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不屈の経営者に聞く

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南原 竜樹株式会社LUFTホールディングス 会長

どん底から這い上がった後も 年商1000億円を目指し続ける

さまざまな逆境を跳ねのけてきた経営者にスポットを当てる本コーナー。 第1回目のゲストには、テレビ番組『¥マネーの虎』に出演されていたことでも知られる 南原 竜樹氏に、波乱万丈の歩みについて語っていただきました。

Profile

なんばら・たつき/1960年生まれ。愛知工業大学を中退後、高級外車の輸入販売を開始。88年オートトレーディングルフトジャパン(株)(現・(株)LUFTホールディングス)を設立し、高級外車の輸入権を獲得するなどして事業を拡大。2005年にMGローバーの倒産によって経営危機に直面するも、見事に再起を果たし、現在は若手人材の育成などに注力している。

南原社長はテレビ番組『¥マネーの虎』に出演されていたことでも知られていますが、当時どのようなビジネスを手掛けていたのですか。

南原 竜樹・LUFTホールディングス会長(以下、敬称略) 学生時代から高級外車の輸入販売を手掛け、28歳で会社を設立して以降はアルファロメオの代理店を買収したり、TVRやMGローバー、ロータスなど超一流メーカーの輸入権を獲得したりして事業を拡大。ピーク時の年商は100億円に達していました。

2005年にローバーが倒産し、20億の特別損失を計上したことで窮地に陥ったと聞きました。

南原 ローバーについては、当時の売上の4割くらい、事業投資でいうと7割くらいを占めていたので、一大事でした。事業投資が大き過ぎると思われるかもしれませんが、ディーラーに設置されている看板などもインポーターが用意・管理する必要がありましたし、当時はテレビや自動車雑誌の広告にも相当の投資をしていたので、かなりの金額になっていたのです。膨大な数のローバーの在庫が全て水の泡になり、特別損失として20億円を計上することにしたのです。

その時に倒産を覚悟しましたか。

南原 バランスシート上は特損分を加味しても40億円くらいの余力があったので何とかなると思っていました。ところが、20億円の特損を出した途端、銀行が一斉に「もう新規の貸付はできないが、返済は予定通りにお願いします」と言ってきて、状況が一変。私たちのように事業投資が大きい会社の場合、複数の銀行から数億円ずつ融資を受け、それらを一件当たり5年くらいで返済し、終わったらまた融資を受けるというサイクルで経営を成り立たせています。銀行から新規の融資を受けられないことで、キャッシュ・フローが急激に悪化しました。

どのように対処したのですか。

南原 まずは人や資産のリストラに取り組みました。200人以上いた社員を泣く泣く解雇して資産を処分し、銀行からの負債をできるだけ返済することにしたのです。またローバーの在庫についても、捨てるのはもったいないから、1台100万円くらいで買い手を探したりと、とにかく月々の返済に充てていきました。しかし、それでも返済が追いつかず、時には携帯電話を2000台分、法人契約してそのインセンティブを返済に充てるなどしてしのいだこともありました。

倒産させた後に再起を図るといった選択肢もあったかと思います。

2002年にTVRのディーラー権を取得した時の一枚

南原 ①ほとぼりが冷めるまで海外に身を潜める②会社を倒産させ、関連会社の社長になる③人と資産を整理して再起を図るといった選択肢があったわけですが、このうち③以外は会社を潰すことになるし、それでは再起を図るチャンスが巡ってこないだろうと直感していました。それで一人で負債を完済し、新たにチャレンジする道を選んだのです。一時は1日1食、50円のカレーパンで食いつないだり、ホームレスになってしまったこともありましたが、周囲の支えもあって何とか毎月の返済を成し遂げることができました。よく「なぜ心が折れなかったのか」と聞かれますが、とにかく「平均的な人間になりたくない」「人生の酸いも甘いも楽しみたい」という気持ちが強かったのがよかったのかもしれません。テレビゲームに何時間も興じる人たちがいますが、私はその興奮を人生そのもので味わっているのです。

負債を完済してからはどのようなビジネスに取り組まれたのですか。

南原 元手がかからない不動産仲介や人材仲介、そしてM&A仲介などのビジネスに取り組みました。その時に役立ったのが以前から付き合いがあった社長たちとのネットワークです。
 例えば、税金対策や新規事業の立ち上げのために急遽、不動産を売買したいという経営者はそれなりにいるもので、その需要と供給をマッチングさせることで、思いの外、順調に売上を伸ばすことができました。また、時には運を味方につけることも大切です。例えば、こんなことがありました。「外食チェーン事業を50億円で売却したい」という話をいただいた時に、なかなか思い当たる人がおらず、ふと訪ねた焼き鳥屋で話の種に「50億円で外食チェーンを買いたい人おらんかな」と聞いてみたのです。すると「いますよ!」ということになり、その翌日にはある会社の役員と面談することが決まり、トントン拍子で売却が決まったのです。「動かなければ運は来ない」ということを実感しましたね。もっとも、中には運や縁だけではなく、経験や実力が必要になる案件もたくさんあります。自画自賛したくなるようなスキームを考え出し、顧客ニーズに見事に対応できた例も多数ありますしね。

そういった機会をモノにするにはどうすればよいのでしょうか。

南原 何より人柄が大切だと思います。「あいつが言うなら聞いてみよう」「あいつが考えたことなら面白そうだ」と思ってもらえるかどうかが肝心なのです。もちろん、それには日々の研鑽が欠かせません。そういう意味でも、エジソンの「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」というのは至言であると思います。

そうやって2016年には見事に再び年商100億円を達成されたそうですね。現在は経営の一線から退かれたそうですが、どのようなことに取り組まれているのですか。

南原 とにかく面白いことに挑戦したいという一心で、キックボクシングをしたり、YouTuberとして活動したりしてきました。そして、いま最も力を入れているのが若手人材の育成です。月5万円の相談料で、相談回数の上限を定めずに、上場会社から学生までいろんな若者たちの悩みや相談に応じています。相談内容のレベルはさまざまですが、一人ひとりに全力で向き合っていますね。

ご自身では何かビジネスアイデアをお持ちでしょうか。

南原 3D動画ソフトの発展に注目しています。特に海外のクリエイターの動向が興味深くて、たった一人でソフトやAIを駆使し、ハリウッドの大作映画のようなクオリティーの動画を作り上げる人たちがいるのです。こういう新しいテクノロジーを若者たちと一緒に育て、年商1000億円クラスのビジネスに育て上げてみたいですね。

素晴らしい目標ですね。これからのご活躍にも期待しております。

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