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特集 SPECIAL FEATURE

大事なのは不動産の価値を正確に把握すること

相続した土地の活用方法2025


相続の先には、受け継いだ土地をどう活用するかという問題が生じます。 超高齢社会を背景に相続案件が増え続ける中、税理士への土地活用に関する相談も増加することが予想されます。 一般的にはアパート・マンション経営、コインパーキング経営などが挙げられますが、他にも活用方法は多様にあります。 そこで、本特集では不動産活用の専門家である尾嵜 豪氏(おざき たけし)にそのポイントや事例を紹介いただきました。

相続した土地の活用方法2025

VectorMine/shutterstock.com

尾嵜 豪 氏

株式会社ウィンドゲート
代表取締役

尾嵜 豪 氏

明治大学政治経済学部卒業。ゼネコンでの勤務・経験を経て、エンターテインメント企業にて不動産売買・賃貸・管理・コンサルティングの責任者を務める。独立後、(株)ウィンドゲートを設立し、代表取締役に就任。都心の不動産のアドバイザーとして、単身者の賃貸仲介から富裕層の相談に至るまでさまざまな顧客を対象とする不動産投資コンサルティングを実施。著書に『子供に残せる家を買う 売れる・貸せる・継げる! 価値ある家選び』(クロスメディア・パブリッシング)など。

相続に紐付く不動産の問い合わせが増加中

 相続に紐付く不動産関連の相談は増加傾向にあり、今や当社への相談のうち、1~2割程度が相続関連のものになっています。その多くは「仲が悪い親族と共有持分になってしまった。共有するのも嫌だから、早く売却したい」といったものです。中には共有持分でも所有し続けた方が良い場合もあるので、そういう時には他士業の方とも連携しながらお客様の利益が最大化するように努めています。

 売却するにしても、所有し続けるにしても、重要になるのが不動産の価値を正しく理解することです。相続人同士が仲違いしていたとしても、不動産の価値が明確であれば、それを基に冷静な判断や話し合いを進められるようになります。

 もっとも、相続においては「親の言うことは聞いても、兄弟の言うことは聞かない」といったことになりがちなので、不動産を所有している方にはぜひ、ご自身が元気なうちに子どもたちにどのように相続するかを伝え、あらかじめ納得しておいていただきたいと思います。

放置はNG!売却か活用を選択すべき

 近年、空き家や土地の放置が問題視されることがしばしばありますが、ご自身の資産を守る上でも相続した不動産を放置するのはNGです。そもそも、建物は使わなければ老朽化が進み、外装や内装はもちろん、電気やガスなどの設備にも支障が生じてしまいます。「放置していた空き家が漏水し、多額の水道料金を支払うことになってしまった」といった話を耳にすることもあるほどです。また、シロアリの発生源になったり、庭木が生い茂ったりして、近隣住民からクレームが寄せられることもあるでしょう。

 さらに、空き家の状態が長く続き、安全面や衛生面、景観面、環境面などで著しく有害となる恐れがある場合は、行政の調査を経て「特定家屋等」に指定され、固定資産税の軽減措置を受けられなくなる恐れもあります(図1)。かといって、解体・整地にも多額の費用がかかるので、もし活用の目途が立たないのであれば、自分以外に有効活用してくれる人や事業者を探し、素早く売却してしまうのがお勧めです。管理や納税などの義務から解放されるので、気楽になりますし、すぐに現金収入を得られるというメリットもあります。

 ただ、立地や建物の状態によっては想定よりも安価になってしまうケース、ともすれば売却できないケースもあります。特に再建築不可物件のように建築基準法の義務(4m以上の幅を持つ公道に接しているなど)を満たしていない不動産、農地や山林などは売却や活用が難しい傾向があります(後半に活用法を紹介)。

賃貸物件としての活用法

 相続した不動産の代表的な活用法といえば、マンションやアパートなどの賃貸物件にすることでしょう。建物は使ってもらうことで寿命が延びるので、収入面のみならず、維持管理の面でもメリットがあります。

 ただ、それにはいくつかの注意点があります。もともとマンションやアパートとして収益を出していた物件を引き継ぐ分には問題ありませんが、新たに物件を整備する場合には外装・内装・設備費などの初期費用がかかることを念頭に置いてください。特に最近は人件費や資材、燃料代が高騰しているので要注意です。そのあたりを加味した上で家賃や管理費を設定しなければならないのですが、それが高過ぎたり、物件の状態や立地が悪かったりすると借り手がつかないことがあり、初期費用が回収できないリスクが生じてしまいます。ある意味、経営の才覚が問われる活用法ではありますが、その分、初期費用を減価償却費にしたり、メンテナンス費用を経費にしたりすることができるので、節税効果が見込めるというメリットもあります。

 一方で、不動産業者からのマスターリース(不動産の一括賃貸借)の誘いには細心の注意を払ってください。不動産業者が「当社のマスターリースであれば、確実に利益を出せます」と言ってくることがありますが、「確実」ということはありませんし、初期費用すら回収できないケースも多々あります。甘い言葉に惑わされず、相続する不動産の価値を冷静に見極めた上で検討していただきたいと思います。

駐車場としての活用法

 初期費用を抑えたい場合には駐車場にするのがお勧めです。建物がある場合は解体する必要がありますが、建物を新設するよりは安価に整備できますし、空き地にしておくよりも固定資産税の負担を軽減することができます。特に都市部であれば、コインパーキングの事業者に委託するのも一案です。そうすれば、整備や管理、集金などの業務を業者が一貫して行ってくれるので、土地さえ提供すれば、安定した収入を得ることができます。

 しかし、駐車ニーズが低い立地だと、十分な売り上げをあげることができない点はあらかじめ念頭に置いておく必要があります。逆に立地が良ければ、自動車1台分の敷地で月20万円ほど売り上げている例もあり、その場合は自動車10台分の敷地があれば月200万円の収益を見込むことができます。それくらいの実績を維持できるようであれば、立体駐車場にして、さらなる収入アップを目指してもいいでしょう。

民泊としての活用法

 近年の傾向ですと、民泊として活用するという事例も増えてきました。とりわけ最近はインバウンドの需要が拡大していることもあり、観光地などで民泊を経営するケースが増えており、1泊1人2万円以上と高価格帯でありながらも高稼働率を維持しているところもあります。さらに古民家や町屋造りなど日本ならではの建物であれば、より付加価値が高くなる傾向があります。

 ただし、民泊新法によって、民泊施設は稼働日を年間180日以内に抑えなければならないので、そのあたりも考慮した上で採算性が合うかどうかを検討しなければなりません。他方、民泊というと管理面に不安を感じる向きもあるかもしれませんが、地方の物件でも管理会社などに委託することができるので、オーナーとして経営のみに従事するというスタイルをとることもできます。

売却や活用に不向きな不動産の活用法

再建築不可物件の場合

 相続した不動産を売却するにしても、活用するにしても、ポイントになるのはなんといっても立地です。そこで、ここからは売却や活用に不向きな不動産について、どのような活用法があるかを紹介していきたいと思います。

 まずは相続案件で意外と多い再建築不可物件のケースを見てみましょう。「再建築不可物件がそんなにあるのだろうか」と思われる方もいるかもしれませんが、中には周辺も含めた大規模な開発が頓挫し、道路が敷設されず、再建築不可物件となってしまった例などもあります。そうでなくとも、接道していると思っていた道路が、よくよく調べてみたら建築基準法上の道路に該当しておらず、再建築不可物件になってしまっているケースなどもしばしばあるので、注意しなければなりません。

 こういったケースの場合、立地が良ければ賃貸や駐車場、民泊などの活用法も考えられますが、そうでない場合は建築基準法の要件を満たしている近隣の方を探し、安価でもよいので購入してもらうのが無難でしょう。

農地の場合

 農地については、農地法による規制があり、住居を建てることができないなど、用途がかなり限定されます。市街化区域であれば、農地転用によって宅地化を検討できますが、そうでない場合(市街化調整区域など)、しかもご自身で農業を営まない場合は、近隣で農業を営んでいる人や団体に売却するか、貸すのが最善かと思います。

 あとは、日当たりが良好であることが前提となりますが、農地に支柱を立てて太陽光発電の設備を設置する営農型太陽光発電の導入を検討することも可能です。こちらも農地転用の許可を得る必要がありますが、うまくいけば農地として活用しながら発電収入も得ることができるようになります。

 しかし、太陽光発電の売電価格は以前のように固定かつ高価格ではありませんし、地域差もあるので、検討時には採算性をきちんと確認していただきたいと思います。また、太陽光発電に関しては、ケーブルなどの盗難被害が相次いでいるので、セキュリティ設備の導入や保険への加入も検討した方がよいでしょう。

 また、相続人が農業者でない場合は特定農地貸付方式を利用し、市民農園を開設することも可能です。しかし、農地の種別によって要件が異なったり、農業委員会の許可を得なければならないケースもあるので、相応の準備が必要になります。

山林の場合

 よく「山を持っている」と言う方がいますが、実際には山林の一部である場合がほとんどです。美しい景観があり、道路が近く、電気や水道が通っているのであれば、キャンプ場をはじめとしたアウトドア施設にうってつけですが、正直、そこまで条件が揃った不動産はあまりないと思います。

 では、その他にどういった活用法があるかというと、ある程度まとまった敷地があり、日当たりが良好なのであれば、太陽光発電施設として活用する、産業道路が近くに通っているのであれば、建設会社などの資材置き場として活用してもらうといったパターンが考えられます。

不動産の価値を見極めて最適な活用を

 その他、あまり立地を問わない活用法としては、貸倉庫やトランクルーム、コインランドリーなども想定されます。これらの活用法であれば、都市部から多少離れていても、あるいは騒音が問題になりがちな幹線道路や線路が近くにあっても運用することができると思います。

 ただ、先述した通り、売却・活用のいずれにおいても、まず大事なのは不動産の価値を正確に把握することです。立地地域の人口動態や再開発計画を確認したり、専門家のアドバイスを得たりしながら、相続する不動産の価値を見極めた上で検討していただきたいと思います。

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