CHANNEL WEB

先進事務所の取り組みイメージタイトル画像©Nakigitsune-sama/shutterstock.com

「待ち」から「攻め」にシフト!!

相続税申告業務を
収益の柱にする

生成AIなどの新技術の広がりで時代の過渡期にある会計事務所業界。今回は、士業支援に精通する船井総合研究所のコンサルタントに、会計事務所の規模拡大を見据えた、相続税申告業務の取り入れ方をご紹介いただきます。

株式会社船井総合研究所

株式会社船井総合研究所

山田 颯斗 氏(右)
法務・税務ビジネス支援部
税理士・公認会計士グループ マネージャー
新卒で(株)船井総合研究所に入社。以来、人材紹介会社向けコンサルティング、会計事務所向けコンサルティングに従事し、全社において最速・最年少で管理職に昇進。経理コンサル事業の発展に向けたR&Dに努め、現在は経理コンサルを中心とした業績アップコンサルティングにおいて定評を得ている。

亀村 昇平 氏(左)
株式会社船井総合研究所
士業ビジネス支援本部
税理士・公認会計士グループ リーダー大学卒業後、新卒で株式会社船井総合研究所に入社。入社以来、一貫して士業事務所(弁護士/税理士/司法書士)向けに相続分野の業績アップコンサルティングに従事。現在は相続分野に取り組む会計事務所向けのコンサルティングを月間約20件行うとともに会計事務所相続研究会の主幹を務める。

年商1億円を超え始めたら相続税申告業務に注力すべき

 相続税申告業務への参入を本格的に検討するタイミングとしては、事務所全体の年商が1億円、相続関連の年商が1000万円を超えるかどうかのタイミングです(下図)。具体的には職員数が10名程度、顧問先数が100社を超えた頃が目安となります。創業所長の場合、このくらいの規模になる頃には顧問先から相続の相談が増え始め、スポット案件として意識せざるを得なくなるのです。この時に「待ち」から「攻め」の戦略に転換することで、新たな成長ステージに進みやすくなります。

 では、肝心の人手をどうするかというと、まずは既存の人的リソースを活かし、相続専任者を配置することです。例えば、従来は会計業務と兼任していた職員を相続業務に特化させることで、業務の効率性と習熟度を大幅に向上させることができます。 業務量の目安としては、専任者1名とパート職員1~3名のチームで月に2~3件のペースで相続相談を受け、申告まで完了させるイメージです。このとき、案件数は年間50件程度を上限としてください。もし、どうしてもそれを超える場合は、採用を含め、専任者を増やすフェーズに入ります。

 成長という観点では、案件数が年間50件以上になると相続関連の売り上げで年商3000~4000万円程度が見込まれ、ここから年商5000万円に到達するというのが一つの壁になります。これを乗り越えるには専任者の採用だけでなく、業務の標準化が不可欠です。これまでは専任者2名以上の体制で面談から処理まで一貫して対応していたわけですが、処理業務はパート職員に移管・集約するなどして、さらなる効率化を図らなくてはなりません。と同時に、人手が増えると業務がブラックボックス化しやすくなるため、マニュアルの整備や情報共有の仕組みづくりが重要になってきます。

 こうしたレベルからさらに飛躍を目指し、相続税申告業務の年商を1億円以上にするには、面談業務も専任者(社員)に移管しなければなりません。また、生前対策や不動産売却、保険などの周辺商材を取り扱うことで、1件当たりの単価を引き上げていく必要があります。この段階になると、相続税申告業務のリーダーには所長クラスの経営能力が求められます。

 他方、実際に現場で相談に対応する専任者に求められるのはコミュニケーション能力です。会計業務では数字との向き合い方や論理的思考が重要になりますが、相続税申告業務においては、知識以上に遺族に寄り添う共感力や細やかな気配りが求められるからです。そういった事情もあってか、現場では女性職員が活躍しているケースが多く、採用段階でも積極的に女性を採用する会計事務所もあります。


商圏と集客を意識した事業戦略で売上増を目指す

 ここまでは事務所の体制整備についてお伝えしましたが、実際に相続税申告業務を拡大するには商圏と集客も重要なポイントになります。

 そもそも、相続税申告業務の集客には、商圏人口が大きく影響します。再現性の高い事業展開を行うためには、最低でも20万人程度の商圏が必要です。課税割合や年間死亡率(約1%)を考慮すると、これより小さい商圏では狙えるパイが限定的になってしまうからです。仮に地方の小さな商圏で事務所経営を行っている場合は、隣接商圏への展開を検討するか、行政書士業務などの周辺業務を取り込んで売り上げを確保するとよいでしょう。

 集客手法は地上戦※1と空中戦※2に大別されますが、競合環境や商圏特性を十分に分析した上で選択してください。特に東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市圏では、相続専門の法人や大手税理士法人が多額の広告費を投じて事業を展開しているため、空中戦だけでは太刀打ちできず、かなり尖った戦略が不可欠です。例えば「女性の相談者には必ず女性の担当者が対応する」といった戦略が効果を上げている事例もあります。

 既存顧問先からの受注拡大については、まずは事務所が相続サービスを提供していることを認知していただかなければなりません。相続関連のセミナーやウェビナーを開催したり、決算・確定申告のタイミングで相続専任者が同席してお声がけしたりすることで、自分たちが相続税申告業務を展開していることをアピールし、他事務所への流出を防ぐようにしてください。

 相続税申告業務は「既に飽和状態なのでは」という声もありますが、総務省の調べによれば、2040年まで高齢者人口は増える見通しで、今後も市場の拡大が見込まれます。ただ、一方で大規模の税理士法人はもちろん、地域密着型の中規模会計事務所、はたまた地方銀行など、様々なプレイヤーが現在進行形で参入していることも事実ですので、「待ち」から「攻め」に転じるなら、早期の参入と差別化戦略の構築が成功のポイントになるでしょう。

※1 従来のメディアを活用したマーケティング
※2 デジタルメディアやインターネットを活用したマーケティング


▲ ページトップ