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四国の元気企業

2018年04月号

米の醸造発酵技術から発見・開発した
「ライスパワーRエキス」
新分野を開拓

香川県綾歌郡綾川町にある勇心酒造(株)は今年で創業164年を迎える老舗蔵元です。酒造りと同時に米の総合利用を目指した研究・開発「ライスパワープロジェクト」を40年以上にわたって続けてきたことで有名です。同社が開発した「ライスパワーエキス」で新規開拓したバイオビジネスの現状と今後の展望について紹介したいと思います。

安政元年(1854年)に造り酒屋として開業した勇心酒造(株)は、香川県の豊かな自然に寄り添って酒造りを手掛けてきました。そして一方で、5代目である徳山 孝社長は東北大学や東京大学大学院で微生物学、醸造技術を学び、国税庁醸造試験所での勤務を経た後に、40年以上も前から酒造りの枠を越えた「ライスパワープロジェクト」を展開してきました。そしてその結果、同社は醸造発酵技術と最新のバイオテクノロジーを融合させた「日本型バイオ」という概念を生み出し、米から生み出した新規機能性素材「ライスパワーエキス」の開発と製品化を実現させました。

「この世界初のオリジナル素材によって、当社のビジネスは大きく変革しました」と話すのは徳山 孝仁常務。事実、同社は1989年に「ライスパワーNo.1」(皮膚をすこやかに保つ成分)、93年に「ライスパワーNo.101」(抗潰瘍効果などの改善成分)、95年に「ライスパワーNo.11」(後述)と次々に新たな成分を開発し、それらを取り入れた入浴剤や自社ブランド基礎化粧品「ライースR(RAIZ)」などを製品化してきました。そして、それらの製品はマスコミや医学研究者の間で大きな反響を呼んだそうです。 

とりわけ注目を集めたのはライスパワーNo.11で、2001年には新規効能「皮膚水分保持能の改善」で厚生労働省の認可を受けました。医薬部外品での新規効能は旧薬事法制定以降で初とあって、本格エイジングケアシリーズ「ライースリペア」や「アトピスマイルR」の商品化、さらには多くの大手化粧品、医薬品メーカーからのOEM受注にもつながっていきました。ちなみに、ライスパワーNo.11は人間の皮膚が本来持っている水分保持能力を改善する効能を日本で唯一有効成分として認められたエキスで、肌の奥深くまで浸透し、内側からセラミドなどの細胞間脂質の生成を高めるそうです。

同社がこれまでに開発したライスパワーエキスは合計で36種類、そのうちの13種類が商品化されています。最近の動きとしては、「ライスパワーNo.6が15年11月に『皮脂分泌の抑制』で新規効能の認可を受け、今年4月にはこの成分を配合したニキビ対策などのスキンケア商品を発売する予定です」と徳山常務。なお、現在までに医薬部外品の薬用化粧品の中で新規効能が認められた例は4件のみで、同社はそのうちの2件の新規効能認可を取得しているそうです。徳山社長は今も現役の研究者として社内に30人いる研究員の先頭に立って第一線で米の持つ可能性を探求し続けているそうですから、これからも新たな成分を発見していくことでしょう。

現在、同社の総売上の99%がライスパワーエキス関連の商品となっているそうですが、その原点である酒造りにも余念はありません。徳山常務によると、「原料には契約農家に減農薬で栽培委託している香川県産の『山田錦』と綾川町産の『おいでまい』、そして綾川の伏流水を使用しており、アルコール添加をしないやや辛口の純米酒造りにこだわっています」とのこと。そして、「これからも丁寧な酒造りと米の研究開発を続けながら、常に新しい分野を切り開いていきたいと思います」と意欲的です。同社とライスパワーエキスはまさに香川が世界に誇るべき、地域資源と言えそうです。

「ライスパワーNo.11」を配合した自社ブランドのスキンケアシリーズ「ライースリペア(RAIZ repair)」

「ライスパワーNo.11」を配合した自社ブランドのスキンケアシリーズ「ライースリペア(RAIZ repair)」

同社の取り組みが書籍化された『生かされている哲学』(大平 浩二著、PHP研究所発行)

同社の取り組みが書籍化された『生かされている哲学』(大平 浩二著、PHP研究所発行)

勇心酒造株式会社

所在地
香川県綾歌郡綾川町小野2088-1
TEL
TEL:087-876-4111
URL
http://www.yushin-brewer.com

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