2019年11月号
「大人の社会科見学」レポート
おめでとう "令和″ ありがとう "平成″
そして明治を振り返る
9月12日(木)、東京ミロク会計人会神奈川地区会主催のバスツアー「大人の社会科見学」(第8弾)が実施され、 同地区会の先生方とMJSのメンバー総勢代31名が参加、 皇居や迎賓館赤坂離宮、聖徳記念絵画館、国立公文書館を見学しました。ツアー当日の模様をお伝えします。
見どころたっぷりの皇居一般参観
これまで日本銀行本店や東京地方裁判所、国会議事堂、JAXAなどさまざまな重要建造物や施設、名所などの見学を通じて知見を高め、お互いに懇親を深めるイベントとして回を重ねてきた神奈川地区会の「大人の社会科見学」。第8弾となる今回は「おめでとう〝令和〟ありがとう〝平成〟そして明治を振り返る」をテーマに、東京都心の施設を巡りました。
当日は朝8時に旧ヨコハマプラザホテル前に集合し、大型バスで東京方面へ。まず訪れたのは皇居。言わずと知れた江戸城跡地であり、現在は115万㎡もの敷地内に天皇皇后両陛下がお住まいになっている御所や宮殿、宮内庁庁舎などがあります。また、普段から一般公開されている皇居東御苑や北の丸公園は自然豊かな散策スポットとして知られている他、皇居外苑はランナーたちに人気。今回のツアーでは、毎週火曜日から土曜日に宮内庁が実施している一般参観に参加しました。
皇居の南側にある桔梗門をくぐり、休憩所である窓明館に入ると、大勢の参加者が一般参観が始まるのを待っていました。国籍はさまざまです。日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語など言語ごとにグループ分けされて順次出発、ガイドの方の説明を聞きながら、1時間15分ほどかけて敷地内を見て回りました。参観ルートは広大な皇居のほんの一部ですが、見どころはたっぷり。まず旧枢密院庁舎と富士見櫓を通り過ぎ、塔の坂を上って宮内庁庁舎前へ。その隣りの宮殿を眺めつつ東庭を横切り、正門鉄橋(二重橋)を渡ります。そこで伏見櫓を見た後、再び正門鉄橋と東庭を通って宮内庁庁舎裏手の山下通りに出て、蓮池濠沿いを歩いて桔梗門まで戻って参観終了です。
中でも先生方に好評だったのは、7つある宮殿の建物の一つ、幅160mの長和殿を眺めながら宮殿東庭を歩いたこと。毎年1月2日の一般参賀の際、この広場が日の丸の旗を持つ大勢の人たちで埋め尽くされる光景や長和殿ベランダから手を振る天皇皇后両陛下と皇族の方々の姿などについて話しながら、今自分たちがその石畳を歩いていることに感動しきりでした。
また、二重橋では興味深いお話が聞けました。「二重橋」という呼び名は一般的には正門鉄橋とその奥にかかる正門石橋2つの橋の総称だと思われていますが、さにあらず。ガイドの方の説明によれば、1888年(明治21年)に鉄橋に架けかわるまで木橋だった「西の丸下乗橋」の部分の濠が深かったため、橋げたを二重に組んだことがその由来だとか。すでに寛政時代の文献にも「二重橋」の名が記されているそうです。
絶景を眺めながらの昼食と豪華絢爛な迎賓館赤坂離宮
皇居を後にした一行は初秋の爽やかな晴天の下、徒歩で丸ビルへ。最上階にあるフレンチレストラン「BREEZE OF TOKYO」でコース料理を堪能しました。厳選食材を用いたフレンチグリルはもちろん、好評だったのが窓外の景色です。東京随一といってもよい絶景、とりわけすぐ近くの東京駅舎をほぼ真上から見下ろすことができるのは丸ビル最上階ならでは。この絶景を眺めながらおいしい料理をいただき、ビールやワイン、カクテルなどを楽しむ―。なんとも優雅なひと時でした。
お腹を満たした後は迎賓館赤坂離宮を訪問。この建物は1909年(明治42年)に東宮御所として建てられた日本唯一のネオ・バロック様式による宮殿で、当時の日本の建築・美術・工芸界の総力を結集した、明治期の本格的近代洋風建築の到達点と言われています。第2次世界大戦後は外国からの賓客を迎えることが多くなったため国の迎賓施設として大規模改修、和風別館の新設と合わせて74年に現在の迎賓館が完成しました。これまで多くの国王や大統領、首相などをお迎えしてきた他、主要国首脳会議などの国際会議の場としても使用されています。館内にはいくつもの間がありますが、いずれもさまざまに意匠を凝らされた豪華絢爛にして高貴な空間です。たとえば迎賓館西側に位置する「羽衣の間」。ここはかつて舞踏室と呼ばれていましたが、雨天時の歓迎式典や晩餐会の招待客に食前酒が供されるところでもあります。謡曲「羽衣」の景趣を描いた大絵画が天井に描かれており、これが実に見事。まるで建物の中庭から空を見上げたかのような情景が広がり、四方に描かれた香炉からは、空にかぐわしい香りを放つ煙が立ち上り、赤やピンクの花が舞うなど、まさに天女が地上に降り立った直後のただならぬ空の様子が描かれています。先生方はこうした間をいくつも見て回りながら、感嘆の声をあげていました。
聖徳記念絵画館と国立公文書館
続いて訪れたのは、明治神宮外苑の聖徳記念絵画館。展示されているのは、明治天皇のご生誕から崩御までの出来事をモチーフとした80枚の壁画で、いずれも一流画家による優れた芸術作品であり、政治・文化・風俗の貴重な歴史資料でもあります。一枚一枚を丁寧に鑑賞し、これまでの歴史に思いを馳せた後は最後の見学施設である国立公文書館へ。ここには国から移管された公文書の原本と、江戸時代以前の将軍家や寺社・公家・武家などが所蔵していた文書が保管されています。同館スタッフの方によれば、「ここは文学と歴史の宝庫。ぜひ公文書の背景にある物語を知ってほしい」とのこと。憲法の原本や平成・令和額などにまつわるさまざまな話は実に興味深いもので、した。たとえば大日本帝国憲法と日本国憲法、両方の原本の忠実なレプリカを見比べてみると、その見た目は大日本帝国憲法の方が新しくきれいに見えます。これは日本国憲法が昭和21年11月3日という戦後まもない時期に公布されたため、上質な紙を準備できなかったからだといわれています。一同、こうした話に思わず聞き入っているうちに閉館時間に。濃密で知的好奇心の刺激に満ちたひと時でした。
こうして幕を閉じた「大人の社会科見学」。平成から令和に移り変わった年にふさわしく、日本のこれまでの歴史を振り返り、新たな歴史の始まりを感じられる素晴らしいツアーとなりました。