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事務所 訪問

2018年04月号

大森一仁税理士事務所 写真

顧問先ファースト」をモットーに
税務署時代の経験を生かした相続対策を実施

 徳島市を拠点とし、徳島県で最大規模を誇る税理士法人マスエージェントグループの支社機能も担う大森一仁税理士事務所。大森 一仁所長は税務署勤務を経て独立し、現在は相続対策を中心としたサービスに力を入れています。早速、これまでの歩みや展望について、大森所長と齋木 治郎先生に伺いました。

税務署時代の先輩・後輩が協力の末に事務所を合併

大森先生と齋木先生はともに税務署OBであり、先輩・後輩の関係にあたるそうですね。

大森 一仁所長(以下、敬称略) 齋木先生は私が税務署勤務を始めた頃に出会った先輩で、2016年3月に自分で税理士事務所を開業した際に、その縁を頼って相談したところ、齋木先生が加盟していた税理士法人マスエージェントグループで相続分野の顧問を務めることになったのです。そして、同グループの支社という機能を担わせてもらうことになりました。また、同年12月には齋木先生の事務所と合併し、職員の皆さんや顧問先を引き継ぐことになりました。

齋木先生の事務所との合併はスムーズだったのでしょうか。

大森 合併前から齋木先生の事務所のお手伝いをしていたので職員の方々とも顔見知りでしたし、私の事務所は立ち上げて間もない状況だったので、かなりスムーズに業務を統合していくことができました。

齋木 治郎先生(以下、敬称略) 合併を決めてから大森先生とふたりで、私の顧問先をまわりましたが、評判は上々でした。世代交代という点でも意味のある合併になったかと思います。

納税者の立場を重んじさまざまな相続対策を実施

現在は通常の顧問契約の他、マスエージェントグループと大森一仁税理士事務所に寄せられた相続相談などに対応されているそうですね。

大森 業務的には養子縁組や生命保険の活用といったスキームを提案していくわけですが、その前提として相続の場合はどうしてもある種の〝不平等〟が生じることを念頭に置くように心がけています。例えば、養子縁組をしたほうの家族は相続が有利に進みますが、それ以外の家族は得られる相続金額が減少してしまうわけです。ともすれば、それは家族や親族の間でのあつれきにつながりかねません。だからこそ、私は相続の専門家として、関係者全員にできるだけそれぞれのスキームの長所や短所、特色を説明し、納得してもらうように心がけています。

税務署職員から税理士という立場に変わったことで、新たな発見はありましたか。

大森 あらためて一般の方にとっては相続という制度が分かりにくいものであるということを実感しました。

何か納税者の節税につながるような話はありますか。

大森 不動産などの譲渡所得に関しては、取得費と造成費を併用して控除することができないと思われがちですが、考え方一つで併用するのと同じような効果を上げることができます。具体的には造成費による値上がり分を雑所得などに計上することで、結果的には税務署が制定している概算取得費(5%)よりも費用を引き上げることができ、節税効果を得られるようになるのです。  また、マンションを新築してすぐに相続が発生し、固定資産税評価額が決定されていない場合その金額は通達上、建築価格の7掛けとされています。しかし、実際には建築価格の4割や5割の評価額に落ち着くことがほとんどですし、しかも通達通りに7掛けで申告してしまうと、あとになって4割や5割に引き下げることはできません。というのは、税務署において税額をプラスに変更する「修正申告」は認められても、マイナスに変更する「更正の請求」は誤りがないため認められていないからです。このような事情を把握できていれば、相続税の申告の際にはあえて低めに申告し、それを固定資産税評価額決定されたあとで「修正申告」するという手法を取ることができます。

その他、あまり一般的に知られていないと思う手法はありますか。

大森 退職給与引当金に関しても案外と知られていないことがあります。例えば、債務控除は、確定した債務でないと控除することができないとされています。退職給与引当金は確定債務でないため債務控除できません。しかし、実は資産として事業用資産の項目で退職給与引当金をマイナス財産として計上することができ、結果的に債務控除したのと変わらない効果を得ることができるのです。

民事信託や家族信託といった手法にも注目が高まっていますが、そのあたりはどうでしょうか。

大森 民事信託(家族信託)は事業承継には便利ですが、節税に効果的かというと微妙なところです。それは民事信託(家族信託)の場合、法律があるわけでもないため、自分たちで契約書(公正証書)を作成し、明確なルールを設けた上で適正かどうか税務署の確認を得る必要があり、それには契約ミスのトラブルや、かなりの費用や手間がかかってしまうからです。正直言って、私たちの顧問先の多くにとっては、やや複雑で重すぎるスキームになっているのです。そこで、私が注目しているのが条件付き贈与契約という手法です。これはたとえば「子どもが高校に入ったら学費をいくら贈与する」とか「子どもが住宅を建てた時にいくら贈与する」といった具合に、贈与が発生するタイミングやポイントを契約書に明記し、司法書士に証人になってもらうものです。これなら民事信託や家族信託に比べて費用も少なく気軽に実施することができるので、現在、司法書士の先生と提携し、このスキームの普及促進に取り組んでいるところです。

写真1

差し色として随所に赤と黒を施していたり、白を基調としていたり、フロアによってデザインに変化を加えています

写真2

「顧問先のことを何よりも優先する事務所をつくりたい」と話す大森 一仁先生(右)と、「世代交代という点でも意味のある合併になった」と話す齋木 治郎先生

コミュニケーションを重視した立ち寄りやすい事務所を目指す

年間でどの程度の相続案件に対応しているのですか。

大森 税理士法人マスエージェントと当事務所でそれぞれ窓口を設けていますが、昨年はそれらを合わせて年間30件ほどの相続を手掛けました。またその他、同数くらいの相続対策にも対応しました。

セミナーなどにも取り組んでいるのでしょうか。

大森 住宅メーカーや金融機関、生命保険会社などからの依頼で、相続セミナーの講師を務めさせていただいています。また、金融機関から個別の相続相談を依頼されるケースも増えています。そういった場合、相談者の多くはまだ相続対策の重要性に気づいていないのですが、実際に具体的な節税対策や効果を示すと、ほぼ間違いなく乗り気になってくれます。

職員教育については、どのようなことをモットーにしていますか。

大森 顧問先のことを何よりも最優先するとともに、顧問先とのコミュニケーションを大切にしてほしいと思っています。そうすることで、顧問先が抱えている課題をいち早く把握し、積極的に具体的な対策や方針を打ち出していきたいと考えています。

齋木 私も個人で事務所を構えていたときには、顧問先との関係性づくりに注力してきました。しかし、それが馴れ合いになってしまうと、ともすれば税務リスクにつながる恐れがあります。だからこそ、いかに親しい間柄になっても、税務会計業務に関しては冷静な判断を忘れないようにしなければなりません。そのあたりは私自身、長年にわたって難しいと感じるところなのですが、是非とも大森先生にはそのバランス感覚を体現した事務所をつくり上げてほしいと思います。

今後の展開についてお聞かせください。

大森 現在はビルの1階と2階を拠点としているのですが、いずれは3階も借りて、司法書士や行政書士にも入ってもらおうと思っています。また、社会保険労務士の資格取得を目指している職員がいるので、早い段階でワンストップサービスの体制を実現できるかもしれません。それから先ほどの話題にも関連しますが、顧問先とのコミュニケーションをより親密なものにするために、誰もが立ち寄りやすい事務所をつくっていきたいと考えています。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

森 一仁先生

税務署勤務時代から税理士業に興味があったという大森先生。「体力と気力があるうちに独立したい」と考えて40代後半に一念発起、税理士として独立することにしたそうです。そして、2016年3月に大森一仁税理士事務所を開業し、税務署時代の先輩だった齋木先生に相談したところ、「私が専門とする資産税に関するニーズがあるということで、税理士法人マスエージェントの顧問に就任し、資産税部門を担当することになりました」と大森先生。その後、しばらくして税理士法人マスエージェントグループの支社として参画。さらに同年12月には齋木治郎税理士事務所と合併し、現在の体制になったそうです。

齋木 治郎先生

大森先生と同じく税務署勤務をしていたという齋木先生。ところが、税務署の仕事を続けるうちに「納税者を支える仕事がしたい」と感じるようになり、20年ほど前に独立したそうです。「最初の頃は小規模な飲食店をまわり、地道に顧問先を増やしていきました。結果的にその顧問先がベースになり、次々と顧問先を拡大していくことができました」と齋木先生。そして10年ほど前には高校時代の同級生でもある税理士法人マスエージェントの石井 辰美会長からの誘いを受けて、税理士法人マスエージェントグループに参画。その後、大森一仁税理士事務所に合流し、現在は大森先生と二人三脚で事務所を盛り立てています。

大森一仁税理士事務所

所在地
徳島県徳島市東出来島町27-1 NKNビル
TEL
088-602-7112
FAX
088-602-7113
設立
2016年
職員数
8名

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