CHANNEL WEB

昭和歌謡とシティポップ

VOL.4

Z世代をはじめとした若者たちの間で、懐かしの昭和歌謡・シティポップが流行しています。
そこで、今回は昭和から平成にかけての沖縄の歌謡曲やポップスに注目。
「昭和」に精通したライター、田中 稲氏にそのあたりを解説していただきました。

田中 稲たなか いね

田中 稲たなか いね

ライター/アイドル、世代、懐かしブーム、昭和歌謡を中心に執筆活動を展開中。『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、ライフスタイル誌『CREA』のWEBサイトでコラム「田中稲の勝手に再ブーム」(https://crea.bunshun.jp/list/tanakaine)を連載中。

 HYやAwichなど現代の音楽シーンにおいても沖縄出身のアーティストは大活躍していますが、実は沖縄音楽は昭和の頃から徐々に全国的に浸透し始めていました。中でも私が最初に衝撃を受けたのは幼少期に耳にしたフィンガー5です。『恋のダイヤル6700』を初めて聴いた時には、少年少女たちのハイトーンボイスとアメリカンポップスを彷彿とさせる阿久 悠さんの歌詞に、思わず気分が高揚してしまいました。当時はフィンガー5が沖縄出身であることをまったく意識していませんでしたが、振り返ってみると、1972年までアメリカの統治下にあり、アメリカのカルチャーが身近に存在していた沖縄ならではのアーティストだったようにも思います。

 また、これも沖縄というイメージがなかったのですが、南 沙織さんの『17才』にも心惹かれました。歌詞の中に「17才」というフレーズは登場しないのですが、南 沙織さんの可憐な雰囲気、歌詞の中に描かれている美しい海と空、そして「私は今 生きている」というフレーズからは、おのずと17才ならではの生命力と躍動感が感じられます。それにこの楽曲も改めて聴き直してみると、沖縄の情景に見事にマッチしているような気がして、とても心地良いです。ちなみに、同じく沖縄出身のアイドルとしては、桑江 知子さんの『私のハートはストップモーション』も大好きな楽曲の一つです。

 沖縄音楽といえば沖縄民謡が有名ですが、実は私たちは昭和の頃から知らず知らずのうちにその軽快なメロディやリズムに慣れ親しんできました。志村 けんさんの『変なおじさん』の元ネタが喜納 昌吉さんの『ハイサイおじさん』だからです。ちなみに、喜納 昌吉さんといえば、夏川 りみさんをはじめ、名立たるアーティストがカバーした名曲『花~すべての人の心に花を~』でも有名です。また、沖縄民謡を現代風にアレンジしたアーティストとしては、沖縄の伝統的な楽器と現代の楽器を融合させたりんけんバンドの功績も素晴らしいと思います。

 沖縄出身ではないものの、沖縄らしい楽曲を生み出したアーティストも多数存在します。その筆頭といえば、THE BOOMの『島唄』ではないでしょうか。沖縄音楽にのめり込んでいた宮沢 和史さんが平和を願って作った楽曲で、発表当時は県外のアーティストが沖縄や沖縄民謡をモチーフにしたことに批判的な声も上がっていたそうですが、次第にその魅力が沖縄の皆さんの間にも浸透し、今や押しも押されもせぬ沖縄ソングとして知られるまでになりました。なお、『島人ぬ宝』『涙そうそう』などの名曲を生み出した沖縄出身のアーティスト、BEGINの比嘉 栄昇さんも『島唄』のことを「沖縄音楽を全国区にしてくれた」と高く評価しています。

 こうして全国区になった沖縄音楽は、その後、安室 奈美恵さんやSPEED、DA PUMP、MAX、三浦 大知さんといった沖縄アクターズスクール(※)のアーティストたちによって、ダンスミュージックを通じて「沖縄」がエンタメを盛り上げる一つのブランドとなっていきました。MONGOL800やORANGE RANGE、さらにはCoccoさんとKiroroなど、沖縄ならではのエネルギーと情緒を感じさせるアーティストたちも次々と台頭していきました。これからも独自のミックスカルチャーを背景に、沖縄音楽は国内外の人たちを魅了し続けることでしょう。

※沖縄県那覇市にあるタレント養成学校、芸能プロダクション

沖縄の代表的な昭和歌謡

恋のダイヤル6700©ユニバーサル ミュージック

『恋のダイヤル6700』

フィンガー5
作詞:阿久 悠
作曲:井上 忠夫

アップテンポで軽快な楽曲とアメリカンポップスの影響が色濃い歌詞、そしてハイトーンボイスがマッチした1973年の大ヒット曲。沖縄県出身の5人兄妹が踊りながら、楽しそうに歌う姿が多くの人たちの心を掴んだ。

花〜すべての人の心に花を~©ユニバーサル ミュージック

『花〜すべての人の心に花を~』

喜納 昌吉&チャンプルーズ
作詞:喜納 昌吉
作曲:喜納 昌吉

1980年にレコーディングされて以降、世界60カ国でカバーされたといわれる沖縄音楽の代表曲。沖縄民謡をベースにしながらも自由で伸びやかなメロディとプリミティブなメッセージ性が、今なお世界中の人たちの胸を打ち続けている。

▲ ページトップ