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昭和歌謡とシティポップ

VOL.1

Z世代をはじめとした若者たちの間で、懐かしの昭和歌謡・シティポップが流行しています。
はたしてなぜ、このような現象がみられるのでしょうか、そしてどんな楽曲が受け入れられているのでしょうか。
「昭和」に精通したライター、田中 稲氏に3回連載でそのあたりを紐解いていただきました。

田中 稲たなか いね

田中 稲たなか いね

ライター/アイドル、世代、懐かしブーム、昭和歌謡を中心に執筆活動を展開中。『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、ライフスタイル誌『CREA』のWEBサイトでコラム「田中稲の勝手に再ブーム」(https://crea.bunshun.jp/list/tanakaine)を連載中。

 昨今、シティポップや昭和歌謡がZ世代と呼ばれる若者たちから絶大な支持を集めています。私は京都芸術大学で非常勤講師を務めているのですが、講義ではっぴいえんど(大瀧 詠一、細野 晴臣、松本 隆、鈴木 茂によるバンド)の話をしたところ、「よく聴く」という反応が多くあり、若者にシティポップや昭和歌謡が浸透しているのだと改めて感じました。

 そこで、まずはシティポップと昭和歌謡の特徴を紹介したいと思います。シティポップは高度経済成長期が終わった1970年代から80年代にかけて流行したジャンルのことを指しますが、実は近年、2010年代の後半頃から海外の音楽ファンたちの間でもにわかに人気を集めていました。外国人旅行者が大滝 詠一や山下 達郎、竹内 まりやをはじめとしたシティポップを代表するアーティストのレコードを物色している姿を報道番組などでご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。その後、国内外の若者たちの間であらためてシティポップが脚光を浴びたのがコロナ禍の最中、2020年末頃のことです。松原 みきのデビュー曲である『真夜中のドア〜Stay With Me』がSpotifyをはじめとした音楽系のサブスクリプションサービスで爆発的にヒットしたのです。

 なぜコロナ禍でシティポップが受け入れられたのかという点については、シティポップの耳心地の良さが大きいように感じています。シティポップは洋楽に影響を受けたものが多く、スタイリッシュでリゾート感溢れるメロディに特徴があります。コロナ禍でステイホームを余儀なくされる中、このシティポップ特有の、爽快さと開放感に多くの若者たちがホッとしたのではないでしょうか。ナイアガラ・トライアングル(大滝 詠一による企画ユニット)の楽曲などはその典型で、ぼんやりと聴いているうちに気持ちが晴れやかになります。

 では、昭和歌謡はどうかというと、岩崎 宏美の『シンデレラ・ハネムーン』、和田アキ子の『あの鐘を鳴らすのはあなた』、ラッツ&スター(鈴木 雅之を中心としたコーラスグループ)の『め組の人』など、ストーリー性のある楽曲が若者たちの間でも時代を越えて愛されています。

 昭和歌謡のアーティストはスター性があり、独創的なパフォーマンスやきらびやかな衣装を魅力としていました。また、今ではアーティストが作詞・作曲を手掛けるケースが増えていますが、昭和歌謡では作詞・作曲・編曲などを分業するのが当たり前で、各ジャンルのプロフェッショナルの技を組み合わせた“総合芸術”といった様相を呈しています。西城 秀樹の『傷だらけのローラ』、沢田 研二の『時の過ぎゆくままに』などはその最たるものといえるでしょう。そのため、歌謡曲の場合は視覚的に楽しみたいという若者も多く、YouTubeなどで視聴されるケースが多いようです。

 最後に、今後、流行りそうなアーティストとして、スターダスト☆レビューと谷山 浩子を挙げておきたいと思います。どちらもテレビの出演は少ないですが、ライブ活動により根強い人気を誇っています。CMでもよく使われていますので、聴けば「あの歌の人か!」とすぐわかると思います。サブスクなどで興味を持たれたら、ぜひライブに足を運んでみてください。

いちおしのシティポップ・昭和歌謡の楽曲

愛は心の仕事です提供:バップ

『愛は心の仕事です』

RA MU
作詞:賣野雅勇
作曲:和泉常寛

菊池桃子と松浦義和が中心となって結成したRA MU(ラ・ムー)のヒット曲。フュージョン・ロックなサウンドと菊池桃子の耳心地の良いウィスパーボイスが魅力的。シティポップブームで再評価を受けている。

シンデレラ・ハネムーン提供:ビクターエンタテインメント

『シンデレラ・ハネムーン』

岩崎宏美
作詞:阿久 悠
作曲:筒美京平

1978年にリリースされた岩崎 宏美の14枚目のシングル。軽快なディスコサウンドと、大人の恋を描いた歌詞が印象的な楽曲に仕上がっている。岩崎 宏美の歌唱力はもちろん、艶のある声そのものを堪能できる名曲。

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