外国人労働者に選ばれる職場環境の整備が急務
最新の外国人労働者雇用と
中小企業が雇用する際の注意点
2025年10月末時点の国内の外国人労働者数は前年比11.7%増の257万1037人となり、 13年連続で過去最多を更新しました。政府は外国人との共生に向けて18年に「外国人材の受入れ・共生のための 総合的対応策」を公表し、26年1月には新たに「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を 取りまとめるなど、外国人労働者を迎え入れる政策に注力しています。本特集では昨今の外国人政策事情を概観しつつ、 雇用の観点からどのような注意点があるか、中小企業の経営者向けに外国人雇用の指南をしてきた 社会保険労務士の山田 真由子氏にお話を伺いました。
日本国内の外国人労働者数13年連続増で250万人超へ
日本は深刻な労働力不足に直面しており、2030年には644万人の労働者が不足すると予測されています。これまで「一億総活躍社会」の下で女性やシニアの活用、DXなどが進められてきましたが、女性の就労率は既に高く、シニアの高齢化や中小企業の専門知識不足もあり、即座に成果を上げるのは難しい状況です。こうした中、改めて外国人労働者の活用が大きな柱として注目されています。
現在、日本の外国人労働者数は13年連続で増加し、250万人を突破しました。図1をみると、国籍別ではベトナムが約60万人で1位、次いで中国(約43万人)、フィリピン(約26万人)の順です。日本で就労する外国人をカテゴリー別でみると、専門職などの「就労目的」が33・7%で最も多く、「身分に基づく在留」(25・1%)、「技能実習」(19・4%)と続きます。
かつて多かった中国籍が減少した背景には、現地の賃金・物価の上昇があります。最多のベトナムでも地域別最低賃金が年7・2%上昇する一方、日本の賃金水準は長年横ばいのため、いずれ金銭面のメリットは感じられなくなるかもしれません。
しかし、日本には他国にない魅力も存在します。世界屈指の治安の良さに加え、1000円以内で外食可能な生活コストの低さは大きな強みです。また、アニメやマンガ、食文化への親近感から来日を希望する層も顕著に増えています。今後、日本が外国人から選ばれる国であり続けるためには、賃金以外の多角的な価値を戦略的にアピールしていくことが肝心です。
育成就労制度の導入で外国人が企業を選ぶ時代へ
外国人労働者の受け入れにあたっては、技能実習制度と特定技能制度、技人国(技術・人文知識・国際業務)制度の活用が主軸になります。このうち技能実習制度が今、大きな転換期を迎えています。その歴史を振り返ってみると、従来の技能実習制度は「発展途上国への技術移転」という建前のもとで運用されてきましたが、2019年に特定技能制度が創設され、初めて人手不足の解消を明確に目的とした制度となりました。
そして、この制度がさらに進化し、24年の改正入管法の成立を受け、27年4月からは育成就労制度(図2)となります。これは3年間の育成期間を経て特定技能へと移行することを前提としたもので、従来の「技術移転」という建前をほぼ完全に排し、「労働力確保」を目的としています。また、育成就労は外国人労働者の人権を重んじた制度となっており、育成就労生は2年目以降、転職が可能になります(技能実習生は原則不可)。技能実習生や受け入れ企業のサポートをしてきた監理団体※は「監理支援機関」へと名称が変わり、許可要件が厳格化される他、外部監査人の設置などが義務付けられます。
※技能実習制度において、外国人技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)を支援・監督する非営利団体(協同組合、商工会議所など)
つまり、もはや企業が外国人労働者を選ぶのではなく、外国人労働者が企業を選ぶ時代になるのです。しかも、最近は外国人労働者の間でも情報共有が活発で、すぐに「良い会社」「悪い会社」の情報が共有されます。育成就労の導入とともにこの傾向はより顕著になるでしょうから、今後は待遇の良い企業に人材が集中し、そうでない企業は人材確保が困難になるという二極化が進んでいくでしょう。
報道などで外国人労働者が薄給や過剰労働に悩まされている事態が取り沙汰されることがありますが、そのような対応は絶対にNGです。雇用主が「技術を教えるから安く働いてもらう」という認識でいるかぎり、外国人労働者を活用することはできません。
なお、継続される特定技能制度と技人国制度については、特定技能が「人手不足が深刻な分野(飲食、介護、建設など)において、現場作業を担う人材」を対象にしているのに対し、技人国は「エンジニア(技術)・通訳・マーケティング(人文知識)・デザイナー・語学講師(国際業務)など、主にホワイトカラーや高度な専門知識を持つ人材」を対象としています。
「安い労働力」としてでなく個別の能力を評価するべき
ここまで述べてきたことからも分かる通り、外国人労働者は「安い労働力」という認識はもはや前時代的な考え方です。技能実習生にしても、給与(最低賃金は日本人と同様)に加え、監理団体への支払い、住居の確保、帰国費用の負担など、さまざまなコストが発生します。また、受け入れにあたっても、さまざまな労力やコストが必要です。
図3をご覧ください。例えば、技能実習生の採用を進めるということになりましたら、まずは職種・人数・期間を決定し、監理団体に加入し、技能実習計画を作成・申請を進めます。現地の送出機関と連携しながら採用活動を行い、採用する人材が決まったら、次は在留資格認定証明書を取得して、それを本人に送付します。さらに、入国後は日本語・法的保護・生活に関する講習はもちろん、宿舎・銀行口座・マイナンバー取得といった生活基盤の整備も進めなければなりません。その後、労働条件通知書を交付し、ハローワークに外国人雇用状況の届出、社会保険への加入手続きをして、ようやく技能実習を開始できるわけです。それ以降も実習日誌の作成・保管、監理団体の巡回訪問などに対応する必要があります。こうした手続きやマネジメントを怠ると、労働基準法違反や人権問題に発展するリスクもあるので注意しなければなりません。一方で、【参考】にもあるように親しみを持って熱心に教育すれば、多くの外国人労働者は企業と経営者を慕い、前向きに働いてくれるはずです。
「技人国」人材の採用は激しい獲得競争へ
また、外国人エンジニアや国際業務担当者の採用に活路を見出す中小企業が増えています。技人国はそうしたニーズに対応する在留資格ですが、採用から在留資格取得まで、乗り越えるべきハードルが少なくありません。
技人国人材の採用でまず壁となるのが、母集団の形成です。日本語能力や専門スキルを兼ね備えた人材は需要が高く、大手企業との競争になりやすいという課題があります。中小企業が選ばれるためには、給与水準だけでなく「なぜこの会社で働くのか」というストーリーを明確に打ち出す必要があります。また、業務の適合性も重要なポイントです。技人国が認めるのは理系専門職、文系専門職、国際業務などのプロフェッショナルに限られており、現場作業や単純労働との兼務は認められません。申請時の業務内容と実態が乖離すると、更新時に不許可となるリスクがあるので要注意です。
求人経路としては、外国人特化型の求人サイトや人材紹介会社の活用が一般的ですが、日本の大学・大学院に在籍する留学生へのアプローチも有効です。留学生は既に日本語や日本文化に慣れており、定着率が高い傾向にありますので、おすすめです。
ここまでを通して、日本の外国人労働者の受け入れ体制が「技術移転」から「労働力確保」へと大きく転換したのは現実に即した動きと言えます。この変化を好機と捉え、外国人労働者とともに事業をさらに成長させていただければと思います。


