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会計人のリレーエッセイ

2022年04月号

大人の昆虫採集

近畿会

東京都国立市板垣 力

朽ち木の中のタマムシ
写真提供:NPO法人国立市動物調査会
山﨑 敏彦 氏

 東京都のJR中央線国立駅からほど近い住宅街で生まれ育ちました。

 今では、住宅がびっしり建ち並びますが、50年ほど前は、駅から数分でも雑木林と原っぱが広がり、雑木林では、昼間でもクワガタムシが採れ、雨上がりにできた水たまりにはコシマゲンゴロウが泳ぎまわり、昆虫少年として育ちました。

 社会人になって、同じ話ができる仲間も、採集に行く仲間もいるわけではなく昆虫の世界から遠ざかっていましたが、30歳の頃、くにたち郷土文化館にて「国立市の生き物たち」という生体展示会にてNPO法人国立市動物調査会に出会います。このときは、市内に生息する昆虫、魚類、両生類などが展示されており、昔の記憶がよみがえった私はその場で入会させていただきました。

 そこで知り合ったのが、佐伯 元行氏。主にチョウの専門家である佐伯氏ですが、昆虫全般の知識はプロ級です。「板垣さん、何の昆虫が採ってみたい?」と聞かれ、「オオクワガタ、タガメ、ゲンゴロウ」と即答する私。その後、福島県にてオオクワガタ、栃木県でタガメ、新潟県でゲンゴロウを採集させていただき子どもの頃の夢がかなってしまいました。

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朽ち木の中のタマムシ
写真提供:NPO法人国立市動物調査会
山﨑 敏彦 氏

 調査会では、「くにたち自然クラブ」と称し、小学校2年生以上を対象とした観察教室も行っています。夜間の雑木林に誘蛾灯をたいて飛来する昆虫を観察、河川敷ではバッタの観察、用水での魚とりでは、ナマズ、ドジョウなどが観察できます。自然と触れ合うことで、子どもたちに自然環境の大切さを感じてほしいと願っています。

 活動で感じることは若いお父さんたち、昆虫採集も初めて、用水で魚を捕るのも初めて、網を手にするのも初めてという方が少なくないことに驚かされます。子ども以上に、熱中し無我夢中になるお父さんもいて、微笑ましくなりますが、一方で、昆虫採集は、心無い一部のマニアによる希少種の乱獲、採集禁止区域での密漁などにより批判の対象ともなることがあります。自然のありがたみを感じつつ、節度のある採集を楽しみ、人間と生き物が共存できることを願ってやみません。

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