2018年04月号
丸亀うちわ
亀市は日本一のうちわ(団扇)の産地である。現在の生産量は年間約1億本、全国シェアの約90%を誇り、平成9年5月、国の伝統的工芸品に指定されている。
扇の勾配と称される高石垣で有名な丸亀城の堀沿いに「丸亀うちわ里謡碑」があり、それには「伊予竹に土佐紙貼りてあわ(阿波)ぐれば讃岐うちわで至極(四国)涼しい」とある。
もともとは1630年代、金毘羅のみやげ物として丸金印の男竹丸柄の渋うちわ(柿の渋を塗ったもので非常に丈夫なものである)が考案された。1780年代には丸亀藩士が江戸屋敷隣の豊前中津藩(現、大分県中津市)藩士から女竹丸柄の技術を習って藩士の内職となり、その後町民へも広がった。明治時代になり、奈良うちわに倣った男竹平柄うちわが登場し、平柄の切り込み、穴あけなどの技術が進歩し、生産が飛躍的に増大した。
最近は、涼をとるといったものは、扇風機やクーラーに取って代わられ、また竹製ではなくポリ素材でのポリうちわが主流で(残念ながら竹製はほとんど中国で生産されている)、むしろ販売促進グッズという位置付けとなっている。このような変遷を辿っているとはいえ、夏には欠かせない風物詩であり、皆様もうちわを手に取って涼を楽しんでいただければ幸いである。