中部会企画②
2018年10月号
飛騨高山の伝統文化 「高山祭の屋台行事」
京都の祇園祭、埼玉の秩父夜祭と並ぶ日本三大美祭として、毎年4月14日・15日と10月9日・10日に開催される高山祭。春は山王祭、秋は八幡祭と呼ばれ、飛騨の領国大名金森氏の時代(1585年から1692年)に始まったとされています。豪華絢爛な屋台(山車)や精巧なからくり人形で知られるこの高山祭の魅力を、高山市観光課にご紹介いただきました。
高山の古い町並に映える屋台
飛騨高山の人々が大切に守り続けてきた高山祭とは、春の「山王祭」と秋の「八幡祭」の総称です。いずれも江戸時代の面影を色濃く残しており、「動く陽明門」と称される屋台(山車)が登場しますが、それぞれの氏神様と祭区域が異なります。春は旧高山城下町南半分(上町)の氏神様「日枝神社」の例祭で、秋は旧高山城下町北半分(下町)の氏神様「櫻山八幡宮」の例祭となっているのです。
また、高山祭は毎年20万人以上の観光客が訪れる国内でも人気の高い祭りです。2017年の春の山王祭には21万2000人、秋の八幡祭には22万人もの人出がありました。今年4月の山王祭は2日間のうち1日が雨だったにもかかわらず、19万8000人もの人出となりました。
高山祭にはさまざまな神事が組み込まれていますが、なかでも総勢300人に及ぶ祭行列は実に見事です。神輿を中心に獅子舞、闘鶏楽、裃姿の警固などが絵巻物さながらに町を一巡します。その大行列は春祭では御巡幸、秋祭では御神幸と呼ばれ、荘厳かつ賑やかな伝統芸能やお囃子、雅楽なども披露されます。ちなみに、今でも高山の一般家庭では裃などの衣装を自分たちで用意しているそうです。
もちろん、祭のハイライトとなるのは、高山の古い町並を舞台に勢ぞろいする屋台です。春には12台、秋には11台が曳き揃います。それぞれの屋台には飛騨の名工たちの手による彫刻や透かし金具、東西の織物や豪華な刺繍が施された見送幕(緞帳)など、意匠を凝らした特徴があり、祭期間中は身近にそれらを鑑賞することができます。また、春祭の3台と秋祭の1台が行う「からくり奉納」は必見です。からくりは人形が綱方(綾方)たちによって操られているとは思えないほどの巧みな動きと演舞で、例年、観客を魅了します。
そして祭初日の夜になると、各屋台に100以上の提灯がともされ、曳き揃えられた場所から「高い山から谷底見れば~」という曳き別れ歌とともに各屋台組内にある屋台蔵にそれぞれ帰っていきます。その光景はなんとも情緒的で、えも言われぬ魅力があります。
これら一連の「高山祭の屋台行事」は、16年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されました。以前から高山祭行事は国の重要無形民俗文化財に、祭屋台は国の重要有形民俗文化財に指定されていたのですが、ユネスコ無形文化遺産への登録によって高山祭は世界共通の〝宝〟になったのです。こうした流れもあってか、18年のトリップアドバイザーの人気上昇中の都市ランキング(アジア)で、高山市は石垣島に次いで第2位にランクインしました。こうした伝統文化はまさに私たちの誇りです。これからも大切に守り継いでいきたいと思います。