CHANNEL WEB

会計人のリレーエッセイ

2019年04月号

歴史を知り、明日を想う

棚橋 隆

関東信越会

新潟県長岡市 棚橋 隆

歴史の面白さ、意義深さをまとめた
『稲川塾10年ものがたり』です

 明日に向けて意思決定をすることは事業経営者に重くのしかかっている使命です。設備投資、従業員雇用など、全てが明日を見据えての決断です。ところが明日が分かる人は皆無に等しく、どんな有能な経営者でも未来予想は大変です。

 大変なだけに、経営者は歴史を学ぶ意義があるのです。かのチャーチル曰く「未来のことは分からない。しかし我々には過去(歴史)が希望を与えてくれるはずである」と。また貞観政要は「将来を予想する教材は過去の出来事(歴史)しかない」と説いています。私も経営者に寄り添う税理士として意思決定に役立つ歴史を学びたいと思い、10年前から郷土史の大家・稲川明雄先生を講師に「稲川塾」を開催しています。

 稲川塾での郷土史から学んだ"歴史の類似性"や"歴史的思考"などを長岡ゆかりの3人の英傑から紐解いてみます。

 長岡を地盤にした政治家に元総理田中角栄がいます。"角さん"と言われ、絶大な支持を集め総理まで上り詰めました。ところがロッキード疑惑で追いつめられ失意のうちに亡くなりました。

 昭和18年に戦死した山本五十六も悲運の英傑です。米内光政などと三国同盟に反対したが、自分一人だけになっても薩摩閥の海軍に残り、連合艦隊司令長官として米国と戦争することになったのは皮肉な運命です。五十六は最後まで講和を願うがかなわず戦場で亡くなりました。

 戊辰戦争でも長岡には悲劇の英傑・河井継之助がいます。陽明学を信奉し、財政難などで喘ぐ長岡藩を立て直し、戊辰戦争では武装中立の立場で会津藩と西軍との仲介に奔走しました。しかし、西軍に一蹴され、長岡藩は東軍として戦うが激戦むなしく敗走し、継之助も亡くなりました。

 この3人、雪深く裏日本の長岡が生んだ英傑だからよく似ています。暗く厳しい環境は、人を我慢強くさせ、感情を表に出さなくなります。ところが時には、何とか、この暗い閉塞を打破しようとする英傑が出るのです。英傑は這い上がり、上昇の足掛かりを掴むと輝きだします。周りが暗い中で一人光を放つのですから崇められます。ところが必ず逆風が起こり悲劇に変わります。地元民は熱気も覚めていき、また感情を押し殺した生活になります。

 私の独り善がりかもしれませんが、郷土史をこのように楽しんでいます。歴史は面白いし、明日のヒントもくれます。そんな思いを『稲川塾10年ものがたり』という本に込めました。よろしかったらお読みください。

▲ ページトップ