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記帳代行のBPOも検討
会計事務所業務の
“超効率化”を進め
経理代行業務を
ビジネスの柱に
コロナ禍や税制改正などを経て、さらに激動の時代に直面している税理士業界。そこで、本コーナーでは船井総合研究所の山田 颯斗氏に昨今の税理士業界の動向や先進事務所の取り組みについて語ってもらいます。
人手不足の時代にマッチした経理代行業務が
拡大中
近年、拡大している経理代行業務とは、ITツールなどを活用し、顧問先に簡単な入力・読込作業を行ってもらいながら、会計事務所が顧問先の経理業務を担う、あるいは全ての経理業務を代行するというサービスです。前者はいわゆる自計化の要素を含みます。自計化は「顧問先に経理業務の一部を行わせることで、自社の業績などの数字を早く正確に把握し、経営に活用すること」が目的ですが、顧問先の負担はその分、大きくなります。昨今は人手不足が大きな問題になっているため、自計化そのものが敬遠され、経理代行業務(丸投げ)のシェアが拡大しているのです。
今までの経理代行業務では「顧問先にITツールを導入してもらって、会計事務所側の負担を減らす」といったものが主流でしたが、これからの経理代行業務は顧問先の業務を無理にデジタル化しなくても、会計事務所自らがAI—OCRなどのツールを活用するなど、受入態勢を強化することで申し分ないサービスを提供することができます。そのため、昨今は「アナログな顧問先への対応に特化した会計事務所」と「デジタル化を推進している顧問先への対応に特化した会計事務所」に二極化しつつあるように思います。
こうした中、記帳代行業務の相場にも変化が生じています。10年ほど前は一律、100仕訳1万円といった相場でしたが、ここ最近は工数に応じて料金設定を変える会計事務所が増加しているのです。例えば、工数が少ない顧問先では100仕訳5000円、工数が多い顧問先では1万5000円といった具合に差をつけることで、できるだけ顧問先のデジタル化もしくは領収書やレシートを整理して提供してくれている顧問先で対応を差別化する動きが顕著になってきています。
経理代行業務を手掛けるための効率的な受入態勢づくり
では、肝心の受入態勢を整えるにはどうしたらいいのでしょうか。その点は会計事務所の業務の①全作業を完全マニュアル化して、誰がやっても一定の作業品質を維持・担保できる環境を整える②DXで業務効率化を推進する(※)③記帳代行業務のアウトソーシングを活用する、といった方法を組み合わせることが考えられます。船井総研では特にアナログな顧問先への対応に特化するのであれば③をおすすめしています。いわゆる記帳代行業務のBPO(Business Process Outsourcing:企業の業務プロセスの一部を専門業者に外部委託すること)を取り入れれば、経理業務の丸投げ対応も、そこまで負担に感じず、効率的に対応することができるようになると思います。スポット利用もできるので、確定申告時期などの繁忙期での利用も検討してみてください。経理代行とまではいかずとも、ある会計事務所ではその事務所が運営する就労支援施設に領収書・レシートのスキャンを依頼し、作業や費用を抑えるといった事例もあります。形はどうあれ、作業の一部を外部に委託するのは有効な手段と言えます。
また、会計事務所の規模に応じて、どのような取り組みを進める必要があるのかについてもご紹介したいと思います。まず、職員数が10名に満たない会計事務所の場合は、アナログな顧問先の対応にリソースを割く前に、まずは経理代行業務のデジタル化を徹底的に推進し、顧客ターゲットもデジタルに対応できる顧問先へ注力していくことが望ましいです。アナログ対応には会計事務所の業務の効率化が必須になるので、職員数が少ない会計事務所の場合は何よりもまず、事務所業務のデジタル化が最優先事項です。先ほど挙げた①~③のどれを選んでも必須で、これがアナログな顧問先への対応の下地となります。そして、職員数が10~30名になりましたら、少しずつ経理代行の受け入れを進めてみましょう。職員数が30 名を超える会計事務所に関しては、人的リソースにある程度の余裕があるので、デジタルに特化した顧問先にもアナログな顧問先にも対応し、経理代行業務をビジネスの柱として大きく育てるべきだと思います。
このように、現時点では会計事務所が小規模であればあるほどデジタル対応の顧問先向けに特化していくのが理想的ですが、今後、デジタル対応の領域はAIに代替されていく可能性もあります。つまり、中長期的な観点で捉えると、できるだけ早く事務所業務のデジタル化、超効率化を推進し、DXが難しい顧問先にも対応できるようにして受入態勢を整えておくことが肝要になるわけです。いかにAIが発達しようとも、アナログの業務や人とのコミュニケーションはなくならないので、そのあたりも念頭に置いていただけると幸いです。
※「ACELINK NX-Pro会計大将」を導入のMJSユーザー様であれば、「AI-OCR入力」を用いて、レシート、領収書等を専用機器に読み込みいただければ、仕訳の自動作成が可能です。まだ導入されていないユーザー様はぜひこの機会にご検討ください。
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