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東京会企画②

2020年09月号

「文化・アートのまち」に進化した
東京・立川の魅力と見どころ

東京都立川市が近年、「文化のまち」として注目されています。駅前に「ファーレ立川アート」という世界的なパブリックアート群が点在するだけでなく、「立川まんがぱーく」という国内有数のマンガ施設なども大人気です。いかにして立川は「文化のまち」になったのでしょうか。その歩みとともに現在の街の見どころを立川市産業文化スポーツ部地域文化課の小林 政仁文化振興係長と「立川まんがぱーく」の高木 宏政館長にご紹介いただきました。

「まち全体が美術館」構想で新たなまちづくりを推進

―小林 政仁 氏
(立川市 産業文化スポーツ部 地域文化課 文化振興係長)

 JR中央線特別快速電車で東京駅から40分、新宿駅から25分という立地にある立川市(人口約18万人)は、商業施設やオフィス、教育施設、文化施設などが充実した東京三多摩地区の中心都市です。交通の利便性も高く、立川駅には中央線、青梅線、南武線といったJR各線が乗り入れ、また、立川駅前にある立川北駅と立川南駅から多摩都市モノレールも利用できます。

ファーレ立川アートマップには109点の
作品が見られる場所とその解説が記載されて
おり、無料で入手することができる

 かつての立川といえば、「基地のまち」というイメージで知られていました。実際、1922年に旧陸軍が立川飛行場を設置してからしばらくの間、立川は工場・軍需産業のまちとして栄えました。その後、第二次世界大戦の終戦に伴い立川飛行場は米軍に接収され、米軍立川基地として使用されることに。こうして立川は「基地のまち」として知られるようになったのです。米軍基地は77年に横田基地に移転され、その広大な跡地は国営昭和記念公園、陸上自衛隊立川駐屯地などに活用されています。

 もちろん、米軍立川基地跡地はその他にもさまざまな形で活用されています。その一つとして、JR立川駅北口の立川基地跡地関連地区第一種市街地再開発事業(施行者は住宅・都市整備公団、現UR都市機構)により、94年に「ファーレ立川」というエリアが開発されました。これはホテルやデパート、映画館、図書館、オフィスビルなど11棟の建物から成る5・9haのエリアで、ここには今、36カ国92人の作家による109点のパブリックアートが設置されており、車止めやベンチ、街灯、換気口、通路、駐車場入り口サイン、歩道の舗石など、街の至るところで目にすることができます。

 このように「世界を映す街」「機能(ファンクション)を美術(フィクション)に」「驚きと発見の街」といったコンセプトを持つファーレ立川は、都市計画の観点からも高い評価を受けており、国内外から多くの方が観光や視察などに訪れています。最近ではパブリックアートの代表例として、図工の教科書に掲載されている他、立川市では小学校の授業のフィールドとしても活用されています。(エキュート3Fにある)東京都観光情報センター多摩などでは作品や作者の紹介、設置されている場所、見どころなどを解説した「ファーレ立川アートマップ」が無料で配布されているので、ぜひ手にとって散策がてら世界のアートをご覧になっていただければと思います。

(左)作品番号109の「車止め(ベンチ)」(ヴィト・アコンチ作) (下)作品番号072の「会話(ベンチ)」(ニキ・ド・サンファル作)

(左)作品番号109の「車止め(ベンチ)」(ヴィト・アコンチ作) (下)作品番号072の「会話(ベンチ)」(ニキ・ド・サンファル作)

(左)作品番号109の「車止め(ベンチ)」(ヴィト・アコンチ作) (下)作品番号072の「会話(ベンチ)」(ニキ・ド・サンファル作)

(左)作品番号109の「車止め(ベンチ)」(ヴィト・アコンチ作) (下)作品番号072の「会話(ベンチ)」(ニキ・ド・サンファル作)

ファーレ立川の街区風景。イタリア語の「FARE(創る・創造する・生み出す)」に立川の頭文字「T」を付けた街区「ファーレ(FARET)立川」には世界36カ国92人の作家による109点のパブリックアート「ファーレ立川アート」が点在する。写真は作品番号070の「オープンカフェテラス」(ジャン=ピエール・レイノー作)と名付けられた赤い植木鉢と自然石で構成された作品

ファーレ立川の街区風景。イタリア語の「FARE(創る・創造する・生み出す)」に立川の頭文字「T」を付けた街区「ファーレ(FARET)立川」には世界36カ国92人の作家による109点のパブリックアート「ファーレ立川アート」が点在する。写真は作品番号070の「オープンカフェテラス」(ジャン=ピエール・レイノー作)と名付けられた赤い植木鉢と自然石で構成された作品

まんが4万冊・絵本2000冊 畳敷きの館内に年間10万人が来館

―高木 宏政 氏(「立川まんがぱーく」館長)

ひとくちメモ

 「文化・アートのまち」を代表するもう一つの文化施設が2013年にオープンした「立川まんがぱーく」です。その誕生のきっかけは立川市役所の移転でした。もともと立川市役所は立川駅南口にあり、1000人の職員が働いていました。その後、10年に新市庁舎が立川駅北口に開設されると、立川駅南口エリアの人通りが減少し、南口商店街から以前の活気が失われてしまったのです。そこで、市ではこの老朽化していた旧庁舎の活用を模索し、耐震工事や大規模改修工事を経て12年に「子ども未来センター」として開業することに、そして、その活用プロジェクトを公募したところ、「まんがぱーく」が採用されることになったのです。

 なぜ「立川でマンガなのか」と思われるかもしれませんが、実はJR中央線沿線のまちはマンガ、アニメ、フィギュアなどのサブカルチャーが盛んで、中でも立川市は当時、映画化もされた『聖☆おにいさん』をはじめ、数々のマンガやアニメ作品の舞台になっていたことから、〝マンガの聖地〟として人気を集めていました。そういった背景のもと、市ではマンガによる地域振興や観光振興に取り組むことになり、その拠点として「立川まんがぱーく」の立ち上げを決定したのです。なお、指定管理者としてこの施設の管理・運営にあたっているのは(株)合人社計画研究所(本社:広島県広島市)で、私は18年から「立川まんがぱーく」の3代目館長を務めています。

 現在、この「立川まんがぱーく」には4万冊のマンガと2000冊の絵本が蔵書として所蔵されており、館内で自由に閲覧していただけます。内装には木材をふんだんに使用し、「昭和の民家」をイメージしていただけるようになっています。また、館内では靴を脱いで、畳敷きのフロアでゆったりとマンガを楽しんだり、39個設置された押し入れのようなスペースに入ってリラックスしたりすることができます。一般のマンガ喫茶より格段に安い入場料(大人400円)で一日中過ごせるとあって、地域内外の皆さんに愛用いただいており、「一日中、好きなマンガを読んでのんびりできるなんてまるで楽園」といった声を頂戴しています。ただ、現在はコロナ禍の影響もあり、入場者数を制限中です。通常は1日平均約300人の方に入場していただいていましたが、今はコロナ対策で最大120人までとしています。ご来館の折は事前に混雑状況などをご確認いただけますと幸いです。

 ぜひ、皆さんも首都圏にお越しの際には「文化・アートのまち」に進化した立川にも足を延ばしてみてください

入り口には立川に縁のある「のらくろ」がお出迎え。カフェも併設しているが、現在は休業中

入り口には立川に縁のある「のらくろ」がお出迎え。カフェも併設しているが、現在は休業中

木製の押し入れのようなボックスでリラックスしながらマンガを読む子どもたち

木製の押し入れのようなボックスでリラックスしながらマンガを読む子どもたち

畳敷きの館内で思い思いの姿勢でマンガや絵本を楽しむ来館者たち

畳敷きの館内で思い思いの姿勢でマンガや絵本を楽しむ来館者たち

「立川まんがぱーく」の外観。旧立川市庁舎を改修した子ども未来センターの2階にある

「立川まんがぱーく」の外観。旧立川市庁舎を改修した子ども未来センターの2階にある

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