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ITリテラシー向上塾

ちまたで話題の
AIエージェントのキホンと仕組み

ITに関する知見を高めていただくための本コーナー。
第6回はAIエージェントの基礎と活用法について、
一般社団法人AICX協会 代表理事の小澤 健祐氏にレクチャーしていただきました。

小澤 健祐 氏 おざわ・けんすけ

一般社団法人AICX協会 代表理事

小澤 健祐 氏 おざわ・けんすけ

日本最大のAI専門メディア『AINOW』の元編集長で、AI関連記事をこれまでに1000本以上執筆。『生成AI導入の教科書』『AIエージェントの教科書』を刊行した他、千葉県船橋市生成AIアドバイザー、NewsPicksプロピッカーなども兼任。AI関連の講演やモデレーターも多数務める。

POINT1

AIエージェントの機能

 AIエージェントとは生成AIを核とし、特定の目的や継続的なタスクのために設計された自律的なプログラムであり、環境の認識、情報の処理、意思決定、行動の実行を一貫して行うことができるシステムです。つまり、頭脳(生成AI)に記憶(RAG/検索拡張生成※)と手足(各種プログラムやAPI連携)が付いたことで、「相互作用」(人間との自然な対話や感情理解を行う)、「学習と適応」(経験から学び、パフォーマンスを上げる)、自律性(人間の継続的な指示なしでも自ら判断・行動できる)、「行動能力」(システムを操作し、タスクを実行する)、「環境認識」(周囲の環境や情報源を認識・活用する)といった機能が備わり、複雑なプロンプト(指示)がなくても、人間のように業務を遂行することができるようになったわけです。
 もっとも、一足飛びに人間のような高度な業務ができるわけではなく、多くの場合、図1のように組織の熟成度や目的に応じて段階的に進化していきます。まず企業が目指すべきは「ワークフローエージェントの構築」で、このレベルでは単なるチャットの枠を越え、複数の社内システムと連携し、より複雑な一連の業務手順を自律的に実行できるようになります。例えば、複数のステップからなるワークフローであっても、AIエージェントの自動化ツールで「顧客からの問い合わせメールを受信→顧客情報システムで過去の対応履歴を検索→関連する製品情報を社内文書から検索→回答案を作成し担当者に提示→担当者の承認後、顧客にメール返信」といった具合に指示を組み立てれば、いとも簡単に定型業務に落とし込むことができます。

※質問や指示に関連する情報を外部データソースから検索し、大型言語モデル(LLM)に提供することで、より正確で文脈に即した応答を可能にする技術



POINT2

「ワークフローエージェント」を育てる

 中には「難しそう」と思われる方もいるかもしれませんが、実際にAIエージェントの自動化ツール(OpenAIなら「GPTs」、Microsoftなら「Copilot Studio」、Googleなら「Google Workspace Studio」)を使うと、プログラミング技術を一切使わず、視覚的にタスクを組み合わせながらワークフローを構築することができます。例えば、メール整理や文書作成、ニュースのピックアップといった日常業務も簡単な指示を入れるだけで、自動的にタスクを分解し、ワークフローの候補を示してくれるので、誰でも簡単にワークフローを構築することが可能です(図2)。例えば、生成AIに「定例ミーティングを設定して」と指示を出すと、日時や出席者、議題の設定、そして招集メールの送信を遂行してくれますし、それをカレンダーにも連携することができます。
 ただし、AIエージェントに自律的な判断を下してもらい、人間のように働いてもらうには業務判断の前提となる知識や情報(経営理念や自社情報、顧客情報、対話履歴など)を共有することが必須になります。そうすることで、AIエージェントはどんどん成長し、あたかも本物の社員のように判断・行動してくれるようになります。
 そして、将来的にはこの成長した複数のAIエージェントが相互に連携し、人間の介入を最小限に抑えて、外部環境の変化を学習・適応しながら自律的に価値を創造できるようになるでしょう。これがまさに「DXのラストステージ」とも言える段階だと思います。

図2 Copilot Studio(コパイロットスタジオのAIエージェント作成画面)



POINT3

AIエージェントと人間の業務分担

 では、実際にどのような業務をAIエージェントに任せればよいのでしょうか。その判断基準になるのが「思考深度」と「定型度」です。どれだけ「思考の深さが求められるか」、どれだけ「タスクが定型化されているか」といった〝ものさし〟でAIとの役割分担を決めればいいのです。例えば、単純で定型的な業務(定型的なデータ入力、簡単な計算処理、請求書の自動発行、毎月の売上データの集計と提携レポートの作成、メールの自動振り分け)などはAIエージェント単独で実行可能ですが、ある程度の情報処理や分析、柔軟性が必要になる業務(顧客からの問い合わせ対応、従業員の勤怠データ集計と簡単なレポート作成、採用候補者の履歴書からのキーワード抽出と一次スクリーニング)などは人間が適宜サポートしたり調整したりする必要があります。これらがさらに複雑化し、ゴールへのアプローチも多岐にわたる業務(市場トレンド予測、新製品のコンセプト案の作成支援、顧客への個別提案メールの草案作成)になると、人間との協業が必須になります。そして、より複雑で自由度が高い業務(新しいビジネスモデルの創造、企業ブランドイメージの再構築、M&Aの検討など)になると、人間が主導し、AIには壁打ち相手やサポート役を担ってもらうことになるでしょう。
 AIエージェントの普及により、近い将来多くの業務が根底から見直しを迫られることになると思います。私たちにできることは組織のことを深く理解し、そのミッションや経営方針を前提にAIエージェントの設計思想を構築する「AIアーキテクト」のような存在になることなのかもしれません。

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