2019年06月号
沖縄から4000km圏の市場
日銀那覇支店が4月に発表した「県内金融経済概況」によると、県内景気は全体として拡大しており、同判断は67カ月連続になる。その要因は個人消費、観光、公共投資、設備投資の増加、そして住宅投資の高水準での推移によるもので、短観における「良い」超は28四半期連続となり、バブル期を超えたという。
人口増も顕著である。県の推計人口は3月1日現在145万1392人、前年同月比で4258人増加、平成27年国勢調査(確報値)人口比で1万7826人(1・24%)の増加となっている。人の動きは観光入域者数においても増加の一途をたどる。本年3月は88万4000人と前年同月比5・6%増、3月単月では過去最高を更新したという。世界遺産の「琉球王国のグスク及び関連遺産群」で沖縄の歴史や文化に触れ、年間500万人の入園者が訪れる海洋博公園では、1月末に「美ら海花まつり」が大規模に開催される。真冬の2月は桜の花を愛で、ゴルフに興じ(地元メンバーはゴルフの予約が困難)、沖縄を存分に味わえる時節である。
平成30年度には国内外から999万9000人、前年比4・4%(41万9100人)増の観光客が訪れ、巷ではハワイを超えたとの評判である。
沖縄の活況は、20年後のGDPが世界の52%を占め、世界の工場から市場へと変革することが予測されるアジアの発展と無縁ではない。沖縄県は、半径4000㎞圏のアジア市場に着目し、沖縄の地理的特性や自然、文化のソフトパワーを生かして物流、情報通信、観光リゾート産業を中心とする「沖縄県アジア経済戦略構想」の実現に取り組んでいる。こうした動きは、日本政府の「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針)」における沖縄の優位性や潜在力を生かした日本経済再生の牽引役となるべく、施策の推進とも呼応するものである。
アジア経済発展の背景には、積極的な経済特区の活用がある。沖縄が歴史的にも深く関わってきたアジア市場と向き合っていく上で、わが国が一国二制度にどこまで踏み込むのか、強い関心が持たれる。