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北海道会
独自企画

2026年07月号

試合がない日にも人が集まる野球場「エスコンフィールド HOKKAIDO」
北広島市が球団と連携して進める
「北海道ボールパークFビレッジ」を 核とした街づくり

北海道北広島市に誕生した「北海道ボールパークFビレッジ」。その中核施設である北海道日本ハムファイターズの専用球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」は、単なる野球場を超えた新たな街づくりの拠点として全国から注目を集めています。 手つかずだった市有地はいかにして巨大プロジェクトの舞台となったのでしょうか。 球場誘致の背景から開業後の市民の反応や経済効果、そして新駅開業を見据えた今後の展望まで、北広島市経済部ボールパーク連携推進室ボールパーク連携推進課の葛西 貴弥氏にお話を伺いました。

手つかずの市有地と球団の構想が合致

 現在、「北海道ボールパークFビレッジ」がある約32ヘクタールの広大な土地はもともと市有地で、50年ほど前に総合運動公園を整備しようという構想が持ち上がったものの、財政的な問題や宅地開発を優先した経緯から手つかずのままとなっていました。しかし、2015年の市長選挙で運動公園整備の検討が公約に掲げられたのを機にプロジェクトが動き出します。

 市単独での整備や管理は財政的に難しいため、市としては当初から官民連携の道を探りました。また、北海道日本ハムファイターズには、公式戦で使える野球場の仕様についてお聞きしたこともありました。そんな中、2016年、驚きのニュースが飛び込んできました。ファイターズが当時の本拠地球場「札幌ドーム」からの移転と新球場の建設を構想していることが明らかになったのです。この絶妙なタイミングに、私たちはすぐさま誘致に手を挙げました。

 北広島市は札幌市と新千歳空港のほぼ中間に位置しており、JRや高速道路のアクセスが抜群な上、手つかずの広大な土地があることなど新球場の誘致に有利な条件が揃っていたことから、2018年に北広島市への新球場建設が正式に決定。市が球団に土地を貸し付けてアクセス道路や上下水道などのインフラ整備を担い、一方の球団は球場建設やエリアマネジメント、さらにはホテルや飲食店などの事業者を誘致するという民間主導の体制でプロジェクトがスタートしました。そして2020年春の着工から約3年後の2023年3月、ついにFビレッジ全体が開業の日を迎えました。


試合がない日も楽しめる非日常空間

 北海道ボールパークFビレッジは「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中核として、広大な敷地内に宿泊施設やレストラン、分譲マンション、さらにはこども園や農業学習施設などが集積したまさに「ひとつの小さな街」のような空間です。「世界がまだ見ぬボールパーク」というコンセプトの下、世代を問わず多様な人々が集い、交流できる場所として整備されました。

 Fビレッジの最大の特徴は、試合以外にもさまざまな楽しみがあることです。施設に入ると、日本初の開閉式天然芝球場ならではの芝の香りがふわりと漂います。試合がない日には無料でスタンドに入場でき、選手たちがグラウンドでランニングやキャッチボールなどの練習をする姿を間近で見学できるのも、他の球場にはない大きな魅力です。また、私自身もよく利用しますが、球場内にある天然温泉は手ぶらで入ることができ、市民割引もあり快適です。世界でも珍しい球場内のクラフトビール醸造所「そらとしば by よなよなエール」もあります。

 球場の周辺にも子どもたちが思い切り遊べる入場無料のミニチュア野球場「F PLAY FIELD supported by NIHON HOUSING」や(株)クボタによる農業学習施設「KUBOTA AGRI FRONT」といった魅力的な施設がたくさんある他、散策道や公園、メディカルモールなどもあり、少子高齢化が進む当市における市民の生活インフラとしての役割も担っています。

北海道ボールパークFビレッジの全景 ©H.N.F.

エスコンフィールドに入ると、回廊越しに天然芝のフィールドが視界に広がる

グラウンドウォークとダグアウト(ベンチ内)の他、プランによっては選手が使用するロッカールームやチームミーティングルームなども見学できるスタジアムツアーでは、ファイターズガールたちが案内役を務めてくれる

市民の反響も上々「住みたくなる街」へ

 こうした施設の充実もあり、開業後の反響は想像以上でした。市民満足度調査では「Fビレッジができて良かった」との回答が約80%に達し、街を誇りに思う郷土愛(シビックプライド)も劇的に向上しました。行政の施策でこれほど高い評価を得られることは稀だと思います。

 もちろん経済効果も絶大です。シンクタンクの試算では、北広島市へ年間約500億円、北海道全域へ年間約1000億円もの波及効果が示されました。観光客の消費活動だけでなく、地価上昇による固定資産税の増加などの恩恵ももたらされています。市の人口動態としては自然減が続いていますが、Fビレッジ開業以降、転入者が転出者を上回る「社会増」へと転じました。かつて「JRで通り過ぎる街」「札幌のベッドタウン」というイメージの強かった北広島市が着実に「住みたくなる街」へと進化しつつあることを実感しています。

 一方で、Fビレッジ内のグルメスポットが充実していることもあり、駅前の飲食店など地元店舗への波及効果には課題があります。しかし、長らく熱心に球団を応援してきた居酒屋が「聖地」として連日賑わうなど、お店のブランディング次第で恩恵は大きく広がるはずなので、市としても地域全体へと人を誘導する施策を進めていきます。駅前にホテルが新設されたことで宿泊客も増えており、今後、さらに人の流れが変わっていくことを期待しています。

球団創立50周年(2024年)記念壁画も迫力満点。歴代の名選手や監督、オーナーらが描かれている

エスコンフィールド内のランドマークとも言える「TOWER 11」、ダルビッシュ有投手と大谷翔平選手が大きく描かれた壁画は人気のフォトスポット。TOWER 11内にはフードホールやホテル、フィールドを一望できる球場内天然温泉とサウナなどがある

エスコンフィールドHOKKAIDOの設計・施工を行った株式会社大林組の協賛によりリニューアルされた「ヒストリーエリア」(1F FIELD LEVEL 1塁側)。

球場を造り上げる過程で作成したスケッチの原本や製作図などが多数展示されている他、設計・建設時の3Dモデルを基に作成したシミュレーターも

新駅開業と連携事業で広がる北広島市の未来

 現在、2028年夏の開業を目指してJR新駅の設置計画が進んでいます。北広島駅からFビレッジまではシャトルバス以外では徒歩20分ほどかかりますが、新駅ができれば球場の目の前となり、徒歩3分程度でアクセスできるようになります。これに合わせ、北海道医療大学のキャンパス移転、球団主導によるオフィスビルや賃貸住宅の建設、外資系ホテルの開業など、周辺開発がさらに加速します。

 当市では総合計画の中で「ボールパークを核としたまちづくり」を掲げており、私たち「ボールパーク連携推進課」が中心となってFビレッジの熱気と活力を教育、福祉、医療、移住誘致などあらゆる分野に波及させることを目指し、さまざまな活動を展開しています。

 例えば平日のデーゲームへの市内の子どもたちの無料招待や、元選手が小学校を訪問する野球教室、Fビレッジ内の店舗・ホテルでの職業体験などを実施しています。また、夏場はFビレッジ内でラジオ体操を行い、雪で外を歩けなくなる冬場は広いコンコース内でのウォーキング教室を行うなど、市民の健康増進につながる取り組みも好評です。昨年のウォーキングには約150人が参加しました。

 ボールパーク連携推進室では日々、球団と連携しながら新たな街づくりに取り組んでいます。これからも思いつく限りのアイデアを形にし、北広島市全体がさらに魅力的な街となるよう挑戦を続けていきたいと思います。

株式会社クボタの「KUBOTA AGRI FRONT」は「食と農業の未来を楽しく学ぶ」ことがコンセプトの体験型施設。没入感のある映像シアターやチームで挑戦する農業経営シミュレーションゲーム「AGRI QUEST」、AIを活用した最新の屋内栽培エリアなど多彩なコンテンツが魅力。こだわり食材のカフェも併設 ©H.N.F.

入場無料のミニチュア野球場「F PLAY FIELD(エフプレイフィールド)」。エスコンフィールドと同じ芝生や土を使用しており、プロ野球選手になりきってキャッチボールやベースランニングを楽しむことができる ©H.N.F.

球場内醸造レストラン「そらとしば by よなよなエール」では、爽快な「そらとしば Play Ball! Ale」などのクラフトビールが楽しめる

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