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東京会企画

2018年12月号

東京2020
オリンピック・パラリンピックの展望

いよいよ開催まで残り2年を切った東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、東京2020大会)。 今回は、大会運営から終了後の展望までを含め、東京都が準備を進めている取り組みについて紹介します。

大会開催に伴う経済波及効果と経費

表1・2

表1・2

2017年3月に東京都が公表した試算によると、大会開催に伴う経済波及効果は都内で約20兆円、全国で約32兆円、雇用誘発数は都内で約130万人、全国で約194万人に上ると見込まれます(表1・2)。この数字は大会開催に関わる「直接的効果」だけでなく、「レガシー効果※1」も含めた需要増加を基に試算されたものです。それぞれの具体的な試算項目は表3・4の通りで、直接的効果は16年12月に(公財)東京都オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が公表した大会経費(恒久施設整備費、仮設施設整備費等)など、大会開催に直接的に関わる資本投資や消費支出により発生する需要増加額を推計したものです。レガシー効果では、大会後のレガシーを見据えて都内で実施される取り組みに係る資本投資や消費支出について、施策ごとのシナリオに基づく需要増加額を推計、項目の選定に当たっては、東京 都が15年12月に公表した「2020年に向けた東京都の取組」に基づき、ソフト・ハード両面にわたる様々な取り組みを抽出しました。

表3

表3

一方、大会開催の経費については、これまで16年末に公表した「バージョン1(V1)」の1兆5000億円から、17年末の「バージョン2(V2)」の1兆3500億円へと1500億円削減し、経費縮減の取り組みを着実に進めてきました(表5)。さらに組織委員会と連携し、会場借上期間の短縮や通信インフラの地中化の見直しなど、IOCが定める要件の緩和を求めているところです。また、組織委員会が東京都、国などの関係者が負担する資金を使用して実施する事業(共同実施事業)を適切に遂行・管理することを目的として、昨年9月に共同実施事業管理委員会を設立、計画・予算・執行の各段階において、コスト管理と執行統制の強化を図っています。今後もこうした取り組みを進め、引き続き経費を精査していきます。

表4

表4

表5

表5

大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV作成/JSC提供 注)パース等は完成予想イメージであり、実際のものとは異なる場合があります。

大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV作成/JSC提供 注)パース等は完成予想イメージであり、実際のものとは異なる場合があります。

大会開催に向けた東京都の取り組み

続いて大会運営面で、大会開催に向けた東京都の取り組みを紹介します。

●警備

開催都市として、世界中から訪れるアスリートや大会関係者、観客の安全・安心を万全の体制で確保していかなければならないのはもちろんのこと、大会期間中における都民生活と社会機能を維持し、大会運営を脅かす事案に対処することも必要です。そのため東京都では、「治安対策」「サイバーセキュリティ」「災害対策」「感染症対策」の4つの視点から大会時に想定されるさまざまなリスクを抽出し、各種事態への対応方針、活動の主体・内容を定めた「東京2020大会の安全・安心の確保のための対処要領(第一版)」を策定しました。今後もこの要領に基づく取り組みの充実・強化と新たな展開を図り、その検証と見直しを継続的に行っていきます。

●交通

大会期間中は、大勢の選手や観客などが都内を移動します。何も対策を行わないと、道路・鉄道ともに混雑が発生し、大会運営だけでなく経済活動にも影響が生じることが想定されます。そのため、交通量の抑制・分散・平準化を図るTDM※2を推進しており、企業の皆様にも夏季休暇制度やテレワーク・時差出勤制度の導入の他、配送時間やルートの変更など、大会時の混雑を想定した準備を働きかけています。

東京オリンピック・パラリンピック

●暑さ

暑さ対策としては、遮熱性舗装などの導入や樹木による緑陰の確保、微細ミストやひさしなどの整備によるクールスポットの創出も有効です。大会開催に向け、こうした取り組みを中心に「人の感じる暑さを和らげるための暑さ対策」を進め、都市の熱環境の改善に取り組んでいきます。

●医療

大会時の医療サービス体制については、選手村に総合診療所が設置され、各競技会場には選手用と観客用の医務室がそれぞれ設置される予定です。また、専門的な治療が必要な場合は、配備されている救急車両で大会指定病院などへ搬送されます。東京都は、会場周辺における医療需要への対応について、都市ボランティアによる給水の呼びかけや急病人などが発生した場合の適切な対応、一時的な救護ができる場所の確保など、救護体制の検討を進めています。今後も関係機関などと緊密に連携を図りながら、大会に向けた医療体制の構築を検討していきます。

大会終了後の施設活用

大会終了後の施設活用については、17年4月に「新規恒久施設の施設運営計画」を策定しました。また、早い段階から大会後の施設運営の準備が進められるよう、既に各施設で運営事業者の選定を行っています。18年10月には、海の森水上競技場を含めた5施設の指定管理者を指定しました。今後は有明アリーナの運営事業者を選定していくとともに、大会後における大規模なスポーツ大会やイベントの誘致活動を早期に開始するなど、施設の有効活用を図っていきます。

※2 TDM(Transportation Demand Management 交通需要マネジメント)......自動車の効率的利用や公共交通への利用転換など、交通行動の変 更を促して、発生交通量の抑制や集中の平準化など「交通需要の調整」を行うことにより、道路交通混雑を緩和していく取り組み(東京都環境局HPより)

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