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事務所 訪問

2019年08月号

税理士法人 浜津会計事務所 写真

税務サービスと経営支援を一手に担い
地場産業の活性化とさらなる顧問先開拓へ

税理士法人 浜津会計事務所は、1962年開業の老舗事務所です。地域の漁業関係者や水産加工会社をはじめとして、幅広い分野の法人・個人の税務を長年にわたり支えてきました。また、代表社員の浜津 隆先生は近年、地場企業の経営支援や事業承継支援に注力する一方、札幌市や東京都など大都市圏の顧客開拓も進めています。早速、そのお仕事ぶりを紹介したいと思います。

漁業関係の事業者が多数顧問先に

貴法人は地元の漁業協同組合とのつながりが強く、漁業関係の顧問先がとても多いそうですね。

浜津 隆代表社員(以下、敬称略) 全顧問先のうち、約半分が漁業・水産業関係の個人・法人です。北海道南西部の渡島半島(渡島・檜山地方管内)にある複数の漁協の組合員約1500人、水産加工会社などの法人50~60社が顧問先となっており、ここまで地域の第一次産業従事者をまとめて抱えている事務所は、道内でも少ないと思います。

どのような経緯で、漁業関係の顧問先を増やしてきたのでしょうか。

浜津 1970年代、サケやマス、コンブ、ホタテなどの養殖が活況を呈したおかげで、漁業者の売り上げが急伸して税務サービスのニーズが一気に高まりました。そこで私どもは徐々に漁業者の顧問先を開拓していったのです。そのうち漁協から「組合員の税務処理を一括で引き受けてほしい」と声がかかるようになり、漁協単位で顧問先数が増えていきました。

顧問先数が多いと、当然、確定申告の時期などに取り扱う書類も膨大になります。ましてや当時は、まだパソコンの普及前だったこともあり、税務処理作業は大変だったのではないでしょうか。

浜津 おっしゃるとおりの状況でしたから、顧問先数の増加とともに事務所スタッフも増員しました。ピーク時には3月中旬までに提出する申告書が4000枚を超え、70人以上のスタッフたちが総出で作業にあたっていたほどです。コンピューターも業界でいち早く導入したのですが、80年代は膨大な税務処理作業をコンピューターで行うには容量が足りず、減価償却を計算するだけでもかなり時間がかかっていました。90年代に入ってからは、パソコンの台頭とともにさまざまな会計ソフトが作られるようになりましたが、他の多くの事務所では特定の業種の顧問先管理のニーズはなく、メーカーもそうした専門ソフトを手掛けていませんでした。そこで私どもは、試行錯誤しながら独自のシステムを自分たちで作ることに挑戦、漁獲高に対する経費率を見える化したり、顧問先を売上順に並べ直したりと、膨大な顧問先を効率よく正確に管理していくための体制を整備しました。こうしたシステムが現在も土台となっている他、約10年前からはMJSのソフトを全面的に導入しています。

電子申告が始まった時はいかがでしたか。

浜津 2004年に行政手続オンライン化法が施行され、国税電子申告・納税システム「e-Tax」の利用が開始された際、函館税務署の署長さんと副署長さんがやって来て、電子申告の推進についてお話を伺いました。その後、私どもの顧問先の漁業・水産業従事者が電子申告に切り替えたことで地域の申告率が一気に上がったらしく、非常に驚かれたようです。

函館における漁業・水産業の動向

現在の漁業・水産業関係の顧問先数と、その景況感についてお聞かせください。

浜津 人口減を背景に目減りしてはいますが、14年の白色申告者の記帳・帳簿保存義務化のタイミングで500人増えたこともあって、現在も個人の確定申告書は3000枚を超えています。顧客管理システムや電子申告のおかげで、作業はかなり効率的に行えるようになってはいますが、それでも2月15日から3月15日まで1日100件以上をこなすのは大変です。  函館市における漁業・水産業の景気については、数年前まではかなり好調でした。もともとサケの水揚げ高500億円、ホタテ450億円は北海道内でもトップクラスでしたが、5~6年前に中国が大量にホタテを買い付けるようになってから値段が倍増し、水揚げ高が一気に900億円台に。当然、養殖業者の所得も高い水準に達しました。事実、つい5年前には渡島半島東部の山越郡を管轄する八雲税務署が納税額の伸び率が全国1位になり、国税長官が表敬訪問に来たほどです。しかし、この数年はホタテの変死が続いた影響などで、水揚げ高が下がっています。その影響は地域によって異なり、半島北部の長万部町あたりは比較的良かったのですが、八雲町以南は全滅、今年も引き続き見通しは悪いようです。漁業・水産業事業者を多数抱える会計事務所として、そのあたりの動向は常にウオッチしています。

写真1

3階建てで、さまざまなフロアのあるオフィス

より高付加価値なサポート体制へ

漁業・水産業関係以外では、どのような顧問先が多くなっていますか。

地域密着で経営支援に注力しながらも、サービス提供の範囲を拡大している浜津 隆先生

地域密着で経営支援に注力しながらも、サービス提供の範囲を拡
大している浜津 隆先生

浜津 父が開業した当時は大きな雑貨問屋や酒屋が多かったのですが、流通革命を背景に卸問屋などの中間業者の多くが廃業し、雑貨屋がコンビニエンスストアに取って代わられてからは様相が大きく変わりました。約30年前、ちょうど私が大学卒業後に入所した頃のことです。同時期、学生時代の友人が医療機器メーカーを新しく立ち上げたのですが、そのツテで函館周辺の開業医を多数紹介してもらうことができ、今も医療業界の顧問先が比較的多くなっています。その他は福祉関係や建設関係が多いですね。

ここ最近、顧問先の課題や相談事ではどういった傾向がありますか。

浜津 人口減で国内マーケットが縮小の一途を辿っている昨今、特に地場の中小企業の経営者の方々には、経営を見える化して現状を正しく把握することと、先を見据えて経営計画を立てることが求められています。私どもの事務所では少しでもそのサポートができるよう、事務所外に持ち出せるノートパソコンを20台ほど揃え、顧問先訪問の際にさまざまな資料やデータを示しながらお話ができるようにしています。最近の傾向としては、やはり後継者不在など、事業承継で悩んでいる顧問先が多く、数年前からM&Aの案件も増えています。

若手が多く活気と熱意に満ちた職場環境

最後に、事務所の課題や今後の展望をお聞かせください。

浜津 先ほど申し上げた通り、かつては漁業者の顧問先が増えれば増えるほど作業量も膨大になっていきましたが、その後のデジタル化の進展で作業効率が格段に上がった分、今ではスタッフ一人ひとりがより付加価値の高いサポートで顧問先の経営に貢献することが求められています。さらにAI技術の発展によって、今後は税務サービスにおいて機械が担える領域が着実に拡大していくでしょう。そんな中、私たち税理士の存在意義をどこに見出していくかがこれからの課題です。顧問先との接し方や回数、経営支援の機会なども意識的に増やすよう心掛けています。  また、同時にこれから力を入れていきたいのがより広範囲へのサービス提供です。地元にしっかりと根を張ることはもちろんですが、それだけにこだわらず広い視野で顧問先開拓を行おうと考えています。幸い、今年から東京の大学を卒業した息子が事務所に加わりました。彼が東京で得た知見やコネクションも生かしながら、徐々に首都圏に顧問先を増やしてまいります。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

 浜津先生は大学卒業後、すぐに父上が経営する事務所に入りましたが、ちょうど漁業関係や医療業界などの顧問先が急増していく時期だったこともあり、幅広い業務に集中したため資格取得のほうは後手に回ってしまったそうです。時を経て50歳の時、資格取得を目指して札幌学院大学の大学院へ。税法のスペシャリストとして知られる千葉 寛樹先生などの指導の下、2年間事務所の業務のかたわら勉学に励んだ後、約6年前に税理士資格を取得したそうです。浜津先生は当時を振り返って「それまで実地で培ってきた知見を改めて座学や議論の中で捉え直すことができ、非常に有意義で刺激的だった」と話しています。

税理士法人 浜津会計事務所

所在地
北海道函館市東雲町1-8
TEL
0138-23-6251
設立
2017年
職員数
45名

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