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先進事務所の取り組みイメージタイトル画像©Nakigitsune-sama/shutterstock.com

〝売り手市場〟に打ち克つ!

最新の採用トレンドを
理解し 計画的に組織をつくる

コロナ禍を経て、デジタル化が進展し、 さらに激動の時代に直面している会計事務所業界。 そこで、本コーナーでは船井総合研究所の能登谷 京祐氏に 昨今の業界の動向や先進事務所の取り組みについて語ってもらいます。

能登谷 京祐 氏(のとや きょうすけ)

株式会社船井総合研究所

能登谷 京祐 氏(のとや きょうすけ)

第三経営支援本部 士業支援部
マネージャー

船井総研入社後、人材ビジネス業界・弁護士業界・介護業界・物流運送業界をコンサルティングし、現在は会計事務所向けのコンサルティングに従事している。WEBマーケティング集客、営業パーソン育成を中心とした即時業績アップから、新規事業の立ち上げなどを行うマーケット付加まで、多くの成功事例を持つ。近年はクライアント企業の専門特化分野の確立に力を入れており、税理士・会計事務所向けの経理コンサル事業の付加~事業拡大を手掛けている。

採用難の3つ目の波が会計事務所業界にも到来

 労働人口の減少が続く中、2000年前後のITバブル期、コロナ禍前に次ぎ、採用難“第3の波”が到来しています。事実、昨年の有効求人倍率平均は前年比0・15ポイントアップの1・28倍と、コロナ禍に入った2020年以降で最高となるなど、あらゆる業界で人手不足が深刻化しているのです。

 そうした中で、会計事務所はどうすれば効果的な採用活動を展開できるのでしょうか。よく用いられてきたのが、求人情報を①ハローワーク、②新聞広告、③求人誌・フリーペーパー、④WEBポータルサイトに掲載する方法などです。

 ①②③は従来行われてきた方法ですが、このチャネルからの応募者は高齢化してきています。社会のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化に対応するために若手を求めるのであれば、これらの方法は適切ではないかもしれません。

 また、一時期は一世を風靡した④もここにきて風向きが変わってきました。一つの求人に対するアクセス数が大幅に下がり始め、コストパフォーマンスが低下しているのです。他にも掲載サイトの運用方法に変更が生じコスト増加の可能性が高まったり、掲載基準が厳格化されるなど、利用する企業側からすると望ましくない変化が生じています。さらに言えば、求職者は一途ではありません。ポータルサイト上のいろいろな事務所の求人情報を見て、比較・吟味し、応募するのです。費用を投じても比較対象の結果、選ばれないケースが増えてきています。

経営層クラスの人材はスカウトで獲得する

 そのような傾向に鑑み、当社では“ターゲット別アプローチ”を推奨しています。図のように、まずは採用したい人材像を明確化します。ハイクラス層(高い専門性を持ち、経営陣に近い人材)なのか、ミドルスキル層(特化した専門スキルを持つ人材)なのか、一般層(特に秀でたスキルを持っているわけではないが、労働力として有用な人材)なのかを見極めるのです。その上で、ターゲット層に応じた求人チャネルを活用します。



 特に、ハイクラス人材を求めるならぜひスカウト型求人サイトを検討していただきたいと思います。これは求職者が登録してオファーを待つ仕組みなので、事務所側からこれぞという人材に直接アプローチできるのです。近年、融資支援を強化するために金融機関出身者を、相続案件強化のため保険会社出身者を、顧問先のDX化支援に備えて、DXの知見を持ち合わせているであろう大手企業の経理部出身者を採用するといった会計事務所の動きも顕著なので、必要な専門性を有する人材を効率的に探せるのは大きなメリットです。また、応募を待つであったり、エージェントが紹介してくれないと始まらないといった“待ち”の姿勢から、より“攻め”の採用活動が可能になります。

 ミドルスキル層や一般層では、ハイクラス層ほどの時間やコストはかけられないので、よりWEBマーケティング的な発想での求人活動が肝要になります。

 この人手不足の時代なので、業界未経験の20~30代をターゲットとした場合、会計事務所の求人情報に不足しているのは「具体的な業務内容」です。採用に成功している事務所様では、写真などをうまく使い“現場の見える化”に尽力しています。それも事務所内の普段の様子というより、顧問先に訪問してコンサルティングをしている様子など、この仕事のブランディング、「面白そう」と思ってもらえるような見せ方をされています。

 ある地方の事務所様では、東京のWEBマーケティング会社で働いていた人材を「広報担当」として採用し、SNSなどを駆使して採用面も含めた事務所のPRを行っているところもあります。

 一般層ターゲットでは、“気軽に働ける環境づくり”を整備し採用を進めている例があります。その事務所様は、「在宅経理」をワークスタイルとして打ち出しています。パソコンさえあれば全国どこでも仕事をすることが可能で、業務中に電話は受けられるかなど対応範囲によって給与が変わってきます。また可能性を感じるのは、ここで活躍した人材はもっと責任のある仕事を任せるという、“優秀な人材発掘の場”としても機能しているところです。

「補充採用」から「計画採用」へ今後の組織体制を描く

 人が辞めたので誰か採用、現職員が高齢化してきたので誰か採用、という考えでは雇われた人も3年ともたないかもしれません。欠けたから、不足したから“補充”するのではなく、“計画的に”採用をすることをお勧めします。

 基本的に、「人を採用したなら、採用をし続けなければならない」と考えます。でなければ、直近に入社した人はいつまで経っても“新人”のままです。社歴というヒエラルキーの中で、雑用などを任せられる先の見えない状況は、本人にとって辛いものがあります。そうならないよう、“計画的に”次の新人を採用し年齢層に傾斜をつけていくのです。それに、近い年代が身近にいることは定着率の向上にも寄与します。正社員が難しいのであれば、まずはパートさんで若い年代を雇うところから始めてもいいかもしれません。

 組織は循環していきます。新しい風を取り入れることで変化も生じるので、ぜひ新たなメンバーを迎え、事務所をさらに活性化いただければと思います。

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