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人手不足を乗り越える次の一手
「完全未経験者」を
最速で育成するコツ
慢性的な人手不足が続く会計事務所業界。近年では税務会計業務との関わりが全くない「完全未経験者」を職員として迎え入れる事務所も目立ってきました。そこで、今回は士業支援に精通する船井総合研究所のコンサルタントに「完全未経験者」をいかに育て、長く定着させるかについて解説してもらいました。
深刻な人手不足が生んだ
「完全未経験者」採用の潮流
最近、多くの会計事務所の所長が口を揃えておっしゃるのが「人が足りない」ということです。今や人手不足は事務所の規模を問わず共通する業界全体の課題になっています。
こうした中で注目されているのが「完全未経験者」の採用です。「完全未経験者」の採用といえば、かつては20〜30名規模の事務所が組織化・拡大を見据えて行うのが一般的でしたが、近年は10名程度の事務所にすそ野が広がっています。未経験である以上、戦力化には早くても2年ほどの育成期間を見込む必要がありますが、最近では多くの事務所が経験よりも若さとポテンシャルを有した「完全未経験者」(主に第二新卒)に注目しているのです。
「完全未経験者」の採用の向き不向きは明確に分かれており、例えば30~40代ほどで拡大志向の所長であれば、最初からあえて「未経験者」のみに絞って採用活動をスタートします。他事務所のやり方に染まっていないため、クラウド会計やAIを用いた最新の効率的な業務プロセスを素直に吸収しやすく、事務所の成長とともに経営を支えるコアメンバーへと育つことが期待できます。一方で組織の拡大を望まず、少数精鋭で今の規模を維持していく方針であれば、無理に未経験者を採用する必要はありません。育成にリソースを割かれてしまい、疲弊してしまっては本末転倒です。焦らずピンポイントで経験者を探す方が現実的でしょう。
「完全未経験者」採用の考え方と
最速で育成するためのポイント
まず「完全未経験者」の採用にあたっては、「日商簿記2級程度」といった条件フィルターを無くすと、上手くいったところが多い印象です。実務をこなしていけば知識は必ず後からついてくると割り切り、代わりに元気でお客様に愛されそうな「営業向きキャラクター」の採用に注力するのです。このとき、専門的な知識や内勤のサポート業務は経験や知識のある40~50代の中堅層に補ってもらい、役割分担を明確にします。こうして若手はどんどん顧客接点を持ってもらい、業務への理解を深め、戦力になるまでの期間短縮を目指します。
採用チャネルは一般的な求人サイトやハローワークが中心ですが、大学生をインターンとして受け入れた上で採用するケースも意外に多くあります。地方の事務所でも、大学などとの関係が良好であれば有効で、特に地方の小規模事務所は双方の雰囲気を見極める上でも役立ちます。
次に、どのようなエントリー(入口)ジョブが育成に有効かを考えます。育成のゴールを税務顧問担当とした場合、入口はまず実務を覚えることです。製販分離を採る事務所であれば、最初のうちは顧客と接しない製造の部分、例えば記帳代行の補助(領収書のスキャン)などから担当してもらい、徐々に顧客と接する業務も加えるとよいでしょう。
近年は経理代行に取り組む事務所も増えているので、これを入口の一つに加えるのも効果的です。経理代行の後に記帳、その先に税務と経験を積むと、顧問先から会計事務所までの業務のイメージがつかめるようになります。その結果、実務の覚えも早くなるはずです。特に経理まで踏み込むと、業種ごとの現場感、取引先・社内各部門とのやりとりが見えるようになり、顧問先のビジネスそのものへの解像度がグッと高まります。そこで得た気づきは、やがて税務申告のアドバイスはもちろん、経理の効率化や経営改善の提案へとつながっていきます。
他方、育成においては、指導役となる先輩職員の負担が増えることにも留意しなければなりません。多忙で手が回らなければ、先輩職員の退職リスクが高まりかねないので、書類選考や面接の段階から関わってもらうなどして、コンセンサスを得ておくとよいでしょう。
長期的な定着のカギは
「ビジョン」と「将来像」の共有
まず、近年の若手は社会貢献への意識が強い傾向があるので、そうした情緒的な価値を伝え、それを実現できる環境であることを示すこと、いわば「ビジョン」を共有できる状態にしておくことが大切です。若手の退職の理由として最も多いのは「将来のイメージが湧かない」というものです。活躍している人ほど人間関係のトラブルは少なく、むしろ数年後の「将来像」が見えないことが離職につながっています。特に規模の小さい事務所はキャリアステップや役職、昇給の仕組みが明確に定まっていないことも多く、それが不安の一因になるので、福利厚生や教育体制の設計など、そうした仕組みも含めて整えておきたいところです。中には税理士を目指す「完全未経験者」もいるかと思いますが、そういった若手は積極的に学び、活躍してくれるケースが多いので、奨学金や試験休暇といった独自制度で後押しするのも有効です。
また、長期的に活躍していただくにはライフステージにも注目しなければなりません。具体的には30歳前後が一つの山場となり、その後、転職市場のニーズが高まる35〜40歳あたりがもう一つの山場となります。そのため、こうした節目に際しては個別の対話はもちろん、年始の計画発表会などの機会を活用し、先輩職員の事例を共有して、「ビジョン」と「将来像」を共有する仕組みを構築するのもいいかもしれません。本稿を機に、採用戦略を練ってみてください。

