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投資ノウハウ

短期的な投機か長期的な投資か 自身の投資スタイルを明確に

混迷を極めるアフターコロナの時代においては、どのような資産運用のあり方が求められるのでしょうか。 資産運用のプロフェッショナルであるFP法人シグマの吉田 篤氏に解説いただきます。

KNOW-HOW 01

吉田 篤 氏 よしだ・あつし

FP法人市府馬(シグマ株式会社)
代表取締役

大学卒業後、日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に入社。個人富裕層、法人顧客への資産運用設計コンサルタントに従事。営業表彰やCS(顧客満足度)表彰などを受賞。その後、会計事務所系のコンサルティング会社を経て、2013年独立。ライフプランに沿って独立性・専門性の高い資産運用アドバイスを行うため、FP法人シグマを設立。

 コロナ禍は落ち着いてきたものの、2022年以来の世界的なインフレはとどまるところを知りません。こうした混迷の時代にあっては、従来以上に投資のスタンスを明確にすることが肝心です。まずはご自身の資産運用のスタイルが「投機」なのか、「投資」なのかということを明確にしましょう。端的に言えば、「投機」は値動きに注目し短期的に利益を出そうとするスタンスのことで、もう一方の「投資」は本質的な価値を重視し、長期的に利益を出そうとするスタンスのことを意味します。ご自身にどちらが向いているのか、あるいはその二つを組み合わせたほうがよいのかを検討してみてください。

 その前提の下、アドバイスをさせていただきます。資産運用の初心者でかつ「投資」を自身のスタイルにする場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISA(少額投資非課税制度)を軸にした投資信託がお勧めです。例えば世界株式に投資をすることで、世界全体の経済成長を長期的に享受することができます。ただ、その際にはあくまでも長期的な視点に立ち、基準価額の上下に一喜一憂しないようにしてください。もちろん、株式投資という選択肢もありますが、あくまでも長期的な資産運用を目的とするならば、あまりテクニックに固執しすぎないようにすることです。初心者の場合、頑張ってテクニックを勉強するあまり、「一発当てよう」としてしまいがちですが、それでは失敗のリスクが大きくなるので要注意です。また、株式投資をする場合はできるだけ分散投資を心がけ、極力、リスクヘッジするとよいでしょう。

 他方、「投機」の場合は、短期的な株式投資やFXなどが主流になります。そして、その際に重要になるのがテクニカル分析です。この分析手法は過去の値動きから将来予測を立てるというもの。投資環境が「上昇トレンド」か「下落トレンド」かを判断し、相場を当てにいきます。ただし、バブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災など大きなニュースになる時には、トレンドが急変し大きな損害を被ることにもなりかねません。日常的に値動きを追いかけ、瞬時の判断力が必要となりますので、時間に余裕がある上級者向きと言えます。

 やはり、中長期的な視点に立つと、最終的に重要なのは株価ではなく、企業の実績や業績などのファンダメンタルズです。税理士の先生方は数字のプロフェッショナルでいらっしゃいますので、投資先の決算書、さらにはIRなどの公開資料をできるだけ詳細にチェックし、企業の実態を分析した上で投資判断を下していただければと思います。

 その他、安定した資産運用に適した投資対象はいくつかあります。例えば、債券もその一つです。債券は国や会社などにお金を貸し出す「借用証書」のようなもので、あらかじめ決めた期日まで貸し付けて、その間に金利を受け取ることができるのが特徴です。しかも、あくまでも貸しているだけなので、貸出先が破たんしない限りお金は戻ってきます。こういった特徴から景気が悪くても資産拡大が期待でき、景気後退期に株式から資金が流入して資産が拡大する傾向があります。つまり、株式と反対の動きをすることが多いため、株式と債券をバランスよく保有しておけばリスクヘッジを図ることができるのです。

 株式や債券以外にも、金や原油、不動産など、世の中にはさまざまな投資対象があります。これらは株式や債券だけではカバーできないリスクを軽減してくれることがあります。例えば、金はテロや災害、軍事衝突など世界情勢が不安定な状況では安全資産として機能します。長期にわたって安定した資産運用を目指すなら、こういった投資対象も視野に入れてみるといいでしょう。

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