2020年05月号
舌癌そして
鬱病からの復活
私は15年前、堀ちえみと同じ症状で舌癌になり、病院の先生からは舌を半分切るしかないと宣告されました。ろれつが回らなくなるということは、税理士業の継続が困難となり「廃業」という二文字が脳裏をよぎりました。家族はどうなるのだろう、職員はどうなるのだろうと頭の中が真っ白になりました。
しかし、舌を切らずに舌癌を治療する「癌治療の最前線」というテレビ番組を見たことを思い出し、早速インターネットで検索してみると京都大学医学部附属病院で「小線源治療」という術式があるということが分かりました。今まで撮ったCT・MRIなどの画像を持ってセカンドオピニオンとして京大病院で診てもらうと、今ならステージⅡなので小線源治療ができると回答をもらい早速入院しました。1カ月間の放射線照射後、小線源の治療も無事終わり、4カ月後には舌を切ることなく仕事が続けられていることに感謝しました。その1年後、リンパ節にしこりのようなものが出来たため診てもらうとそれは癌細胞でした。リンパ節に転移するとなると、癌細胞が全身を駆け巡ると聞いていたので今度はダメかと絶望しました。
しかしその癌細胞は転移したものではなく、小線源治療をするための外科手術の際に癌細胞をそこに移植したような状態になったのではないかとのことでした。放射線を照射した個所を切開すると治癒が遅く、行う必要のなかったリンパ節廓清後の痛みはなかなか治まらず悔やまれました。さらに1年後、軽度の脳梗塞を発症し方向感覚の麻痺や運動機能障害が出ました。CT画像を見せてもらうと、脳の一部が白化しているのが分かりました。ただでさえ精神を病んでいるのに追い打ちをかけるように悩みごとが増え、鬱の状態になりました。
この鬱状態を脱するには自分が楽しいと思えることをやるべきだと心に決め、妻と旅行をすることにしました。まずは身近な温泉地から始め、そのうち寺めぐりをテーマに四国八十八ヶ所巡りも達成しました。そうしているうち随分と鬱状態が改善されてきたように思います。当然、定期的にCT検査もしていましたので、先生から白化した患部が周りの脳の圧力によっていつの間にか小さくなり、健康な状態に戻っていると告げられたときの喜びはひとしおでした。
今では世界遺産巡りをテーマに年3回を目標として妻と海外旅行を楽しんでいます。