コロナ禍で生まれた需要を活かす
キッチンカーでアフターコロナ時代の
地方創生をリードする!!
本コーナーではアフターコロナを見据え、新たなチャレンジをされている 企業様を取材し、これからの時代に即した経営のあり方を模索します。 今回は、キッチンカーのプラットフォーム事業を展開する (株)Mellow(メロウ)の西真田 寛人取締役にご登場いただきました。
プラットフォームを軸に普及・拡大
御社の事業概要から伺いたいと思います。
西真田 寛人・Mellow取締役(以下、敬称略) 当社は2016年に設立し、現在はキッチンカーと空きスペースのマッチング事業の他、キッチンカーの開業支援やコンサルティング事業などを展開しています。
コロナ禍ではどのような変化がありましたか。
西真田 コロナ禍以前のキッチンカーの主な出店場所は東京のオフィス街だったのですが、コロナ禍を機にその傾向が変わりました。まず、テレワークが急速に広がったことで、オフィス街での需要が減少しました。一方、これに代わって急拡大したのが住宅街でのキッチンカーのニーズです。その勢いは全国各地に拡大していき、地方展開が進んでいきました。
御社ではどのようにマッチングを行っているのでしょうか。
西真田 「SHOP STOP」という当社独自のプラットフォームを活用しています。このプラットフォームにはキッチンカー事業者と不動産オーナーが登録しており、Mellowはそれぞれに対して必要な出店情報を提供しています。また、キッチンカー事業者は管理システムを使って売上などのデータを管理することが可能です。それに加え、空きスペースのオーナーは空きスペースの収益化を効率的に進めることができますし、エンドユーザーはアプリを介して、いつどこにどんなキッチンカーがいるかを確認することが可能です。
SHOP STOPにはどのくらいのキッチンカー事業者と空きスペースのオーナーが登録しているのですか。
西真田 登録されているキッチンカー事業者は3000件、出店場所数は1600件ほどとなります。このボリュームは国内でトップクラスであり、当社はこのプラットフォームを軸にキッチンカーという新たな業態の健全な普及・拡大に努めています。
コロナ禍以降の対応エリアの拡大はどのように推進していったのでしょう。
西真田 都内ではまずタワーマンションなどにアプローチしていきました。タワーマンションなどの住宅街はオフィス街と異なり、デベロッパーや管理会社だけでなく、マンションの住民で構成されている理事会などの承認を得る必要があります。当初は勝手が分からず苦労する部分もありましたが、従来よりも説明を丁寧に行うなどして出店スペースを獲得し、着実にマッチング実績を伸ばすことができました。
地方都市については、コロナ禍を契機に自治体が外出難民支援に乗り出したことが追い風になりました。事実、私は2019年から関西でキッチンカーの普及・拡大に努めていますが、この間に自治体などの要請を受けて、早くも30件くらいのプロジェクトを手掛けることができました。
地方創生の可能性を追求
キッチンカー事業者が急増する中で、注意していることなどはありますか。
西真田 当社では安心・安全なキッチンカー運営を重視しており、事業者登録にあたっても、自動車免許証や営業許可証の他、記入に1時間ほどかかるエントリーシートを提出してもらい、厳正な審査を経た上で登録するようにしています。また、登録後もアレルギー表示の徹底や食中毒などのリスク軽減に関する注意喚起に力を入れています。
コロナ禍後の需要はどうなっていますか。
西真田 コロナ禍が収束してからは空きスペースを活用するというだけでなく、商業ビル全体の福利厚生や満足度の向上、公共空間のにぎわい創出といった観点からキッチンカーの誘致を検討するケースが増えています。
イベントなどでの需要も復活しましたか。
西真田 地方で開催されるイベントなどでの需要が爆発的に伸びていますが、その背景には人口減少などの課題があるようです。例えば、地域で夏祭りなどを再開したいと思っても自治会などの人手が足りず、私たちに声がかかるといったケースが増えているのです。キッチンカーには柔軟に移動したり、メニューを変えられるといった強みがあるので、今後はその部分をさらに追求し、地方創生に貢献していきたいと考えています。
地方展開を加速させるために取り組んでいることがあればお聞かせください。
西真田 SHOP STOPを活用したマッチング事業を地場企業と一緒に展開しています。例えば秋田では、カーディーラーのトヨタカローラ秋田・秋田トヨペットとタッグを組んでいますし、その他の地域でもさまざまなビジネスパートナーとともにキッチンカー事業者と空きスペースのオーナーとのマッチングを推進しているところです。
キッチンカーを始めるにはどれくらいの初期投資が必要になるのでしょうか。
西真田 車両の購入費と改修費が250~400万円程度とされており、比較的、取り組みやすい業態と言えます。ただ、どの業態に関しても言えることですが、生半可な気持ちで始めては意味がありません。なぜキッチンカーなのか、どんなものを食べてもらいたいのかといったことを考え抜いた上でチャレンジしてほしいと思います。
今後の展望についてはいかがでしょうか。
西真田 SHOP STOPの拡大とともに、キッチンカーの価値をさらに高めていきたいと思っています。日本では今後も人口減少と少子高齢化が進んでいきます。そうした中で、店舗ごと移動できるキッチンカー、ひいては店舗型モビリティには生活の質を高めたり、維持する上で大きな可能性があるように思うのです。ゆくゆくは飲食に限らず、生活全般に関わることを店舗型モビリティが担っていくという未来を描くことだってできるかもしれません。
コロナ禍を経て、キッチンカーの可能性がさらに拡大してきたことが分かりました。今後の展開を楽しみにしています。