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特集 SPECIAL FEATURE

社員インタビューで求人原稿の質を上げ、
採用活動の土台を固める

ハローワーク停滞期における
人材採用戦略

近年、ハローワークを経由しての人材採用が減少しています。厚生労働省によると2024年は採用割合が11.6%と 過去最低だったといいます。その背景には、民間の人材サービスの拡大に加え、企業と求職者とのミスマッチの広がりがあります。 そこで、本特集では昨今の人材採用の方法を概観し、採用コンサルタントによる採用活動をする上で基盤となる考え方や、 ハローワークで結果を出すための求人票記載の仕方など、最新の人材採用戦略を紹介します。

Part1
多様化する採用チャネルを把握し自社の採用戦略に活用する

 ハローワークを経由した人材採用が減る中で、民間の採用ツールは年々、増加傾向にあります。厚生労働省が2025年3月に発表した「企業における採用経路の選択動向等に関する調査研究事業」によると、「ハローワーク」や「求人情報・求人サイト」、「職業紹介」などの採用経路の利用率を比較したとき、回答企業1057社のうち、7割強の企業が「ハローワーク」を利用しているといいます。次に多いのは「求人情報・求人サイト」(主に無料型や掲載課金型、クリック課金型に該当するIndeedや求人ボックスのような求人検索エンジン)の7割強で、他の採用経路を複数併用して、採用活動に取り組む企業が全体の8割を占めました。

 調査によれば、多くの企業が最初に活用しているのがハローワークなどの「無料型」の採用ツールでした。採用活動の初めに、ハローワークに求人票を掲出し、応募状況に応じて「リクナビNEXT」「マイナビ転職」などで知られる「掲載課金型」の採用ツールや、求人広告がクリックされた回数に応じて費用が発生する「クリック課金型」、求職者から応募があった際に費用が発生する「応募課金型」など、別の手段を併用して、採用活動を進めているようです。

 また、近年は成果報酬を軸にした採用手段、ツールも増えていますが、図1にもあるように多種多様で、かかる費用もさまざまです。初期費用が必要な「スカウト&入社課金型」は求人側が求職者にスカウトメールを出し、求人掲載企業と求職者のマッチングを目指す仕組みとなっています。このサービスはハイクラス人材を対象にしたものも多く、採用費用は高額になる傾向にあります。同じく成果報酬型の「入社課金型」は、初期費用は発生しないものの、紹介料が採用する人材の想定年収の2~3割、もしくはそれ以上になることもあり、やはり費用が高額になる傾向が強いようです。


 さらに、最近では元社員を再雇用する「アルムナイ採用」や、自社の社員から友人や知人などを推薦してもらい採用につなげる「リファラル採用」など、採用ツールにこだわらない採用手法も定着しつつあります。

 次からは、中小企業の人材採用の支援に強い(株)ユウミの小口 正史氏と社会保険労務士の山崎 広輝先生に、お二人の考える採用の基本を伺います。

Part2
「釣り理論®」を学び採用活動の基本を整える


ターゲット・要件定義の明確化からスタート

 多くの経営者はハローワークに求人票を出して、有料の採用ツールを活用すれば採用活動を始められると考えがちですが、それだけでは準備不足で、自社にマッチした人材はおろか、人手不足を補うことすらできません。採用ツール選びに着手する前に、採用の狙いから見直してみませんか。

 例えば、右記の求人をみて皆様はどう思われるでしょう。

 一見すると、採用はかなり苦戦すると思われるかもしれません。ですが、当社がヒアリングしてみると、朝7時半に勤務開始ではあるものの、15時半には確実に終業でき、残業や休日出勤がなく、オンオフをきっちり分けたい人、夕方から育児や介護に専念したい人にとっては、最適な職場であることが明らかになりました。ゆえに従業員が定着していたのです。これを強みに求人票に手を加えたところ、無料の採用ツールに掲載しただけで、半年間に6人も採用することができました。

 もちろん、欲しい人材の条件や専門性、職場の所在地、緊急性などによって違いはあるでしょうが、それはこれからご紹介する「釣り理論®」を参考に、皆様の採用方針を整理、検討いただければ幸いです。

 「釣り理論®」は私が考案した独自の理論です。これは採用の要素を①釣る魚=ターゲット・要件定義②釣り竿=求人原稿・魅力訴求③釣り餌=求人タイトル・写真④釣り堀=チャネル・使用媒体⑤釣り上げ=スピード感・採用フローに分類し、それぞれ最適化を推進することで、成功率を高めていくというものです。よく「人手不足が深刻化し、地方で人材を集めることが難しい」と耳にします。ですが、東京圏に比べて、地方の方が求人を出している会社が少なく、有効求人倍率が低くなる傾向があるため、「釣り理論®」を実践すれば、地方の方がわざわざ有料の採用ツールを導入せずとも十分な成果を上げることが可能です。

採用成功率を高めるための「釣り理論®」と採用ツールの活用法

 では、最初に①ターゲット・要件定義をどう決めていくかについてお伝えします。ここでは「欲しい人材」「活躍している人材」「採用できそうな人材」といった要件をすべて満たす人材を松竹梅の3つのレベルに設けておくといいでしょう。具体的には年齢、スキル、マインド、職務経験、年収、転職理由などの要件について、最低ラインの梅(Must)、最高ラインの松(Want)、両者の中間にあたる竹(Better)を決めていきます。

 ①を決めましたら、次は②~④について考えていきましょう。中でも特に重要なのが②と③です。まずは②釣り竿。よく、民間企業の採用ツールを導入すると、媒体サイドから求人原稿を作成するライターを紹介されることがあります。しかし、その多くは業務委託を受けたライターが会社ホームページや過去の求人などの情報を基にまとめただけであることが多く、自社が持つ真の魅力をまったく伝えられていません。原稿作成を安易に外部へ委託すべきではないことをここでは強調したいと思います。

 ではどう魅力的な求人原稿を用意すればいいのでしょう。「自社の強みが分からない」と自信を持てない経営者もいますが、先ほどご紹介した倉敷市の企業の例のように皆様の会社には必ず強みがあるはずです。ここで重要なのは社長だけでなく、エース人材や現場社員などに入念なインタビューを行うことです。「そもそもどうして彼らは当社を選んだのか」、「なぜ辞めないで続けているのか」と改めて聞いてみると、「上司が声かけしてくれて優しい」「給与は低いが残業が少ない」など、あまり意識していなかった強みと弱みが明確になるはずです。もし、社内の人間同士では本音を聞き出せないということであれば、それを外部に依頼してもいいでしょう。たとえ、インタビュー中に不満を漏らしていたとしても、従業員がどうして根付いているのか、その理由を集め、解明していくことが肝要です。

 この下準備で、②は充実した内容になるはずです。では次に、③釣り餌について解説します。一例を挙げると、求人原稿のタイトルに「未経験枠」「人間関係で悩まない」「土日祝休み」などの文言を入れることで、求人原稿を読んでくれる可能性を広げることができます。また写真に関しては、応募者の属性が掲載写真に近い傾向にあるので、ターゲットにしたい層の年齢に合わせると効果的です。こういった観点からも、私は②釣り竿や③釣り餌は絶対に自分たちで準備することを推奨しています。

 釣り竿と釣り餌が決まったら、いよいよ④釣り堀を決めていきます。多くの企業は「リクルート」や「マイナビ」などの掲載課金型を使いがちですが、まずはその採用ツールが保有しているシミュレーションデータを提示してもらい、採用成功率が見込めるかどうかを見極めてください。先ほども申し上げた通り、地方であれば、無料掲載できるハローワークやIndeedでも十分成果を出せますので、いきなり有料の媒体を活用しない方が賢明です。そして求める人材の希少性や専門性、緊急性によって釣り堀を徐々に変え、併用していき、時には複数の広告代理店にシミュレーションや費用対効果などを確認していけばいいでしょう。⑤釣り上げでは②の段階で整理した自社の長所・短所を面接の段階で受験者に伝え、ミスマッチを無くしていくことが肝心です。

Part3
令和の時代にマッチしたハローワーク・求人票の活用法

新たな機能を把握して求人票の可能性を最大化

 ハローワークを活用する際に、まず意識していただきたいのは求人票の提出時に「オンライン自主応募」のチェック項目を「可」にすることです。この項目は利用開始時に「不可」となっているのですが、これを「可」にすることで、求人側と求職者がお互いのマイページを参照しながら、スカウト機能を使ったり、ダイレクトメッセージをやりとりしたりすることができるようになるのです。2020年のシステム改修時に搭載された機能で、まだあまり知られていないのですが、これを活用するだけで、転職希望者にアプローチしやすくなります。有料のスカウト型の採用ツールと遜色がないほど使い勝手もよいので、ぜひとも活用していただきたいと思います。

 次いで具体的な求人票の書き方について紹介しましょう。まず押さえておきたいポイントは、求人原稿を文字数制限のギリギリまで埋めること。例えば「仕事の内容」の項目は360字まで書けるのですが、多くの会社はその半分以下しか埋めていません。余白があるとハローワーク側が「紹介状を持参してください」「求人票は雇用契約書ではありません」といった不要な定型文を付してしまうのですが、この一文があることで転職希望者にとっては敷居が高くなり、応募数が減ってしまいます。同様に「仕事の内容」以外の「特記事項」や「備考」などについても、内容が重複しないようにそれぞれ文字数ギリギリまで埋めるようにしてください。


 そういった求人原稿の内容について意識したいのは①誰にどのような価値を提供する仕事なのか②働く側にどのようなメリットがあるか、といった点を明示することです。求人側は社員に求めることを書いてしまいがちですが、求職者からすればそこでどう働けるのかという点の方が重要です。特に若い人材を採用したいのであれば、キャリアパスやエース社員の活躍ぶりを具体的に紹介するのもいいでしょう。例えば、介護職の募集の場合、「職種」に「介護職員」とシンプルに書くのはNG。「【マネージャー候補】ケアスタッフ/特養利用者サポート業務」といった具合に、語感を良くしながらキャリアビジョンを加え、さらに誰にどのような価値を提供する仕事なのかを加えることが肝要です(「仕事の内容」の具体例はカコミを参照)。

 あと、もう一つ忘れてはならないのが写真(10点まで)をきちんと掲載することです。実は以前から掲載できたのですが、今もまだ掲載している会社は少なく、求人全体の2割程度しかありません。会社の雰囲気を伝えることができますし、掲載していない会社との差別化を図ることができます。また、写真説明も追記できますから、「写真1、写真2」などと簡素なものではなく、具体的な説明文を添えておきたいものです。

 一時期に比べて、停滞傾向にあるとされるハローワークですが、依然として膨大な量の求人情報、求職者情報が掲載されていますし、活用の仕方によっては無料でありながらも、十分な成果を上げることができます。まずは本記事を参考に自社の求人票を見直してみてください。


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