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こんなにある!生成AIの活用法

東京商工会議所がレクチャーする 生成AIの活用入門ガイド !!

東京商工会議所では、2023年に「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」を公開するなどして、中小企業に向けて生成AIの活用を促しています。 そこで、東京商工会議所 中小企業部 IT活用推進担当の皆様に「中小企業でも使える生成AI実践例」をテーマに、3回にわたってお話を伺います。

生成AIをDXに活用

東京商工会議所 中小企業部IT活用推進担当の皆様

 DXは中小企業に多大なメリットをもたらします。事実、東京商工会議所が所管する中小企業のデジタルシフト・DX推進委員会が「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(調査期間は2023年5月15日~6月22日)を実施したところ、デジタルシフトを進めることによって得られた効果として、「業務効率化」が最多で81・4%、その他にも「業務の見える化」や「社内コミュニケーション促進」といった効果が挙げられました。人手不足が叫ばれる中、DXはまさに中小企業の救世主と言えるでしょう。


 しかし、一方でその進め方に頭を悩ませている企業が多いのも事実です。現にデジタルシフト・DXの課題として最も多く挙がったのは(下部のグラフ参照)、「旗振り役が務まるような人材がいない」(33・8%)、「従業員がITを使いこなせない」(29・5%)といった人材面に関する課題で、次いで「コストが負担できない」(27・0%)といったコスト面での課題、そして「業務内容に合ったデジタルツール・サービスが見つからない」(24・5%)、「導入の効果が分からない、評価できない」(23・0%)といったツール選択・効果に関する課題が続きました。

デジタルシフト・DXの課題(一部抜粋)

 この結果を見ても分かるように、中小企業にとってはDXを推進したくとも人材がいないことが目下の課題となっており、東京商工会議所でもリスキリングの機会を提供するなどして、デジタル人材育成に向けた支援を展開してきました。ただ、リスキリングには相応の時間を要するので、同時に業務の省力化・効率化を推進していく必要があります。そうした中、この調査速報が出た23年7月頃にはChatGPTをはじめとした生成AIへの注目度が非常に高まっていたので、私たちも「これを人材不足の解消に役立てられないか」と考え、検討を始めました。東商けいきょう(四半期に一度実施する中小企業の景況感に関する調査)の2023年4−6月期結果では、ChatGPTを含む生成AIの活用状況について、「活用している」と回答した企業の割合が5・7%、「現在活用していないが、今後活用を検討している」が29・6%と、活用に前向きな企業が合わせて3割強もいらっしゃいました。7月頃は世間的にもビジネスへの導入に賛否が分かれている時期ではありましたが、「中小企業にこそ生成AIを活用してもらうべき」と考え、「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」を作成することになりました。

 なぜ中小企業が生成AIを活用すべきかといいますと、生成AIは中小企業でも気軽に導入できる上に、身近な業務に活用でき、効果が出やすいからです。中小企業の場合は意思決定のスピードが早い傾向があるので、すぐに導入・活用することができると思います。

 例えば、社長が自社の経営方針を策定したいと思った時に生成AIにアイデアを出してもらうのも一案ですし、研修会などでの挨拶文の叩き台を生成AIに作成してもらい、徐々にブラッシュアップしていくのもよいでしょう。事実、先述した「東商けいきょう」の調査結果で、生成AIを「活用している」と回答した企業では「コンテンツ作成・校正(社内外向け文書、メール・挨拶文等)」に活用している例が最も多く、57・1%に達していました。 「生成AIにどう指示を出せばよいか分からない」と二の足を踏んでいる方もいるかもしれませんが、「中小企業のため の『生成AI』活用入門ガイド」では「経営課題別プロンプトガイド」として、「業務効率化」「人手不足(採用・育成)」「売上向上」などテーマごとに生成AIを活用できる業務とその際に使用する指示文(プロンプト)をまとめているので、ぜひこちらを活用いただきたいと思います。

 例えば「売上向上」では先述したアイデア出しに関連するものも含まれており、「店名の考案」などの事例を掲載。プロンプトの参考例として「フレンチレストランを開業したいので、フランス風のお店の名前の候補を10個出してください。語感が良く記憶に残りやすいもので、日本語の意味も併記してください」というものを掲載しています。

経営課題別プロンプトガイド 目次

 私たちは常々、「DXはスモールスタートから始めるべき」と話していますが、まさに生成AIに関しても同様です。そうやって身近なところで使ってみると、その他にもさまざまなシチュエーションで活用できる方法がひらめくようになると思います。まずは積極的に利用するところから始めてみてはいかがでしょうか。なお、東京商工会議所では生成AI関係のみならず、デジタルシフト・DX推進に向けた支援事業(ぴったりDX)も展開しているので、ぜひご活用ください。

税理士がDXのカギを握る

 最後になりますが、私どもとしては、中小企業がDXを推進していく最大のポイントは税理士の皆様にあると認識しています。商工会議所も地域に根差した団体ではありますが、東京商工会議所の会員数は8万4000件程度であり、到底、全ての中小企業を網羅することはできません。

しかし、ほとんどの中小企業は税理士の方と顧問契約を結んだり、確定申告を依頼したりしています。税理士以外にもさまざまな士業やコンサルティング職がありますが、税理士の皆様ほど中小企業にとって身近で、中小企業の内情を深く理解している存在はいないはずです。だからこそ、皆様には生成AIも含め、デジタルツール・サービスを活用するメリットをご理解いただいた上で、中小企業にDXを推奨いただければと思います。皆様の一言が、DX推進の起爆剤になると確信しています。

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