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四国会企画

2018年04月号

日本三大秘境の一つ「祖谷渓」

日本三大秘境の一つに数えられる「祖谷」(徳島県三好市)には、風光明媚な渓谷美で知られる 「祖谷渓」があります。平家の落人伝説などの歴史をはじめ、かずら橋、大歩危・小歩危といった見どころ、 さらには渓流・渓谷を生かしたレジャーやスポーツなど、多彩な魅力が満載です。そんな祖谷渓の魅力を 三好市産業観光部観光課の石山 健介主事に紹介していただきました。

自然・文化・歴史の見どころが満載の秘境

「祖谷渓」は徳島県西部、三好市に位置する深いV字谷が続く渓谷です。徳島県を西から東に流れる吉野川の支流にあたる祖谷川沿いにあり、渓谷の全長は10㎞以上に及びます。100m近い高低差のある急峻な山川と降水量の多さによって樹木がうっそうと生い茂り、「深山幽谷」の景観を生み出しています。

また、断崖が8㎞にわたって続く「大歩危・小歩危」は吉野川の激流によって生み出された渓谷で、大理石の彫刻がそそり立っているかのような景観美です。その風変わりな名前は、断崖を意味する古語である「ほき(ほけ)」に由来するという説と、「大股で歩くと危ないから大歩危」「小股で歩いても危ないから小歩危」という説があります。

大歩危・小歩危で特にお勧めしたいのは遊覧船観光の「大歩危峡舟下り」です。100年以上前から運航されており、ベテランの船頭さんによるガイドを聞きながらゆったりと絶景を堪能することができます。乗船時間は30分で、12月から2月の冬季は「こたつ船」が運航しており、雪化粧の大歩危渓谷を楽しめます。また冬だけでなく、桜並木や新緑、紅葉と四季折々の美しい表情を見ることができるので、季節ごとに大歩危・小歩危に立ち寄っていただきたいと思います。なお、この近くには四国有数の温泉地である「大歩危祖谷温泉郷」がありますので、ゆっくりとお湯に浸かりながら雄大な自然を体感するのもいいですし、ゲストハウスやカフェも充実しています。

祖谷はその渓谷美とともに、平家落人伝説でも有名な地です。全国に数多くある平家落人伝説の中でも特に信憑性に富んだ地域と言われています。そして、「その昔、屋島の戦いで源氏に敗れた平家一族の一人、平国盛(教経)が安徳天皇を奉じて祖谷山に逃れてきた」という伝説と、それにまつわる数多くの史跡が残されています。

こうした歴史に興味がある方には、平家落人伝説ゆかりの「平家屋敷民俗資料館」がお勧めです。資料館として使用されているのは、安徳天皇の御典医、堀川内記の子孫代々の屋敷でもあります。堀川内記は平家滅亡の折に一族とともに祖谷に入山し、薬草の豊富なこの地で医業と神官を務めた人物であり、江戸時代の民家をそのまま保存した館内には、平家の資料や遺品の他、鎧や旗、古文書、生活用品などが展示されています。

また、祖谷渓にかかる「かずら橋」(国指定重要有形民俗文化財)も平家落人伝説を象徴する史跡の一つです。その由来は平家の落人が追手から逃れるために切って落としやすいかずらの木(シラクチカズラまたはサルナシ)で吊り橋を作ったものと言われています。昔は渓谷地帯唯一の生活路として祖谷川各所に架けられていたそうですが、今では西祖谷山村の「祖谷のかずら橋」と東祖谷の「奥祖谷二重かずら橋」を残すのみとなっています。祖谷のかずら橋は長さ45m・幅2m・水面上14m、重さ約5tとなっており、3年ごとに架け替えが行われており、今年の1~2月にかけて架け替え工事が行われました。

祖谷といえば、その昔は断崖を通らなければたどり着けない「秘境」でしたが、現在は周辺環境が整備され、大型バスやマイカーでも行くことができるスポットとして、毎年30万人を超える観光客がこの橋を渡っています。足もとの深い谷を真下に見ながら、一歩踏み出すごとにギシギシときしんでユラユラと揺れる感じはスリル満点です。毎晩19時から21時30分の間にはライトアップが行われている他、かずら橋の周辺ではこの地方の郷土料理「でこまわし」(里芋や豆腐、こんにゃくなどを串に刺し味噌だれをつけて炭火で焼いた田楽)や「祖谷そば」、蕎麦の実からつくる「そば米雑炊」、「鮎・アメゴの塩焼き」が売られていますし、最近では「ジビエ」料理も人気を博しています。

アウトドアスポーツの聖地として世界的な知名度も向上

続いて紹介したいのがアウトドアスポーツの舞台としての祖谷渓の魅力です。ラフティングやカヤック、最近ではジップラインの人気スポットとして海外のメディアでも紹介されています。たとえば2017年12月にはアメリカの旅行雑誌『Travel+Leisure』で「18年に訪れるべき50の旅行地」の一つに日本で唯一、祖谷渓(Iya Valley)が選ばれ、「17年にラフティング世界選手権が開催されたほどの世界レベルの峡谷、自然環境に、茅ぶき民家ステイやジップラインという新たな魅力が加わった」と紹介されました。

ラフティングとはラフトと呼ばれるゴムボートで激流を下るアウトドアスポーツであり、その魅力は初めての人でも手軽に冒険気分を味わえることです。15年の「大歩危リバーフェスティバル」をきっかけに、17年10月には「ラフティング世界選手権」が開催され、22カ国から71チーム・521人のトップアスリートが集結しました。「大歩危峡・小歩危峡」はこの時の大会競技コースであり、年間を通して安定した豊富な水量とグレード4の水質と透明度を誇っています。

一方、ジップラインとは森の中の木々の間に張られたワイヤーを、プーリーと呼ばれる滑車を使って滑り降りるフランス発祥の新しい遊びで、アメリカやカナダを中心にブレイク中です。絶景とスリルを同時に楽しめるレジャーとして、祖谷渓にも17年に「フォレストアドベンチャー・祖谷」がオープンしました。傾斜地を利用し、祖谷渓を流れる祖谷川をジップスライドで一息に滑り降りることができます。高低差50m、長さ360mのジップラインは国内トップクラスだそうです。

祖谷はまさに豊かな自然・文化・歴史に彩られた魅力的な観光スポットです。ゆっくりと秘境めぐりを楽しんでみてはいかがでしょうか。

2014年に国指定天然記念物に、15年には国指定名勝に指定された大歩危

2014年に国指定天然記念物に、15年には国指定名勝に指定された大歩危

かずら橋遠景。橋床は梯子のようになっており10cm以上の隙間があり、眼下に川が見える

かずら橋遠景。橋床は梯子のようになっており10cm以上の隙間があり、眼下に川が見える

かずら橋近景

かずら橋近景

冬のかずら橋/小歩危峡の紅葉

冬のかずら橋/小歩危峡の紅葉

土料理の「祖谷そば」と「そば米雑炊」、「でこまわし」

土料理の「祖谷そば」と「そば米雑炊」、「でこまわし」

初心者でも安心して体験できるラフティング

初心者でも安心して体験できるラフティング

スリル満点のジップライン

スリル満点のジップライン

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