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四国会企画②

2021年10月号

徳島県が誇る全国有数の地鶏
「阿波尾鶏」の魅力

徳島県の夏の一大イベントである「阿波おどり」にちなんで命名された「阿波尾鶏」。1990年の発売から30年余、いまや出荷数、シェアともに日本三大地鶏(名古屋コーチン、比内地鶏、薩摩地鶏)を抑えて全国1位になっています。県の特産品として徳島県立農林水産総合技術支援センター畜産研究課によって開発された「阿波尾鶏」。その開発の経緯やブランディングに関する取り組み、そして阿波尾鶏の魅力について、同課養鶏担当の富久 章子上席研究員にご紹介いただきました。

付加価値を求め誕生

 広々とした鶏舎でゆっくりと時間をかけて飼育される「阿波尾鶏」。その肉質は脂肪が少なく、アスパラギン酸、グルタミン酸を多く含有するため旨味とコクがあり、適度な歯ごたえもあります。この「阿波尾鶏」の開発は徳島県立農林水産総合技術支援センター畜産研究課によって1978年から始まりました。もともと徳島県では古くから養鶏が行われており、明治時代には既に大消費都市・大阪への食鶏供給地になっていました。また、ブロイラーの生産も盛んで、60年代には全国出荷数の4・9%を占めるまでになっていました。

シンプルに旨味を堪能できる「阿波尾鶏のしゃぶしゃぶ」

シンプルに旨味を堪能できる「阿波尾鶏のしゃぶしゃぶ」

 ところが、70年代になるとブラジル産鶏肉が大量に輸入され始め、国内の養鶏産業は大打撃を受けることに。その対策として生産性を高めるために農場の大規模化などが進められたのですが、徳島県は平地が少なく、中山間地域の小規模生産者がブロイラー産業を担っていたため大規模営農が難しく、付加価値を高める必要がありました。そこで「少量・高品質」をセールスポイントにした地鶏の開発が進められることになったのです。こうして畜産研究課では徳島県の山間部で昔から継承されてきた軍鶏(シャモ)に注目し、改良固定した「赤笹系軍鶏」の雄と肉用鶏種の「ホワイトプリマスロック」を交配させ、開発とマーケット調査などに10年以上をかけて「阿波尾鶏」を生み出したのです。

「手羽先唐揚げ」には徳島特産のすだちを添えて。火を通しても柔らかくジューシーなので、家庭でも調理しやすいと評判

「手羽先唐揚げ」には徳島特産のすだちを添えて。火を通しても柔らかくジューシーなので、家庭でも調理しやすいと評判

旨味と歯ごたえのバランスが良いと評判。写真は「ささみロールこんがり照り焼き」

旨味と歯ごたえのバランスが良いと評判。写真は「ささみロールこんがり照り焼き」

(左)軍鶏の雄と肉用種鶏のホワイトプリマスロックを交配して開発された「阿波尾鶏」

(左)軍鶏の雄と肉用種鶏のホワイトプリマスロックを交配して開発された「阿波尾鶏」

(右)在来種の軍鶏の雄 

(右)在来種の軍鶏の雄 

継続的な取り組みでブランド確立

 「阿波尾鶏」の正式販売が開始されたのは90年で、その前年には「阿波尾鶏ブランド確立対策協議会」(以下、協議会)が発足しました。これは徳島県(畜産振興課、畜産研究課)、ふ化業者、食鳥処理業者、食肉加工者によって構成された団体で、阿波尾鶏生産および出荷体制の整備と消費拡大対策PR、ブランド確立に一貫して取り組んでいます。そのブランディングの最初の一歩がネーミングでした。「阿波尾鶏」というユニークでインパクトのある名前は、徳島県が全国に知名度を誇る「阿波おどり」に由来しています。

地鶏とは

 その後も協議会ではブランディングに力を入れ続け、販売開始10年目の2001年には「地鶏肉特定JAS(日本農林規格)第1号」として認定されています。このJAS認定によって安心・安全が保証されるとともに、「偽モノ・偽装表示」からブランドを守ることができるようになったのです。さらに、協議会では県内外と国外の395店舗(21年4月現在)を指定店として認定し、ブランド維持と販売促進、情報発信などに取り組んでいるところです。なお、その一方で畜産研究課では阿波尾鶏の原々種鶏の系統維持、種卵の遠隔地保存、凍結精液の保存などで遺伝資源の保全に努めています。

 「阿波尾鶏」はまさにこうした関係者全員の熱意と努力の賜物と言えます。ぜひご賞味いただければと思います。

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