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ご当地自慢

2023年04月号

福岡県北九州市

明治時代や大正時代に日本三大港に数えられた門司港を擁し、 日本四大工業地帯として近代産業の発展を牽引してきた北九州市。市内各地を巡り、その歴史や文化を満喫できる スポットをご紹介したいと思います


レトロな町並みを散策―門司港レトロ地区

 まずは山口県下関市に隣接する門司港レトロ地区へ。明治時代から大正時代まで、日本三大港として栄えた港町であり、散策には絶好のポイントです。1914年(大正3年)に建築された門司港駅を中心に明治時代や大正時代の建物が点在しており、レトロでロマンチックな風情が漂っています。また、赤レンガ造りが美しい旧門司税関など、無料で開放されている施設もあるので、ぜひ内部をのぞいてみてください。補修前と補修後の壁などを見比べることもでき、歴史の重みを感じることができると思います。

 門司港レトロ地区まで来たら、せっかくですから関門海峡の眺望も堪能してみてはどうでしょう。特に海峡の距離が最短となる早鞆(はやともお)の瀬戸(和布刈(めかり)と壇ノ浦の間)はわずか600mとかなり狭く、下関側の様子がよく見えます。また、海峡が狭いことから潮流が速くなっており、めかり観潮遊歩道からダイナミックな渦潮を見ることができます。なお、この遊歩道の近くには和布刈神社という由緒正しい神社があるので、こちらもあわせて参拝してみてください。ちなみに、和布とはワカメのことで、この神社では旧暦元日には3人の神職が海に入ってワカメを刈り、神前に供える儀式が続けられています。

 小腹が空いたら、焼きカレーはいかがでしょうか。カレーをオーブンで焼き上げた料理で、昭和30年代に門司の喫茶店で生まれたとされています。今では多くの飲食店がそれぞれオリジナリティに満ちた焼きカレーを提供しているので、胃袋に自信がある方は食べ比べしてみてはどうでしょうか。

めかり観潮遊歩道から、全長1,068mの関門橋を望む。眼下に目を向ければ“日本三大潮流”と呼ばれる関門海峡が

門司港発祥の焼きカレー。チーズ、卵、魚介、野菜など店舗によってさまざまな具材を使用するので食べ比べも楽しい

小倉祇園太鼓の模様。コロナ禍前には多くの人が集い、昨年には3年ぶりに開催された 提供:「北九州市 時と風の博物館」

焼うどん発祥のお店「だるま堂」にて。魚粉が香り高く、小倉名物「ぬかだき」も付いた定食がおすすめ

文化とグルメ、自然を満喫―小倉地区

 門司港レトロ地区を後にしたら、今度は小倉地区に足を運んでみましょう。小倉城のお膝元で、城下町として栄えてきた小倉地区は、今もビジネスや文化、そしてグルメやショッピングなどの中心地です。『点と線』などで知られる作家・松本清張氏の故郷、そして『銀河鉄道999』などで知られる漫画家で先日ご逝去された松本零士氏の故郷としても有名です。伝統文化も根強く残っており、中でも小倉祇園太鼓は小倉っ子にとってはなくてはならないお祭りの一つ。城下の無病息災と城下町繁栄を願い、元和3年(1617年)に細川忠興公が京都の祇園祭を模して始めたとされる祭りで、国指定重要無形民俗文化財にも指定されています。山車の前後に載せられた太鼓やヂャンガラ(摺り鉦)、そしてお囃子などの音色とリズムが最高に心地良い、見ても聴いても楽しい祭りです。

 小倉地区にはさまざまなグルメが存在しますが、門司港レトロ地区の焼きカレーに合わせて、ここでは焼うどんを紹介しておきたいと思います。実は小倉地区は焼うどんの発祥の地。本場の焼うどんは乾麺を湯がいたものを焼くのがポイント。その他、小倉焼うどん研究所のホームページによると、キャベツは若松産であるべし、豚肉はバラ肉であるべし、玉葱はその甘さを引き出すべし、秘伝のソースはよく研究するべし、削り節はアジ・サバ節を使用するべし、小倉地酒で香り豊かに仕上げるべしなど、さまざまな定義がなされています。もちろん、提供する店舗によって味のバリエーションはさまざまなので、こちらもぜひ食べ比べてもらいたいところです。なお、焼うどん発祥の店として知られる「だるま堂」では焼うどんだけでなく、小倉名物の「ぬかだき」も注文可能。青魚をぬかみそで炊き込んだ郷土料理で、独特の風味がご飯やお酒に最高にマッチします。だるま堂では焼うどんとぬかだきを一緒に味わえる定食などもあるので、一度、味わってみてください。

 また、都会的なイメージが強い小倉地区ですが、南部には素晴らしい自然景観があります。その代表格が日本有数のカルスト台地として知られる平尾台です。羊の群れのように見える石灰石が点在する雄大なパノラマには、誰もが思わず息をのんでしまうはず。鍾乳洞もあり、地球が数億年の歳月をかけて作り上げてきた神秘的な世界を垣間見ることができます。

日本三大カルストのひとつに数えられ、天然記念物・国定公園・県立自然公園の指定を受ける平尾台

120年以上の時を越え、その姿を世に残す官営八幡製鐵所旧本事務所。当時としてはモダンな建築物だった 提供:「北九州市 時と風の博物館」

今なおその姿をとどめている軍艦「柳」。全長85.85mで、全幅が7.74m、1917年に佐世保で竣工した

山頂の高さは622mと、東京スカイツリーとも遜色ない高度から望む皿倉山の夜景。デートスポットとしても人気がある

近代産業の歩みを感じる―八幡地区・若松地区

 八幡地区には世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つである官営八幡製鐵所関連施設があります。1899年に完成した官営八幡製鐵所旧本事務所は中央にドームを有する赤レンガ造りが印象的な建物で、今も日本製鉄(株)の敷地内に残っています。内部を見ることはできませんが、近くにある眺望スペースから外観を眺めることができる他、ボランティアガイドの案内やVRゴーグルを使った旧本事務所内のバーチャルツアー体験などを楽しむことができます。また、近隣にある世界遺産ビジターセンター(スペースLABO ANNEX内)も必見のスポットです。全国8県11市にまたがる23の「明治日本の産業革命遺産」について分かりやすい映像で紹介しています。日本の近代産業を支えた製鉄・製鋼を身近に感じられるスポットですので、ぜひ足を運んでみてください。

 もっとも、工業発展には負の側面もありました。その一つが公害です。しかし、北九州市は1980年代には公害を克服し、1997年から日本でいち早くエコタウン事業を展開。その中核地となっているのが若松区の響灘臨海工業団地周辺です。エコ・リサイクル関連の施設が多数立地しているだけでなく、風力発電なども盛んに行われており、まさにエコを体感できる地域になっています。

 そして、この地でひときわ異彩を放っているスポットが軍艦防波堤です。その名の通り、軍艦(駆逐艦)を沈め、防波堤として据え付けたもので、3隻のうち、2隻(「涼月」と「冬月」)は護岸の中に埋められましたが、「柳」は今も防波堤の上にその姿をあらわにしています。ちなみに、涼月と冬月は第二次世界大戦時、沖縄特攻作戦において「大和」の直衛艦として出撃し、大破しながらも生還を果たした艦としても有名です。かつての軍艦すら防波堤として活用する――。ある意味、これもエコタウン・北九州ならではの取り組みと言えるかもしれません。

 最後は北九州市が誇る夜景をご案内したいと思います。八幡地区や若松地区に広がる工業地帯、そして小倉地区の市街地が織り成す夜景はまさに北九州ならではで、「日本新三大夜景都市」にも選ばれています。この絶景を堪能するのにお勧めなのが皿倉山です。山麓駅から全面ガラス張りのケーブルカーに乗れば、わずか3分程度で山上駅に到着。そこからスロープカーに乗り換えれば、3分で山頂に到着します。工業地帯から市街地、そして関門海峡までを見渡せる大パノラマは迫力満点、「100億ドルの夜景」と称されていることに納得いただけるはずです。最高の夜景とともに旅の思い出を振り返ってみていただきたいと思います。

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