2018年11月号
2つの事務所を拠点として
広域の顧問先の経営課題に応える
佐賀県鹿島市と白石町の2拠点体制で、地元のモノづくり企業や建設業、農業、公益法人など 幅広い顧問先の事業を下支えする税理士法人西村会計。所長の西村 宰先生と副所長の池田 健一先生に、 事務所のこれまでと今後の展望について伺いました。
2拠点、三人の税理士で幅広い顧問先支援を実施
まずは西村先生に事務所開業の経緯をお聞かせいただきたいと思います。
西村 宰所長(以下、敬称略) 1974年、もともと税務署職員だった私の父が退職して個人事務所を開業したのが、西村会計の出発点です。当時私は学生で、大学卒業後、西村会計に入所する前に約7年間にわたって福岡市の吉江会計事務所にお世話になりました。この時期、実務経験をたくさん積んだことが確実に今の業務に生かされています。というのも、その当時、吉江所長が九州北部税理士会の会長を務めていたので忙しく、代わりに私が事務所経営にまつわるさまざまな業務を担当させていただけたからです。顧問先とのやりとりだけでなく、毎月の資金繰りや集金、複数の顧問先別の情報管理、人件費の調整や職員募集、面接といった人事面の仕事まで、多角的に「会計事務所を経営するとはどういうことなのか」を実地で学ぶことができました。
その後、30代前半のときに鹿島市に戻り、お父上の事務所に入所されたのですね。どのような事務所にしたいと考えましたか。
西村 会計事務所として顧問先をサポートできる領域をできる限り広げたい、という思いがありました。税務会計業務を基本として、事業承継や組織再編、資金調達、労務管理、その他さまざまな経営課題に応えられるような、企業にとっての良きパートナーであり気軽な御用聞きでありたい、と考えたのです。
そうした顧問先支援体制をどのように確立していったのでしょうか。
西村 約15年前、私が父から事務所の代表を引き継いでからは、池田が税理士資格を取得し、主戦力となってくれたことが大きかったですね。スタッフの層が厚くなったおかげで、私はコツコツと地域をまわって弁護士や社会保険労務士、中小企業診断士といった方々との連携を強め、その他さまざまな業種・業界にネットワークを広げることができ、それが確実に多面的な顧問先支援につながりました。また、一人の税理士が単独でできることにはどうしても限りがありますし、それぞれ得意分野も考え方も異なるので、私たちはなるべくお互いサポートし合うことを重視してきました。現在も顧問先に何か特別な課題が生じた際には、互いの経験と知識を共有し、意見を交わし、相談するようにしています。
西村会計は現在、2カ所に拠点を持ち、西村先生が鹿島事務所、池田先生が白石事務所の所長を務めておられます。この2拠点体制に至るまでの経緯もお聞かせください。
西村 縁あって白石町の山口 繁喜先生の事務所を引き継ぐことになり、2017年からここを西村会計の第2の拠点とし、所長を池田に任せました。こうして2拠点を構え、広域エリアの顧客をカバーする体制となったのです。
池田先生、白石事務所の所長となってからの約1年半、いかがでしたか。
池田 健一副所長(以下、敬称略) 山口先生から所長業を引き継ぎつつ、事務所と付き合いの長い顧問先の状況を把握し、各所にご挨拶まわりをして、と当初はてんやわんやでした。また当然、それまでの山口先生のやり方とは事務所経営や顧問先支援のあり方が異なるので、焦らず時間をかけて、現在もなるべく両方の良いところを取り入れながら調整を続けているところです。
地場企業同士、税理士同士の横連携が強い地域
鹿島事務所と白石事務所それぞれで、どのような業種・業態の顧問先が多いのでしょうか。
西村 鹿島市では建設関係の他、サービス業や製造業が多く、白石町では約4割が比較的大規模な農家です。また、池田が長年にわたって公益法人の支援に力を入れてきたおかげで、両地域で公益社団法人や公益財団法人、社会福祉法人、NPO法人などの顧問先が多いのも、当事務所の特徴です。
池田 佐賀県初の一般社団法人から公益社団への移行認定支援を手掛けたのを皮切りに、さまざまな形で公益法人の支援に携わってきました。00年以降、段階的に公益法人制度改革が行われ、認定申請の自由度などは上がりましたが、一方で公益法人にまつわる法律や会計基準、税務は複雑化・厳格化しているので、これまでの実務経験が大いに強みとなっており、現在もこの方面での引き合いが増えています。
鹿島市と白石町の地域性、企業の特徴や傾向についても教えていただけますか。
西村 佐賀県西南部に位置する地域で都市圏からのアクセスが悪く、経済的に恵まれているとはいえないのですが、だからこそ、製造業などの地場産業を支えるための各企業同士の横連携が強いという特徴があります。
池田 それと関連して、税理士同士がしっかりと連携しているのもこの地域の特徴だと思います。九州北部税理士会の中でも、武雄支部管内(武雄市・鹿島市・嬉野市・杵島郡・藤津郡)は特に税理士同士の交流・情報交換の機会が多く、現に自主的な勉強会が3つもあります。当然、そういった場では互いのケーススタディが共有され、地域課題について話し合うので、それぞれの顧問先支援の幅が広がったり、モチベーションが高まったりする絶好の機会となっています。

西村先生と池田先生の母校、鹿島高校の赤門。かつての鹿島城の正門で、「東の東大、西の鹿島城」と言われるほど立派な造りです

業務に集中できるよう、一人ひとりのデスクが仕切られています
将来を見据えた人材育成や自計化推進に注力
現在、課題となっていることは何ですか。
西村 人材育成にはより力を入れていかなければならないと考えています。当事務所では、複数の職員で顧問先支援にまつわるさまざまな業務を分担するのではなく、職員一人ひとりが担当の顧問先の支援業務すべてに責任を持つ1社1人担当制としているので、皆やりがいを持って働いており、勤続年数も長いスタッフがそろっています。が、優秀な人材が長く勤めてくれている分、新しいメンバーが加わる機会が少なくなっているので、事務所のさらなる活性化を図るため新しい人材の採用に取りかかっているところです。
池田 鹿島事務所と白石事務所の連携の取り方を今後どうしていくかも課題になっています。2つの拠点があり、対応できるエリアが広いということは強みであると同時に、移動や管理によりコストがかかることも意味します。現状でも2拠点間での情報共有は随時行っていますが、もっと効率よく、それぞれのエリアに点在する顧問先にとってスピーディーに対応できるよう、体制を整えていく必要があります。まだ2拠点体制となってから日が浅いので、これから少しずつさまざまな方法を試し、最善策を模索していこうと思います。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
西村 この十数年、ITによる各種税務手続きなどの簡素化やデータの一括管理が進み、税理士の役割や顧問先との関係性は変わりました。今後も技術の進歩によって、会計事務所業界は大きく変化していくでしょう。実際、単純な会計処理や入力業務、記帳代行といった作業をAIが自動で行う時代は、そう遠い未来のことではないと思います。こうした大変革期にあって当事務所ではここ数年、顧問先の自計化推進に力を入れています。顧問先の経営アドバイザー、パートナーとしてのサービスを提供するには、日々の会計処理や給与計算、販売管理などにかけるコストをカットすることが前提となるからです。これからも、税理士としてより付加価値の高いサービスとは何か、顧問先の成長にいかに寄与できるか、といったことを常に意識しながら日々の業務に励みたいと思います。
今後のご発展を祈念しております。

互いに協力し、幅広い顧問先を支援されている西村 宰先生(右)と池田 健一先生
西村 宰先生
西村先生は東京の大学を卒業した後、福岡市の会計事務所で7年間にわたって実務経験を積んだ上で父上の西村会計に入所、1995年に税理士資格を取得しました。約15年ほど前に父上の跡を継いで所長となり、2016年には法人化。その1年後に山口繁喜税理士事務所と合併し、2拠点体制となりました。
池田 健一先生
実家が建設業だったため、税理士の仕事には何となく馴染みがあったという池田先生。やがて経理学校の簿記コースに通う中で、縁あって紹介されたのが西村会計でした。1996年4月に入所、顧問先支援に携わるかたわら勉学に励み、2011年に税理士資格を取得。現在は白石事務所の所長を務めています。
税理士法人 西村会計
- 所在地
- [鹿島事務所]佐賀県鹿島市大字高津原544[白石事務所]佐賀県杵島郡白石町大字福田2306
- TEL
- [鹿島事務所]0954-63-2235[白石事務所]0952-84-6177
- 設立
- 2016年
- 職員数
- 16名
