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中部会
独自企画②

2023年03月号

「愛知のキムチ」の
誕生ストーリー

愛知県では新しく県産農林水産物を活用した加工食品の掘り起こしと販路開拓を図るため、2012年から「愛知のふるさと食品コンテスト」を実施しています。2022年度には県産の未利用資源をブレンドした「愛知のキムチ」が最優秀賞(知事賞)を受賞しました。この商品が誕生した背景や開発時のエピソードについて、(株)ダイニチ食品の磯貝 幸弘社長にお話を伺いました。

「糖しぼり大根」一筋の老舗漬物屋

 人知多半島の付け根部分、愛知県名古屋市の南側に位置する古くからの漁業のまち、東海市。当社は1959年にこの東海市で創業して以来、地元名物の「糖しぼり大根」を主力商品として長く手掛けてきました。糖しぼり大根とは、皮を剥いて塩漬けにした大根を糖分の浸透圧でさらに脱水し、搾って作る漬物沢庵で、当社の工場では1日2tの国産大根を加工。大根1本を丸ごと塩水に漬け込んだ後、糖液に1週間から10日漬け込んで熟成させます。中でも、長年培ってきた技術で作り上げた「北海生一本半割」は口当たりの良さとポリポリした食感が人気です。中部地方ナンバーワンの売上を誇っています。 地元の未利用資源を活用した

ダイニチ食品の主力商品の一つ、「糖しぼり大根」の「北海生一本半割」

ダイニチ食品の主力商品の一つ、「糖しぼり大根」の「北海生一本半割」

「愛知」の2文字が強調されたパッケージが、地元ではお馴染みになりつつある

「愛知」の2文字が強調されたパッケージが、地元ではお馴染みになりつつある

愛知の特産品の旨みたっぷりの「愛知のキムチ」

愛知の特産品の旨みたっぷりの「愛知のキムチ」

「愛知のキムチ」の魅力

 当社ではこうした伝統的な食品製造を基盤とした上で、老舗企業として新たな名物を生み出して地域の活性化につなげようと、これまでさまざまな商品開発にチャレンジしてきました。

 2020年、地元の愛知学泉大学家政学部(愛知県岡崎市)の学生とともに行った商品開発の体験型授業もその一つです。この授業を通して開発することになったのは、漬物市場の約4割を占めるキムチ。昨今、市場で主流となっている「子どもでも食べやすい甘口のキムチ」を基本としつつも、「愛知の特産品を使って地元ならではのおいしいキムチを目指す」ことをコンセプトに掲げました。そして名古屋コーチンの鶏ガラを粉砕して旨みを高濃度で抽出したエキス、サイズが小さくて市場に出荷できないタマネギといった未利用素材を積極的に活用、さらには地元企業(株)あつみの鰻の頭部を使った魚醤「鰻能」、味噌・醤油メーカーのイチビキ(株)が開発した味噌由来の乳酸菌「蔵華(くらはな)乳酸菌lTK-1」などもブレンドすることで、より甘みと旨みがのったキムチを作り出しました。

 これを「愛知のキムチ」として売り出したところ評判となり、2022年度の「愛知のふるさと食品コンテスト」で最優秀賞(知事賞)を受賞することができました。これを機に地元メディアで取り上げられて販売量は10倍以上に増加、ホームページで公開している名古屋コーチンの鶏肉や卵、県産米や県産長ネギを使った「愛知のキムチdeあまうまっキムチ炒飯」、愛知のキムチで作った特製ダレで手羽先を揚げ焼きにした「キムチで甘辛うみゃぁ手羽先」といったオリジナルレシピも好評で、県内での認知度がじわじわと上昇しています。現在の販売数量は1カ月で5万パックほど、今後はさらに販路開拓を進め、いずれは地域の全ての量販店で購入できる地元馴染みの逸品にしていきたいと考えています。

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