記帳業務、事務所業務をデジタルで効率化
MJSシステムを活用した
会計事務所の業務効率化の真髄
インボイス制度や電子帳簿保存法の開始により、会計事務所の業務負担は増加しています。 業務負担を軽減し、効率化を図るにはデジタルへの移行が最適です。そこで、本特集はMJSシステムを活用した 業務効率化の最新動向についてご紹介します。(監修:MJSタックスアカウントプロダクトグループ)
会計事務所白書に見るインボイス制度・電帳法への対応動向
昨今の人工知能(AI)の技術発展は目覚ましく、間もなくAIが定型の業務を担い、ミスを削減し、あらゆる情報の精度を高めて業務の時間短縮をサポートしてくれる時代を迎えます。
会計事務所の業務においてもそれは例外ではなく、これからの会計事務所に期待されるのは、専門知識と経験を活かし、顧問先の会計データから得られる情報を基に経営戦略を立案し、経営層にいち早く時代の要請に応えるアドバイスを行うなど、経営に関わる局面での舵取りを助ける、より重要な役割となるのではないでしょうか。
一方、インボイス制度と電子帳簿保存法(以下、電帳法)の開始以降、記帳業務の煩雑さが増加していることもまた喫緊の課題でしょう。
会計事務所を対象にMJSが2023年9〜10月に行った「会計事務所白書2023デジタル化に関する意識調査」によると、インボイス制度への対応において、会計事務所が課題だと捉えていたのは、「制度に対する理解」以上に「業務負担の拡大」でした。また、AIの活用やデジタル化で効率化できる業務については「仕訳業務」と考えている会計事務所が7割近くに及び、AI活用によるメリットについては「生産性の向上」「ヒューマンエラー防止」「労働力の有効活用」が多くを占めました(図1)。
この調査からインボイス制度と電帳法により業務負担が増加することへの懸念と、デジタル化により仕訳を中心とした業務の効率化が求められていることが分かります。
仕訳記帳業務は、『ACELINK NX-Pro会計大将』(以下、『会計大将』)の新機能として本年3月に登場した「AI-OCR」を活用し、自動化することで効率化を図ることができます。まずは「AI-OCR」の特長を見ていきましょう。
「AI-OCR」で仕訳入力を自動化する
「AI-OCR」は、スキャンしたレシートや手書きを含む領収書、通帳の画像を取り込み解析し、自動で仕訳を作成できる機能で、自動作成された仕訳は即座に『会計大将』と連携できます。新しい「AI-OCR」では導入準備の必要がなく、『会計大将』の仕訳入力と同じ画面構成のため、同じ操作感、スピード感で利用できる他、解析画面と仕訳入力画面が並列に配置されるので解析された証憑を見ながら仕訳確認ができ、大量の仕訳データ作成をストレスなく行えます。気になる利用料金も、解析枚数に応じた従量課金となるので、コスト面での無駄が少なく、今後も解析できる書類の種類が拡充される予定です。
では、顧問先のレシートや領収書、通帳以外の仕訳記帳業務についてはどのように対処するのが良いでしょうか。MJSでは「AI仕訳」を提供しています。「AI仕訳」は、銀行口座やクレジットカード等の取引明細データをはじめ、他社サービスとの連携による電子請求書やPOSデータなどの各種取引データを取得して仕訳データを自動作成する機能を備え、確定した仕訳から辞書を作成して、次回以降から科目・消費税・摘要などを正しく設定する「仕訳辞書」と過去の仕訳からAIが科目候補を自動セットする「AIによる科目設定」を備えます。AIが科目をセットし、正しくない場合は修正を行い、AIに学習させて仕訳辞書化することで正しい仕訳が起票される仕組みなので、使用するほど、効率化が進みます(図2)。
帳簿のチェックもAIで自動化
記帳業務の効率化に続いて、財務報告書の作成に目を向けましょう。仕訳のチェックには豊富な知識と実務能力が求められるため、実務経験豊富な職員あるいは所長自らが行っているケースも多いのではないでしょうか。この財務報告書作成に必要な月次監査業務もAIを用いることで効率化できます。『MJS AI監査支援』では『会計大将』の会計データと連携して、試算表および仕訳データを、あらかじめ設定されているシステム標準監査ルールに基づいた「著増減監査」「マイナス残高監査」「消費税区分監査」「仕訳明細監査」「仕訳重複監査」を自動で行い、異常を検知します。
また、システム標準監査ルール以外に独自のチェックルール設定も可能です。例えば、標準ルールでは、消耗品費10万円以上の仕訳検知を行いますが、9万円以上から監査対象にするといった独自ルールを反映させることができます。前述の5つの監査機能により、仕訳明細の構成情報から、貸借の勘定項目を類推し修正提案までをAIが担います。MJSの試算では一顧問先の仕訳チェックにかかる時間を70分と見ていますが、『MJS AI監査支援』を用いることで5分に短縮できます(図3)。
事務所内の業務進捗やスケジュール管理はデジタルで見える化を
ここまではAIを活用した記帳業務と仕訳チェックの自動化を中心とした業務効率化の方法を紹介してきました。
一方で、事務所内での業務効率化についてはどうでしょうか。事務所規模が大きくなっていくほど、職員それぞれの業務進捗やスケジュールへの目が行き届かなくなりがちです。また、顧問先対応内容などの情報共有にも時間がかかったり、そもそも十分な時間が確保できていなかったりすることもあるでしょう。あるいは、顧問先ごとにかかっているコストがどの程度なのか把握できているでしょうか。コストを知ることは事務所経営の健全化や事務所事業拡大への第一歩となります。
それらを実現するのが『ACELINK NX-Pro事務所管理』(以下『事務所管理』)です。『事務所管理』には「顧問先管理」「オフィス・マネージャー」「業務進捗管理」「報酬請求管理」「業務日報」「ファイリング」からなる6つの機能があります。また、「オフィス・マネージャー」の一部機能をスマートフォンから利用できるスマホアプリ『ACELINK NX-Pro事務所管理Smart』と業務日報をスマートフォンから入力できるスマホアプリ『業務日報NX』もラインナップしています。
ここでは業務効率化の観点から、各機能を見ていきましょう。
「顧問先管理」は顧問先の財務情報や申告情報など、各システムで作成したデータを集約し、一元管理できます。例えば、税理士法で作成が義務付けられている「税理士業務処理簿」の作成時には日報や申告書データを取り込むことができ、手早く簡単に処理簿を作成できます。「顧問先管理」に蓄積したさまざまな情報を検索し、分析を行うことができるので、各顧問先に合わせた情報発信やフォローを手早く行うことができます。
「オフィス・マネージャー」は職員のタスク(ToDo)と、そのスケジュールを管理できます。職員が顧問先に対して行った作業内容を報告する機能や、他の職員への伝言機能もありますので、事務所内でのコミュニケーションツールとしても使用することができます。前述のスマホアプリを利用すれば、移動中や外出先でもスケジュールや対応履歴の確認が可能です。
「業務進捗管理」は、顧問先に提供する業務を設定すると、自動的に業務進捗を管理し、各顧問先の状況をいつでも即座に確認できます。業務の遅延や報告漏れを防ぎ、より付加価値の高いサービスを顧問先へ提供できるように支援します。
「報酬請求管理」は『会計大将』と連動して、顧問先に対して請求書を発行する他、入金、未回収残高、源泉税の管理が行えます。また、顧問報酬や記帳報酬のような月極報酬や決算報酬等の年次報酬、一定期間ごとに発生する請求を固定情報として登録することで、請求データを自動作成することが可能です。なお、請求データをMJSの『Edge Tracker 電子請求書』と連携利用すると、シームレスに電子請求書が発行できます。本年10月から郵便料金が値上げされることが公表されていますので、これを機に請求書発行の全プロセスをデジタルに移行するのはコスト面からも効果的でしょう。
さらに、「報酬請求管理」では、後述の「業務日報」との連携により、顧問先別利益、報酬別利益の把握が可能です。顧問先別の原価(業務日報)と売上データ(報酬請求管理)を基に利益率などの計算を行った報酬請求コスト表を活用することで、顧問先への適正報酬の交渉や事務所内の業務改善の検討が可能です。さらに、報酬別の利益確認もできるため、事務所の強みや弱みを知り、利益率の高い業務の強化や、顧問先獲得の営業活動に活かすこともできるでしょう。
「業務日報」は、日報入力・申請を職員が行うと、上長が参照、承認、差し戻しなどを行えます。日報はその日のスケジュールと連動できるほか、ToDo、対応履歴とも連動し、効率よく作成することができます。スマホアプリを利用することで外出先からも作成が可能です。
「ファイリング」は、さまざまな形式の電子ファイルを統合管理でき、多種なファイル検索機能も備えます。ここからペーパーレスへの取り組みを進められるとさらなる効率化につながるでしょう。
業務改革がDXの入口に
デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性があらゆるところで高まっていますが、昨今の生成AIの発展を見ると、会計事務所においてもDXの波に乗れるかどうかが未来を左右するのではないかと考えさせられます。
MJSはDXを進める上で、まずは業務改革に起点を置き、安定した基盤の構築を進めて、初めて付加価値の向上につながると考えています。今回の特集はインボイス制度と電帳法による業務効率化をMJSシステムで解決するヒントをお届けしましたが、その本質は効率化を超えた業務改革から始まるDX化にあります。
冒頭でも述べたように、ぜひ、デジタルを活用し、会計事務所ご自身のDX化を進めることで、会計事務所の皆さまが顧問先へのより高度な経営支援を行えるよう、MJSは今後もテクノロジーと情報サービスを通じて支えてまいります。