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会計人のリレーエッセイ

2019年10月号

高齢者向け
消費税セミナーを終えて

濱谷 和美

九州会

長崎県長崎市濱谷 和美

 本年10月からの消費税増税を前に、長崎市役所のある課より「消費税増税に備える家計への負担軽減」と題し高齢者向けセミナー講師の依頼を受けました(本年7月時点)。長崎市では年に約3回、一定の高齢の方を対象に毎回学ぶ内容を変えながら健康教室を開催しているそうです。

 セミナー参加者は74歳以上で最高齢94歳の方も参加されるとのことで、租税教室で小学生向けに税金の話をしたことはあるものの、高齢者向けのセミナー教材はどうしたものかと迷いました。

 市の職員の方からは、健康教室では税金に関するテーマは初めてですが、毎回居眠りされる方もいらっしゃるので、気負わずにどうぞということでした。そこで、消費税率の引き上げと軽減税率に関するテキスト通りの説明は避けて会話型のセミナーの進め方を念頭にレジュメ作成をしてみました。

 セミナー当日、会場である福祉センターの教室には30名程度の方が参加され、今回の消費税増税、特に軽減税率の導入には大きな関心と不安をお持ちで、おそらくテレビのワイドショーなどで「イートインで食べると税率は8%か10%か?」などというクイズまがいの軽減税率に関する話題をご覧になっていたのでしょう、そのような説明になると皆さん喜々として正解をお答えになろうとしました。しかし、今回の消費税増税の本質的な部分は少子高齢化に伴う「福祉財源の確保」です。増税分が予定通り活用されると福祉関連収支はどのように推移するのかなど本質に触れるような情報は、高齢者の方がよくご覧になるであろうテレビメディアでは、あまり目にしなかったように思います。確かに買い物をする際の混乱のほうに目を奪われるのはやむを得ないことかもしれません。

 ところで、長崎市の人口は約41万人。2018年の人口移動報告によると、三菱重工業長崎造船所で客船建造が終了したことによる余波も一因としてあるものの、長崎市の転出超過数は市町村別データを取り始めてから初の全国ワーストワンとなりました。

 深刻な人口減少は他市町村も同様とは思いますが、自然減よりも若年層から生産年齢人口の転居などによる社会減が長期にわたり続いていることは、生活実感としても感じられます。

 長崎市は、その対策として自然減、社会減それぞれの課題について戦略審議会を発足し、来年3月までに次期戦略を策定するとのことです。

 さて、私のセミナーも終了時間を迎え、ある受講者の方から「先生、10月からは何も買いません!!」との声があがり、皆さんドッと笑い出す場面がありました。

 このセミナーは有益なものになったのでしょうか?

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