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会計人のリレーエッセイThe Essay Series from Accountants

時代に対応した会計事務所を目指して

髙橋 正幸

  • 沖縄会
  • 髙橋 正幸
  • 沖縄県浦添市

 スマートフォンの普及やコロナ禍における生活様式の変化により、デジタル化の波は私たちの社会生活の様々な場面において見ることができます。

 インターネットショッピングやキャッシュレス決済、インターネットバンキングは一般消費者の生活にも深く浸透しており、ビジネスの場面においても電子請求システムや電子インボイスが急速に広がりつつあります。

 会計事務所を取り巻く環境においては、2022年度の税制改正により税理士法第2条の3が新設され、税理士業務のデジタル化が努力規定として義務付けられました。さらに、電子取引データの保存の義務化、プレプリント納付書の送付の一部廃止、申告書等の控えへの収受日受付印の押印の廃止など、課税当局のDX化、ペーパーレス化の推進により、否応なくこれらに対応せざるを得ない状況にあります。

 関与先においても、創業や世代交代により若手経営者が増え、総じて若い世代はITスキルが高く、経理ソフト、生産・販売管理ソフトの活用はもちろん、独自のシステムを開発して自社の業績を日々確認、分析をしている人もおり、会計事務所にも高いITスキルが求められます。要望に応えられない会計事務所は、ドラスティックに顧問契約を解除され、自社で使用しているシステムとデータ連携が可能な会計事務所へ顧問税理士を変更することは容易に予想されます。

 職員の採用の場面においては、労働人口の減少、新卒学生の大企業への就職志向、転職による早期離職の増加などにより、慢性的な人材不足の状況にあるため、限られた人材で業務をこなすためには業務の標準化とデジタル化が必要となります。

 これらの現状を鑑みると、会計事務所が行うべき対応として、銀行取引、キャッシュレス決済、インターネットショッピング、クレジットの各種取引履歴データおよび生産・販売管理ソフト、電子請求システムとの連携が可能な汎用性の高い会計ソフトの導入検討、これらの電子データを関与先と共有するための情報伝達ツールの導入、人材不足対策として精度の高いAI−OCRを導入し、レシートなどの画像データの取り込みによる自動仕訳生成システムの採用、電子申告の完全実施、キャッシュレス納付の推進などが考えられます。

 帝国データバンクの全国企業「休廃業・解散」動向調査(2023年)によると、前年比で最も廃業率が増加した業種は会計事務所とのことです。これは、インボイス制度やDXの変化に対応できない、旧来の会計事務所が淘汰されることを端的に表していることに他なりません。事務所の変革なくして変化する社会の中で生き残ることはできません。ともに頑張りましょう!

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