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事務所 訪問

2022年09月号

塚原喬税理士事務所 写真

管理会計を徹底したサポートで
顧問先の課題解決と組織変革を目指す

「変化に対応し、変わらぬ安心を提供できるよきビジネスパートナーになる」というコンセプトの下、 徹底した管理会計によって地域の中小企業経営者の経営サポートに尽力してきた塚原喬税理士事務所。 所長の塚原 喬先生にその知見とノウハウ、そして今後の展望を伺いました。

よきビジネスパートナーとしての顧問先支援

塚原先生は大学卒業後、地元の金融機関での勤務を経て税理士資格を取得されたそうですね。異色の経歴といえますが、どういったお考えからこうした道を歩まれたのでしょうか。

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一人分が広くスペースがとられ、仕切りで集中して
仕事ができる執務室です

塚原 喬所長(以下、敬称略) 大学4年生の時、思うところあって「地域の中小企業の経営者の方たちの助けになりたい」と税理士を目指すことを決めたのですが、いきなり資格を取得して会計事務所に勤めるのではなく、その前にぜひとも経験しておきたかったのが金融機関の立場でした。中小企業の経営を資金面で支える彼らが、どういった基準で貸付や融資の可否を判断しているのかを肌感覚で学びたかったのです。また、もうひとつ正直なところを言うと、もし税理士資格の取得に手間取るようであれば、そのまま金融機関職員の立場で地場企業をサポートしていくのもいいだろうとも考えていました。幸い、1年目に1科目を合格することができ、手応え十分だったので、1年間ほどで職を辞して勉学に専念し、2年後には税理士資格を取得することができました。そして地元の会計事務所で3年間ほど修業した後、2015年に独立を果たしたのです。1年弱とはいえ、金融機関での勤務経験はその後の私の税理士人生にとって大きな財産となっています。

そうした経験を踏まえ、開業時にはどのような経営方針を掲げましたか。

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事務所のエントランスには、香川県高松市の
モスルーム工房(https://mossroom.jp/)が手掛けた
「モスルーム」が設置されており、苔とミストが涼しげに
来訪者を癒してくれます

塚原 開業当初から現在に至るまで「変化に対応し、変わらぬ安心を提供できるよきビジネスパートナーになる」という理念を掲げてきました。そして「ビジネスパートナー」として継続して顧問先企業の課題解決や成長に寄与するために、最も重視しているのが管理会計の視点と考え方です。例えば、経営者の方との打ち合わせは最低でも年3回、上半期を過ぎたタイミングと期末決算の約3カ月前、そして決算後に行います。中でも重要なのが決算3カ月前の打ち合わせです。それまでの9カ月の実績を踏まえた上で「今期の業績はおそらくこのくらい、納税額はこのくらい」とその年度の決算予測を立て、データから見えてきた経営課題や来期の投資計画などについて相談するわけです。

顧問先の新規開拓と職員の意識改革に尽力

開業後、すぐにそうした管理会計による経営サポートを実践できたのでしょうか。

塚原 いえ、最初はかなり苦労しました。以前、所属していた会計事務所から職員や顧問先を引き継ぐ形での開業だったのですが、何しろ当時の私はまだ29歳。「従来のやり方を変えましょう」と言ったところで周囲がそれをすんなり受け入れてくれるはずがありません。また、顧問先を新規開拓しようにも、やはりまだ実績もない若手税理士にいきなり経営サポートを任せてくださる企業はなく、最初の頃はスポットでの決算申告や記帳業務などを引き受けていました。ただ、その頃から顧問先の「ビジネスパートナー」として「安心を提供できる」税理士になることは心に決めていたので、採算割れになろうとも決算予測のための打ち合わせなどは積極的に行ってきました。そうした努力と思いが徐々に顧問先に伝わり、その評判が口コミで周囲に広がったことで、経営サポートの引き合いが増えていったのです。

以前、所属していた事務所から引き継いだ職員の方たちの意識変革も大変だったのではないでしょうか。

塚原 おっしゃる通りです。以前は9カ月の決算を日常業務として行っていなかったため、仕事の流れそのものを変え、慣れてもらうまでに1年以上かかりました。「事前に予測を出してしまうと、決算数字がその通りいかなかった場合に顧問先からクレームが入ってしまうのでは」という意見もありましたが、そもそも不測の事態が生じるリスクがあるからこそ決算予測を早めに出し、顧問先とコミュニケーションを重ねる中で戦略を練っていく必要があるのだから、予測通りいかないことを恐れていては本末転倒です。そのことを根気よく伝えていくうちに、顧問先から決算予測を高く評価してくれる声も上がり、少しずつ職員たちの考えや仕事の仕方が変わっていきました。今では、職員自ら9カ月決算の資料や資料に対するコメントを提出してもらえるので助かっています。

組織変革をサポートする経営の実行支援に挑戦

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本格的な経営コンサルティングに尽力する塚原 喬先生

管理会計を基本とした経営サポートのスタイルが、事務所全体と顧問先に浸透していったのですね。

塚原 そこで今、次のステップとして取り組んでいるのが管理会計を通じて課題や対応策を提示したその先、まさに顧問先のビジネスパートナーとして課題解決を実行支援していくコンサルティング業務です。そのために数年前から勉強を続け、中小企業診断士の資格も取得しました。実行支援にあたっては、経営者の方との打ち合わせはもちろんのこと、マネージャークラスの従業員の方とも管理会計指標を共有し、毎月ミーティングを行って組織文化を変革していくところまでサポートします。

既にそうした実行支援の事例は出てきているのでしょうか。

塚原 複数の案件に取り組んでいます。例えばある老舗小売業のケースでは、半年ほどのコンサルティングを通してまさに経営課題の解決と組織文化の変革が順調に進んでいます。その会社はバブル期に在庫の資産価値がはね上がって大きな利益を生み出した成功体験から「在庫はたくさん持っていたほうがいい」という先代の考え方が今も息づいており、実際に20年以上も前の在庫がかなりの量そのままになっているのが問題でした。この点については借入先の金融機関からもたびたび指摘を受けてきたそうで、経営層も頭を悩ませていました。そこで、私は最初から在庫過多を悪と決めつけるのではなく、何年度の在庫がどのくらい残っているのか、それぞれの回転率はいかほどか、製品として価値はあるのかなどのデータを見える化し、それをもとに今後の在庫管理について考えるミーティングを行ったのです。当然、そのミーティングには経営層だけでなく、現場の従業員にも参加してもらいました。彼らに向けて「在庫金利」(在庫保有による負担を保有期間に応じて仮想の資金コストとして示す、管理会計上の金利)の考え方をレクチャーし、この20年間に毎年、在庫保管にどれだけのコストがかかってきたかを明示したところ、衝撃を受けた彼らは自発的に「2015年以前の在庫を販売可能性などに応じてランク分けし、それぞれのランクに応じた管理・処分方法を設定します」と提案。早速、ランクC、Dは価格を下げてネットで販売する、Eは処分する、といった感じで在庫管理体制を整えつつ在庫のスリム化を実践したのです。その結果、みるみるうちに棚卸資産回転率が上がり、同時に今年度の売上も前年度比2~3割増を見込むなど極めて好調に推移しました。また、この在庫管理体制の構築などに向けたミーティングは全て議事録を取っており、これが経営課題の解決や組織文化の変革を示す記録となっているため、金融機関からの評価にも大いに貢献しました。

そうした経営コンサルティングのノウハウは、どの程度、職員の方たちと共有できているのでしょうか。

塚原 それがなかなか難しいところで、私が単独で2~3件手掛けているのが現状です。税務や管理会計のみならず、経営の知識やコミュニケーション能力、ファシリテーター力なども必要になってくる業務であるため、一朝一夕ではとても習得できません。幸い、当事務所には勉強熱心な職員が多いので、少しずつノウハウを伝えていきたいと考えています。

最後に今後の展望をお聞かせください。

塚原 経営の実行支援にまで踏み込んだコンサルティング業務は、中小企業の経営数字に触れる税理士にとって大きな使命だと思っています。これからも顧問先に多くの「安心を提供できる」よう、私自身が研鑽を積むのはもちろん、事務所全体のスキルアップに努めていきます。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

母が学校の先生だったこと、進路に悩んでいる時に教師たちに相談に乗ってもらったことなどから「将来は自分も教師になって、子どもたちを支えてあげたい」と考えていたという塚原先生。数学教師になろうと理学部へ進学し、教員免許を取得されましたが、大学4年間続けたワインバーでのアルバイトを通してさまざまな立場の大人たちを接客する中で考えに変化が。企業経営者の悩みに触れて、彼らをサポートする仕事がしたいと考えるようになったのです。そして、金融機関で働いた後に税理士として独立するキャリアを思い描き、大学卒業後はまず地方銀行に就職。在職中の1年間と退職後に勉学に励んだ末、税理士資格を取得。地元の会計事務所で約3年間修業した後、2015年に独立開業を果たされました。

塚原喬税理士事務所

所在地
徳島県徳島市住吉1-6-22
TEL
088-624-8570
設立
2015年
職員数
11名
URL
https://tsukatax.com/

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