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会計人のリレーエッセイ

2022年08月号

選択肢が多すぎると選べない

植田 良実

東北会

岩手県盛岡市植田 良実

 行動経済学やマーケティング理論の中に、「選択肢が多すぎると選べない(ジャムの法則)」というものがある。

 人は、品揃えが多すぎると買いづらくなる、かえって品揃えが少ないほうが購買率も上がることがある、ということだそうだ。

 選択肢がないのも困るが、あり過ぎると逆に選ぶことに疲れて、ストレスを感じる心理状態になるという。

 最近、インターネットを開くと、電子帳簿保存法(電帳法)対応ソフトの広告が目に飛び込んでくる。義務化の猶予期間も1年以上あるとはいえ、1日1日とその期間が縮まってきている。

 この電帳法対応に関して厄介なのは、対応に選択肢が多いということだ。

 電子帳簿・スキャナ保存の「できる化」、電子取引データ保存の「義務化」の部分を軸とすると、それに応じてタイムスタンプ付与などを行うか、そうでない方法をとるかなど、それぞれに複数の選択肢がある。これに各システム会社からリリースされる対応ソフトがどの部分を補完しているのか、費用面の違いはどのようなものか、などを考えるとキリがない。

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 結局、MJSユーザーの私としては、MJSから良いソフトがリリースされるので、顧問先にはまずMJSのサービスを提案することになる。しかし、他社ソフトとの違いの説明となると、やはり電帳法対応を体系的に理解しておかなければならないし、顧問先に対して、対応ソフトを導入する、しないも含めて、選択をお願いしなければならなくなる。

 職務上、今までも顧問先に選択を求めなくてはならない場面は多くあったが、今後もインボイス制度の開始などに伴い、選択を求める場面はより多くなると思われる。

 マーケティング理論をそのまま当てはめてよいものかどうかはあるが、これからは多くの選択肢を提示することが顧問先のためになるという考え方を少し修正して、単純に選択肢を提示するだけでなく、多すぎる選択肢を良い判断と決断ができるように適切に絞る、という提案も必要になってくるのだろうと思う。

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