構成となっており、城下町全体で犬山城を守り固めていたのです。

 見どころは、城からまっすぐに延びる犬山城の正面通り、本町通りで、このあたりは町を賑やかにするため、呉服屋や酒屋などが多く配置されています。そして、先の大戦で戦災を免れたこともあり、現在も江戸時代と変わらない町割り(町の区画)が残っているのです。本町通りに面する旧磯部家住宅などをはじめ、町衆が私財を投じて木曽川流域の良質な木材をふんだんに活用した2階建ての町屋の数々は、犬山城の築城に携わった二人の御用大工の系列職人が手掛けたものだそうで、それゆえに統一感のある町並みになったと言われています。

 現在の城下町には、グルメストリートとしての側面もあります。ローカルフードの代表格は何といっても団子や田楽などの串ものや五平餅。その他にも、懐かしい食べ物の店が並ぶ昭和横丁、町屋をそのまま改造したカフェやレストランにうなぎ屋、蕎麦屋など、さまざまなグルメスポットが並びます。また、レンタル着物での散策や吉本興業所属のお笑い芸人による人力車も、「SNS映えする」と人気です。

380年間にわたって受け継がれてきた「犬山祭」

 歴史ある犬山には伝統文化もしっかりと息づいています。江戸時代初期、寛永12年(1635年)に始まった「犬山祭」(毎年4月の第1土曜日に開催)もその一つです。高さ8m、重さ3t以上の13輌の車山が桜満開の城下町を巡る壮麗な祭りで、13輌の車山すべてにからくり人形を備え、夜は各車山に365個の提灯が灯され、華やかにライトアップされます。長年にわたって町人たちによって守られてきたこの祭りは、ユネスコ無形文化遺産、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

 また、犬山は1300年の歴史を誇る「木曽川鵜飼」でも知られています。毎年6月1日から10月15日まで催行されており、現在は4名の鵜匠が漁法を受け継ぎ、伝統の夜間の夜鵜飼に加えて、2003年からは昼間に行う昼鵜飼も行っています。

 犬山には犬山城の他にもう一つ国宝があることも紹介しておきたいと思います。織田信長の実弟、織田有楽齋が建てた茶室「日本庭園 有楽苑(国宝茶室如庵)」がそれです。現在は名鉄犬山ホテルの敷地内に移築されており、建造物保存修理のために公開は一時休止となっていますが、2021年秋頃に公開される予定になっています。

 まさに歴史・文化の地として進化を遂げてきた犬山ですが、その郊外にも「日本モンキーセンター」「日本モンキーパーク」「博物館 明治村」「野外民族博物館 リトルワールド」「犬山温泉」といった多彩な観光スポットがあり、「名古屋の奥座敷」として幅広い年代に楽しんでいただけるようになっています。見事に修復を遂げた犬山城をご覧になるとともに、こうした犬山ならではの文化や自然、レジャーもあわせて楽しんでいただければ幸いです。

犬山城下町の串グルメの双璧、田楽とだんご型のみそだれ五平餅

「博物館 明治村」。明治時代の歴史的建造物を移築・保存する野外博物館・テーマパーク。帝国ホテル正面玄関などの移築建造物件が67件もあり、うち11件が重要文化財となっている。名鉄「犬山駅」からバスで20分

城下町を走る「お笑い人力車」。吉本興業所属の若手芸人4組が土日祝の開催日に日替わりで車夫を務めてさまざまな名所を案内する

愛知県の最北端にある犬山市

木曽川の昼鵜飼

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