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事務所 訪問

2019年10月号

硴塚絵理子税理士事務所 写真

女性が働きやすく、顧問先にとって
親しみやすい事務所を目指して

女性4人、和気あいあいとした家族のような雰囲気の硴塚(かきづか)絵理子税理士事務所。ご自身の経験から「女性が働きやすい環境づくり」を大事にしてきた所長の硴塚 絵理子先生に、これまでの歩みやスタッフとのコミュニケーション、顧問先支援のあり方などについて伺いました。

20代での資格取得後から事務所開業までの紆余曲折

まず、開業に至るまでの経緯をお聞かせください。

硴塚 絵理子所長(以下、敬称略) 私が税理士という仕事のことを初めて知ったのは、高校3年生のときです。理系専攻で将来は医療業界で働くことを志望していたのですが、母が税理士資格を取ろうと勉強を始めたことがキッカケとなり、この仕事に興味を持ったのです。当時はまだコンピューター会計は全くといっていいほど普及しておらず、「紙と鉛筆と電卓さえあれば、多数の企業経営者の顧問としてやりがいある仕事ができる」というところに惹かれました。

 福岡の大学を卒業後、資格学校に通い、熊本に戻ってからは地元の会計事務所に勤務する傍ら勉強をつづけて1990年に資格を取得しました。

そこから現在の事務所を立ち上げるまで、いろいろとご苦労があったそうですね。

硴塚 実は29歳で一度独立しました。ただ、当時はまだ熊本県内に女性の税理士は少なく、特に20代の女性税理士となるとほとんどいませんでした。まだ実績がなかった私はなかなか信頼を得られず、顧問先は一向に増えませんでした。それで事務所を閉め、もう一度別の会計事務所に勤めることに。そこには3年ほど勤務したのですが、その間に子育てをしながら働くことを経験しました。これまでのようにフルタイムで働くのは難しく、資格を持っているのに税理士として十分に働けないことでもどかしい思いをしました。

 そこで、私は地元の企業に就職することを決意しました。「この業界をいったん離れ、より広い世界で経験を積んでみよう」と思ったのです。入社したのは、これまでと異分野である地元の建設業者。経理担当の正社員から始まって、仕事の外注の仕方や稟議をスムーズに通すための工夫の仕方、品質保証のためのISO認証取得の段取りなど、社会人としてさまざまなことを学び、7年間の会社員時代のうち後半は管理職にまで出世、経営の数字や指標について役員に説明する役割を果たしていました。

 こうした経験の傍ら、私は再度の個人事務所開業を目指して準備を進めました。異業種交流会などに参加し、地域金融機関や各種士業の方、企業経営者などの人脈拡大に努めたのです。10年前と比べると女性が働くことに対する世間的な理解がかなり変化していたので、私は強い手応えを感じつつ、2001年1月に現在の硴塚絵理子税理士事務所を開業することができました。

7年間の企業勤務を経て、あらためて開業されたわけですが、滑り出しはいかがでしたか。

硴塚 貯めていた自己資金と借金で小さな事務所を借り、何よりもまず看板を掲げました。「自宅兼事務所の片手間で仕事している」と周囲に見られたくはなかったですし、あくまでも税理士として独り立ちして働きたいと考えていたので、オフィスと看板を構えたほうが顧問先の信頼を得やすいと思ったのです。ところが、事前に人脈を広げる努力をしていたとはいえ、単独で立ち上げた事務所ですから、当然、顧問先はゼロからのスタートでした。最初はほとんど仕事が入らず、苦しい経営を強いられました。半年ほどたって、前職の経験で仕組みをよく理解している建設業界から仕事が入るようになった他、事前の人脈づくりが効いてきて地域金融機関などから徐々に声が掛かるようになっていきました。

写真1

和気あいあいとした家族のような雰囲気のオフィスです

女性が働きやすい環境を意識した事務所

硴塚先生の事務所は現在、先生をはじめとして職員の方たちが全員女性で、全体的に和気あいあいとした家族のような雰囲気が感じられます。お一人で開業された後、どのようにしてこうした体制や雰囲気をつくってきたのでしょうか。

硴塚 以前、子育てをしながらの勤務に苦労した私自身の経験から、「自分が事務所を開くときには女性が働きやすい場づくりをしよう」と早くから考えていたのですが、開業後、私がまだ幼い子どもを連れて事務所に通うと、職員たちは自然とよく面倒をみてくれました。それで「やはり職場はこうあるべきだ」とあらためて思ったことを、今でもよく覚えています。開業から5~6年した頃に職員は女性限定にしようと決め、以来、事務所に子どもがいる状況は当たり前となり、まるで保育園のようにスタッフの子どもたちが元気に遊んでいます。もちろん、誰かの子どもが病気になったり、行事がある場合などはお互いフォローし合って休めるようにしています。ちなみに現在いる3人の職員は皆10年以上勤続しているベテランで、まさに家族のような間柄です。

家族のような親しさとビジネスパートナーの信頼感

顧問先とは、どのような関係を築いていますか。

硴塚 顧問先の中にも、家族ぐるみのお付き合いをさせてもらっている方たちがたくさんいて、男女問わず「お母さんのよう」に慕ってくれています。特に最近では、うれしいことに「女性税理士の方に顧問になってほしいと思っていた」と声を掛けてくださる経営者の方が増えています。経理担当には経営者の方の奥様など女性が多いので、女性税理士のほうが気軽に相談に乗れるという事情があるようです。

 常に意識しているのは「お客様にとって信頼できるビジネスパートナーでありたい」ということです。顧問先はほとんど地場の中小企業・小規模事業者であり、これまで税務関係のみならず、密接にコミュニケーションをとることで事業承継や人事面などさまざまな経営課題を見える化し、一緒にその解決に取り組んできました。

顧問先支援の高度化や女性税理士の応援

親しみやすさと信頼感を大事にされている硴塚 絵理子先生

親しみやすさと信頼感を大事にされている
硴塚 絵理子先生

最後に、今後の展望をお聞かせください。

硴塚 顧問先のためにできることを、これまで以上に広げていきたいと考えています。例えば当事務所は中小企業庁の経営革新等支援機関に認定されていますが、現状では顧問先のために認定機関としての役割を十分に果たせているとは言えません。より高度な経営支援や助成金活用など、地場の中小企業・小規模事業者が経営力を少しでも高められるよう勉強していきたいと思います。

 またここ数年、顧問先の自計化やIT化がジワジワと増えていますが、これをより一層推進していきたいと考えています。

硴塚先生は南九州税理士会の会務にも、いろいろな形で携わっていますね。

硴塚 これから先、私が特に貢献したいと考えているのが女性税理士や若手税理士応援です。現在、南九州税理士会には約70人の女性税理士が所属していますが、私自身の経験を踏まえて「子育てをしながらでも顧問先支援できる」ということを広く伝える機会をつくっていきたいと思っています。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

 高校時代に税理士の仕事に興味を抱いた硴塚先生は福岡の大学を卒業後、福岡に進出したばかりの資格専門学校に通ったそうです。その後は熊本に戻って地元の会計事務所で働きながら勉学に励まれました。1990年に税理士資格を取得、29歳で独立し事務所を立ち上げたもののうまくいかず、事務所を閉めて別の会計事務所に約3年間、勤めました。さらに地元の一般企業で7年間にわたって働いた後、2001年1月に満を持して現在の硴塚絵理子税理士事務所を開業しました。

硴塚絵理子税理士事務所

所在地
熊本県熊本市中央区新大江2-11-6-502
TEL
096-342-6900
設立
2001年
職員数
3名

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