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先進事務所の取り組みイメージタイトル画像©Nakigitsune-sama/shutterstock.com

注力・訴求するサービスを精査

事務所の規模ごとに分類!!
新規顧問先の開拓方法

コロナ禍や税制改正などを経て、さらに激動の時代に直面している税理士業界。 そこで、本コーナーでは船井総合研究所の能登谷 京祐氏に昨今の税理士業界の動向や先進事務所の取り組みについて語ってもらいます。

能登谷 京祐 氏(のとや きょうすけ)

能登谷 京祐 氏(のとや きょうすけ)

ソーシャルビジネス支援本部 士業支援部
税理士・公認会計士グループ マネージャー

船井総研入社後、人材ビジネス業界・弁護士業界・介護業界・物流運送業界をコンサルティングし、現在は会計事務所向けのコンサルティングに従事している。Webマーケティング集客、営業マン育成を中心とした即時業績アップから、新規事業の立ち上げなどを行うマーケット付加まで、多くの成功事例を持つ。最近はクライアント企業の専門特化分野の確立に力を入れており、税理士・会計事務所向けの経理コンサル事業の付加~事業拡大を手掛けている。

規模が小さい時こそHPや特化型HPを活用

 会計事務所の集客では、事務所の規模に応じて注力するサービスが異なります(図1)。

 例えば、この図の「事務所の段階」でいうところの「生業」では創業支援、「家業」では大がかりではない相続、地域金融機関や他士業などと協力した包括的支援、「小企業」では経理コンサルティング、「企業」では経理アウトソーシング(代行)や在宅人材を活用した業務キャパシティの拡大、「中堅企業」では経理周辺事業(経営企画・人事総務など)やM&A支援といった専門的サービスが該当します。

 もう少し詳細に見ていきますと、「生業」では所長が〝事務所の顔〟として顧問先支援に尽力し、その結果、顧問先から新たなクライアントを紹介してもらうといったケースが多いかと思います。この時期に差別化要因として打ち出し、取り組みやすいのが創業支援です。所長が先陣を切って顧問先に伴走し、紹介を軸に1件また1件とクライアントを増やしていくのです。

 もっとも、ただひたすら紹介を待つだけでなく、ホームページ(HP)をきちんと用意しておくことが必要です。会計事務所を探す際、知人からの紹介とはいえ、まずはどんな事務所かインターネットで調べるのが近年の傾向です。そのため、今やHPは事務所の看板のようなものであり、所長に代わって24時間名刺交換をしてくれるような存在でもあります。最初から情報量が豊富なサイトを作る必要はありませんが、少なくとも所長の写真とメッセージ、事務所の概要などは記載するようにしてください。そうすれば、事務所の雰囲気がしっかりと伝わり、信頼感を高めることができるはずです。

 次のステージである「家業」に上がると、所長が〝事務所の顔〟として新規開拓をするだけではなく、事務所としてのサービスの質や総合力が問われるようになってきます。その時に活用したいのが「特化型HP」です。これは相続や事業承継など、事務所が得意とするサービスの事例を紹介し、「詳しい情報はこちら」というように問い合わせや資料請求につなげることを目的としたウェブサイトで、ウェブ広告と連動させることでより効果を発揮します。特化型HPを作成するのが大変そうであれば、同様のコンセプトで縦長1ページ構成の「ランディングページ(LP)」を設けてみるのも一案です。

 既に着目されている方も多いかと思いますが、打ち出すテーマとしては「相続」がやはり有力です。全国どの地域でもニーズが拡大している分野なので、今後の集客を考える上では欠かせないファクターになると思います。



セミナーやウェビナー、メルマガを規模に応じて推進

 「小企業」のレベルになると、職員数も増え、税理士法人化するケースが増えてきます。経理コンサルティングや補助金の申請サポートなど、提供できるサービスの幅も広がってくるので、営業リーダーを置くなどして顧問先開拓に注力するといいでしょう。先述したインターネット施策に加えて、代表以外も登壇するセミナーやウェビナーを活用した組織的な集客も可能になります。

 テーマとしては相続の他にも、法改正や〝終活〟など、潜在的な需要を掘り起こしていくのがお勧めです。まずは関係づくりといったスタンスで興味を持ってもらえそうなセミナーを企画してみてください。セミナーやウェビナーというと集客に不安を覚える方もいるかもしれませんが、金融機関や他士業と連携して告知をしたり、近隣の商工会議所にチラシを配布する、「PR TIMES」などのニュースリリース配信サービスを活用するといった方法があるので、多角的にPRを進めていただければと思います。

 次の「企業」レベルでは、これまで以上に幅広い事業者にアプローチしていくことになるため、メールマガジンを活用したり、別法人を設立してテレアポ業務を外注するなどの手法も導入していきます。

 メールマガジンは「ナーチャリング(顧客育成)」という考え方に基づくと効果的です。潜在顧客に対して興味付けになる情報を提供し続け、最終的に既存顧客へと育成していく手法で、名刺交換やHPへの問い合わせ、資料請求などでメールアドレスを取得し、継続的に情報を発信していきます。継続的にメルマガを配信することで、顧問契約へとつなげることができるでしょう。

 テレアポに関しては、やみくもに電話をかけるのではなく、困りごとがありそうな企業に照準を合わせます。例えばハローワークに経理の求人を出している企業は、経理担当者の退職、もしくは高齢化などによって新たなリソースを求めている可能性があります。そこに経理代行といったサービスを案内すれば、人材を雇用することなく課題が解決するというソリューションを提供できるでしょう。また、すぐに面談とまではいかなくても、「今後も定期的に有用な情報を提供させていただきたい」とメールアドレスを取得すれば、ナーチャリングのサイクルに乗せることができます。

 「中堅企業」レベルになると、創業支援や相続、経理コンサルティング、その他の周辺事業に関連したサービスごとに部門を設け、それぞれの営業機能を高めていく必要があります。地域外の事業者にそれらのサービスを知ってもらったり、ブランディングを推進したりするために、SNSの活用、本の出版などの手法を取り入れるのもよいでしょう。

 ステージにかかわらず、最近ではHPにチャットボットを備えて来訪者が知りたいことを気軽に調べられるような仕組みを導入するケースもみられるようになりました。DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代、ぜひさまざまな施策に取り組んでみてください。

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