自社ウェブサイトを充実させて自らが一次情報へ
デジタルマーケティングの変遷と
高まる「AI検索最適化(AIO)」の重要性
インターネットでの情報収集の主役が、検索エンジンから生成AIへと移り変わろうとしています。既にネット利用者の3〜4割がAIを情報収集に活用し、AIの検索結果だけで完結する「ゼロクリック」も広がる中、自社の情報がAIに正しく引用されなければ、潜在顧客との接点そのものを失いかねません。そこで重要になるのが、自社の一次情報をAIに正しく解釈・引用させる最適化「AIO(AI検索最適化)」です。本特集では、デジタルマーケティング支援を手掛けるMJSグループのトライベック(株)の福聚 康旭氏と佐孝 徹氏が、AI検索時代に「選ばれる」ウェブサイトの作り方と会計事務所やその顧問先が取り組むべきポイントを解説します。
AI時代に必要な「AIO」という発想
今、私たちの情報収集の仕方は大きく変わりつつあります。あるデータによれば、ネット利用者のおよそ3〜4割が既にAIを情報取得の手段として活用しており、その割合はここ1年ほどで急速に伸びているとのことです。さらに、AIへの信頼度も高まっており、5割程度の人がAIの回答を信頼し活用していると言われています。
この変化を象徴するのが「ゼロクリック」という現象です。AIによる検索では、ユーザーがウェブサイトまで訪れずにAIの回答だけで完結してしまうケースがおよそ2割に達しているのです。GoogleのAIオーバービュー(検索結果ページの一番上に生成AIが作成したまとめが表示される仕様)のような仕組みも広がり、AIが解釈した情報に触れる機会は着実に増えています。
つまり、この流れに対応できなければ、自社の情報がユーザーに認知される機会を失い、ターゲットユーザーとのコミュニケーションが成り立たず、大きな機会損失につながる恐れがあるのです。
こうした中で注目されているのが「AIO(AI検索最適化)」という考え方です。AIOは従来のSEO(検索エンジン最適化)の延長線上にある「AI時代の新基準」になります。従来のSEOはユーザーが検索エンジンに入力するキーワードに注目し、それらをサイト内に的確に盛り込んでいくことが主軸となっていました。対して、AIは特定のキーワードだけでなく、ユーザーや検索ワードの背後にある文脈まで想定しながら情報を解釈します。いわば「コンテンツ」以上に「コンテキスト(文脈)」が重視される時代になってきているのです。
もっとも、信頼度の高いサイトが評価される点はSEOと共通しており、検索エンジンで上位に表示される情報がAIにも引用されやすいという関係にあります。だからこそ、SEOで培ってきた基本の延長線上でAIOに取り組むという発想を重視していただきたいと思います。
AIに引用されるには「信頼性」と「構造」が重要
では、AIに正しく引用されるためには、どうすればよいのでしょう。アプローチはいくつもありますが、まず土台となるのが情報源としての「信頼性」を高めることです。
そして、その指標として参考になるのがGoogleも品質評価の基準として提唱する「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」(左カコミ記事参照)です。これはSEOでも重視されてきた考え方ですが、AIOにおいても非常に重要な要素となります。
実務上のポイントとしては、E-E-A-Tを意識したコンテンツを正しく掲載することです。例えば、自社ならではの「経験」に基づく事例コンテンツを用意する、記事ページに著者や監修者を明示する(権威性・専門性)、公開日や最終更新日を掲載して情報が最新であることを伝える(信頼性)、といったものです。また、製品・サービスのページであれば、複数の比較コンテンツやFAQ(よくある質問)を盛り込むといいでしょう。
もう一つ注目したいのが、AIが情報を読み取りやすい「構造」にすることです。例えば、ウェブサイト上に製品やサービスのPDF資料だけを公開するのではなく、HTML※1形式でも用意するなど「マルチフォーマット化※2」しておくことです。これはAIがPDFファイル内の情報を正しく読み込めないことがあるためです。ニュースリリースや商品紹介など、PV(閲覧数)の高いものからHTML化し、AIに一次情報として読み取ってもらえるよう、整えていくといいでしょう。
図表の扱いにも注意が必要です。重要なポイントを図表だけで表現してしまうと、AIが細部まで正しく解釈できない場合があります。ですので、図表を掲載する場合はそれらの内容を補足するテキストを添えておくと丁寧です。ただ、AIへの最適化を優先するあまり、テキスト過剰なサイトになってしまっては読みづらく、本末転倒です。AIOとユーザビリティのバランスを取ることも重視して、改善に取り組んでいただきたいと思います。
なお、中小企業のサイトでは、そもそも基本的なSEO対策がなされておらず、sitemap.xml※3が未登録のままなど土台が整っていないケースも見られます。できていなければ、AIOも十分に機能しないので、先述したようにSEOの延長線上にAIOを積み上げていくという順序を意識していただくことが必要です。
ここで会計事務所の皆様に1つ、自分ごととして捉えていただきたい場面があります。例えば、経営者や個人の方がAIに「新宿区で相続税に強い会計事務所」と尋ねるシーンです。AI検索を通じた回答は、インターネット上に公開された情報をもとに生成されます。もし自事務所の専門分野や実績、強みがウェブ上で十分に発信されていなければ、検索結果へのAIからの回答候補に挙がりにくくなってしまいます。裏を返せば、AI検索への対策は「地域の専門家」として認知される大きなチャンスとも言えます。AIOを通して自らの強みや信頼性を整理していく作業は、結果として事務所の対外的なブランディングにも直結するのです。
※1 ウェブページを作るための言語のこと
※2 1つのファイルや機器、システムの中で、複数の異なる形式(フォーマット)を混在させて処理・対応する仕組みのこと
※3 Webサイト内の全ページのURLや更新日時、更新頻度、優先度などの情報を一覧化したファイルのこと
「AIO診断」でサイトの品質向上に向けた根本解決へ
とはいえ、「何から手をつければよいか分からない」という方も多いでしょう。そこで当社では、AIOを支援する具体的なサービスとして「AIO診断」(図1)と中小企業向けDXプラットフォーム「Hirameki 7」の「AIサイト」(図2)を提供しています。
「AIO診断」の特長は、単なる計測にとどまらない点にあります。他方の診断サービスの多くは、SEOの延長でキーワードを分析したり、AI経由でどれだけサイトに流入したかを計測したりする「量的なアクセス測定」が中心で、数値的評価の提示にとどまり、サイトの具体的な改善方法が分からないまま終わってしまうことがほとんどです。一方、当社の「AIO診断」ではまず「そのサイトを誰が使うのか」というターゲットユーザーを定義し、「そのユーザーが入力しそうなプロンプト」を設定した上で、期待通りに自社情報が引用されているかを定性・定量の両面から評価・スコアリングします。
例えば、A社のターゲット顧客が「A社のことを分かりやすく教えてください」と質問をした時、A社の企業紹介ページではなく、「新卒採用ページ」の情報が引用されてしまうというミスマッチがあります。これはプロンプトの「分かりやすく」を受け、AIが求職者向けにかみ砕いて説明されているA社の新卒採用サイトの情報を「分かりやすい」と判断して引用してしまった例となります。私どもはこういった不整合も可視化し、評価が低い箇所については改善の方向性まで踏み込んでレポートし、サイトのリニューアルも含めた提案を行っています。
一方の「Hirameki 7」の「AIサイト」は、今ご紹介したような専門知識がなくてもAIOやSEOに必要な技術的土台となる「正しいサイト構造」を構築できるツールです。プロンプトや参考にしたいURL、原稿・PDFを入力するだけで、デザインを含めたウェブページをAIが生成してくれます。サイトマップの自動生成といった技術的な領域もカバーできますので、ユーザーの皆様は「顧客に届けたいコンテンツ」の検討・制作に集中することができます。
他にも、PVやユニークユーザーなどを測定するアクセス解析ツールが標準搭載されていますし、図2にもある通り、画面上の見た目のまま直接編集ができるノーコードエディターを備えていますので、より直感的にウェブサイトを編集することができます。さらに、手元に会社のパンフレットがあれば、その情報だけでサイトを作成することも可能です。9月には士業ユーザー向けに、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)※4機能とそれに付随するAIライティング支援機能も追加しました。
※4 HTMLなどの専門的な知識がなくともWebサイトの文章や画像、レイアウトを一元的に保存・管理し、簡単にページの更新や追加を行えるシステムのこと
SEOからAIOへの転換で変わるウェブサイトの役割
キーワード対策で、ある程度ユーザーを引き込むことができたSEOの時代からAI検索の時代に入り、ウェブサイトの役割は大きく変わりました。何より、ソースが無ければ、AIに認知されず、自社の情報がユーザーに提示されることはありません。その意味でウェブサイトは一次情報を発信する最も重要な拠点へと変わりました。中には、そもそもウェブサイトを持っていない、あるいは長く更新していない、というところも少なくありません。
ですので、この機会に自社ウェブサイトを「信頼できる一次情報を、自らの言葉で継続して発信し続ける最重要のプラットフォーム」として再定義し、向き合い直してみるのはいかがでしょうか。ウェブサイトは自社のアイデンティティそのものです。AIに対してはもちろん、デジタル上に自社の存在を確立させることを意識し、情報発信に努めていただければと思います。

