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不屈の経営者に聞く

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臂 幸宏 氏株式会社三光白衣 取締役社長

「意識」ではなく「環境」を変える老舗ユニフォーム企業をDXと組織改革でV字回復へ‼

さまざまな逆境をはねのけてきた経営者にスポットを当てる本コーナー。 第7回目はコロナ禍で年間2000万円規模の赤字に陥っていた老舗ユニフォーム企業、 (株)三光白衣をDXと組織改革によってV字回復に導いた取締役社長の臂 幸宏氏にお話を伺いました。

Profile

[ひじ・ゆきひろ]製薬業界を経て、母の縁からユニフォーム業界へ。その後、大手商社に移籍し、長年にわたり大手企業へのユニフォーム納入を手がける。65歳を目前に先代の誘いを受け、2023年に(株)三光白衣の取締役社長に就任。コロナ禍で赤字に陥っていた老舗ユニフォーム企業の再建に着手し、基幹システム導入によるDXと組織改革を断行し、黒字化を実現した。

まず、御社の事業内容についてお聞かせください。

臂 幸宏・三光白衣取締役社長(以下、敬称略) 当社は飲食店や企業のユニフォームの企画・製造、そして販売までを一貫して手がける会社です。一般的なユニフォーム代理店はカタログ商品を仕入れて納める〝取り売り※〟が中心ですが、当社は自社店舗と自社ブランドを抱えているところに強みを有しています。店舗は渋谷、新宿、新橋に「三光白衣」、池袋、上野に「ビックユニフォーム」があり、ミシュランの星を獲得するような名店から大手外食チェーンまで、幅広い層の飲食店の皆様にご愛用いただいている他、製造業や物流倉庫業、交通機関、官公庁、病院・クリニックなど、多岐にわたる業種のお客様と取引があります。

※販売店(代理店)がカタログ掲載の既製服をメーカーや卸から仕入れ、そのまま顧客(企業や店舗など)に納品するビジネスモデル。 主に刺しゅう、プリント、サイズ直しなどの「二次加工」や「企業ごとの専用デザイン提案」を伴わない販売を指す

臂社長はオーナー経営者ではないそうですね。

 はい。創業者は現在、相談役となっており、その長男が会長を務めています。私自身は大手商社などで長年にわたってユニフォームの外販に携わってきた経験を買われてお声がけいただき、2023年1月に取締役社長に就任しました。

社長就任時、会社はどのような状況だったのでしょうか。

 コロナ禍の影響で、主力顧客の飲食店の休業・閉店が続き、年間1500万~2000万円の赤字を出していました。売上高は初めて緊急事態宣言が発出された20年3~4月頃と比べて2割強も落ち込んでいました。しかし、社内に危機感がほとんどなく、「コロナ禍だから仕方がない」「飲食店が再開すればお客様も戻る」と受け身の姿勢でした。加えて、営業データが可視化されておらず、業務が属人化し、ナレッジの蓄積がないなど、全体最適化を推進できる状況にありませんでした。顧客基盤が盤石だったがゆえに多くの社員が改革のマインドを失い、守りの姿勢に入ってしまっていたのです。

どのように立て直しを図っていったのですか。

 最初は前職時代に学んだ「予算は会社との約束」という考え方を浸透させようとしました。ところが、明確な売上目標を持たず、「去年と同じくらいできればいい」という発想だった社員たちはなかなか変わってくれませんでした。そこで気付いたのが、「人の意識は、言葉だけでは変えられない」ということです。意識を変えたいのなら、社員が自然と変わっていく〝環境〟を整えるしかないと思い立ったのです。

具体的にはどのような改革を行ったのでしょうか。

 大きく3つの柱がありました。1つ目はDXです。それまで会計システムしか入っていなかったところに、顧客・在庫・売上・利益などをリアルタイムで把握できる基幹システムを導入しました。それと同時に店舗のレジをPOSレジに切り替え、外販(法人営業部)と店舗の営業データを統合して管理できるようにしたのです。これにより、それまで感覚的にしか掴めていなかった傾向が可視化できるようになり、社員もお客様ごとに営業戦略を練ることができるようになりました。
 2つ目は組織改革です。以前は営業担当者でも就業時間の多くを出荷などの作業に費やし、営業活動に集中できない状況にありました。そこで、営業部を「営業本部」に格上げして店舗から切り離し、受注から発送までの業務は外部に委託するなどして、営業担当者がコア業務に集中できるようにしたのです。他方、店舗はキャリア10~15年のベテラン女性社員たちを中心に運営してもらうことにしました。彼女たちは会社のことも商品知識も熟知しており、女性ならではの細やかな気づきと丁寧な接客でしっかりとお客様の心を掴んでくれています。
 3つ目は会議改革です。かつては資料もテーマもなく、報告を聞くだけの受け身の会議でしたので、まずは私が率先してアジェンダや資料を用意して見本を示し、議事録の作成なども徹底することにしました。DXの成果も相まって、今では多くの参加者が率先して数字に向き合い、意見を述べるようになりました。さらに、最近ではチャットツールを使って、日常的に顧客情報や成功事例の共有がなされており、「待ち」から「攻め」の営業スタイルに変化しました。

そういった改革の結果、業績はどう変化しましたか。

 2024年には3900万円の利益を出すことができました。途中、25年以上勤めた営業部長や古参社員4名が退職するといった痛みを伴いましたが、16年ぶりに売上高が10億円に達し、前年比123%という数字でV字回復を果たせたのです。その後は微増といった状況ですが、最近はインバウンド需要という追い風が吹き始めています。台湾のインフルエンサーが当社の上野店を紹介してくれたことをきっかけに、一日に20~30人もの外国人観光客が訪れるようになったのです。中でもファン付きウェアが人気で、多くのメディアにインバウンド関連の特集などで取り上げていただきました。

独自のヒット商品も生まれているそうですね。

 「ビッキーズシューズ」という手を使わずにサッと履けるスリップインタイプの厨房靴が人気を集めています。滑りにくく、軽量ということで、最近は一般消費者からも支持を得られるようになってきたのです。こういったオリジナル商品については、商社を介さず信頼できる工場と直接組むことで、高いクオリティとリーズナブルな価格を実現しています。今後はユニフォームならではの機能性を打ち出しながら、BtoCの領域にも積極的に乗り出していきたいと考えています。

三光白衣社では定番のユニフォーム商品「白衣」

独自のヒット商品として人気を集めるビッキーズシューズ(白)

最後に今後の目標をお聞かせください。

 「都内ナンバーワンのユニフォーム会社」「業界トップクラスの販売店」を目指し、2030年には売上高を倍の20億円に引き上げたいと考えています。そのためにも、外販を軸にBtoBを拡大するとともに、インバウンド需要やオリジナル商品の人気をテコにBtoCの領域も着実に成長させていきたいです。

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