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事務所 訪問

2019年11月号

櫻井健税理士事務所 写真

不動産事業のサポートを強みに
親子2代にわたって顧問先に寄り添う

顧問先にしっかりと利益を上げてもらうことを常に念頭に置いているという櫻井健税理士事務所の所長、櫻井 健先生。 これまでの歩みとともに、特に力を入れている不動産投資・運営に関するサポートやアドバイスについてお話を伺いました。

税務・会計の枠を超えたアドバイザリー業務に注力

もともとは半世紀以上前に櫻井先生のお父さまが開業された事務所だそうですね。まず、そのあたりの経緯をお聞かせいただけますか。

櫻井 健所長(以下、敬称略) 父は栃木県の農家に生まれ育ち、上京してからは会計事務所に勤務、母と結婚して私の2人の姉が生まれた時に「家族を養っていくために資格を取得して独立開業しよう」と思い立ったそうです。資格取得後すぐ開業しましたが、資金がなかったので顧問先の製造業者の事務所に間借りさせてもらってのスタートでした。その後、徐々に事務所経営を軌道にのせて両国に小さな事務所を構え、1987年には現在の自社ビルを建てることができました。私が入所したのは約10年前のことで、2年前から代表を務めております。

お父さまの代から一貫して引き継がれているコンセプトや理念などはありますか。

櫻井 10年ほど前、後を継ぐ意志をはっきりと伝えた時に父から口をすっぱくして言われたのは「記帳代行だけを手掛けているようでは、いつか自分たちの仕事はなくなる」ということでした。昨今でこそ「AIが私たちの業務を奪うのではないか」という危機感について盛んに議論されるようになりましたが、父は数十年前からパソコンの処理能力やITの発展を見据えていたのです。私は父のこの指摘を受けて「経営の数字だけでなく、お客様の財産状態をよく知る税理士だからこそできるアドバイザリー業務があるはず」と思い、事業承継前から税務・会計のみにとらわれない顧問先の経営サポートを行っていこうと決心していました。

写真1

JR両国駅からアクセスの良い立地に事務所はあります

写真2

会議室の窓からは間近に東京スカイツリーが見えます

不動産事業に関するサポートで差別化

どのような経営サポートを掲げ、実践してきたのですか。

櫻井 顧問先にしっかりと利益を上げてもらうことを常に念頭に置き、中でも所有している不動産の有効活用に関するアドバイスを行うことに力を入れてきました。もともとの発端は父自身が不動産投資に熱心だったことです。私の姉が喘息持ちで「空気のいい高台に住もう」と土地を購入したところ、その土地が用地買収にかかるなどして資産が増えました。これを機に父は不動産投資・運営を手掛け、時折、そのノウハウを顧問先に伝えるようになりました。当事務所では昔から印刷業や繊維業などの顧問先が多く、「どうしても中小の製造加工業は景気や大企業の状況に経営が左右されがちなので、本業のほかに収益の柱を持っておいたほうがいい」という考えでした。私はこの不動産投資・運営に関するサポートやアドバイスを、当事務所の経営支援サービスの付加価値としてより明確に打ち出すことにしたのです。自身の経験や失敗談なども織り交ぜながら、なるべく具体的なアドバイスをするよう心掛けています。おかげで現在、顧問先の中には本業のかたわら不動産投資・運営を手掛けている方がかなり多くなっています。10年、20年と長期間お付き合いしている顧問先経営者の方々からは「今があるのはあの時のアドバイスのおかげ」と感謝のお言葉をいただくこともあります。このように顧問先からの信頼を実感できることが、私にとって大きなやりがいとなっています。

具体的に、どのような形で顧問先の不動産投資・運営をサポートしているのでしょうか。

櫻井 例えば不動産運営の支出面でいえば、エレベーター基盤交換や外壁塗装の他、さまざまな修繕費がかさむタイミングを見据えた資金繰り計画を提案、微調整したり、築40年以上の物件の場合は水回りのトラブルが起こりやすくなることを考えて損害保険を勧めるなどのリスクマネジメントをしたりと、顧問先の状況に応じてさまざまです。

櫻井先生の入所からこれまで、不動産市況も大きく変動してきたかと思います。昨今はいかがですか。

櫻井 町工場が多いという墨田区のイメージはガラッと変わりました。当事務所周辺の両国エリアにもかつては工場がたくさんありましたが、ここ10年ほどは新しいマンションが次々と建っています。もとの工場が資材搬入などのために間口が広く造られていたため高い建物が建てやすく、また立地もよいためです。このように時代が移り変わる中、昨今は若い不動産投資家が増えているからか、トラブルや詐欺被害なども多いように感じます。先日、インターネットで不動産投資家を名乗る若者が喜々として「利回り20%のマンションを購入した」と話している動画を見ました。景気がよくてマンションの稼働率が高いうちは「利回り20%」が生きますが、景気が悪くなって入居者が減れば、途端に不動産運営は傾きます。これはごく当然のことですが、その当然のことをろくに考えずに現在の利回りの高さだけで投資判断を行ってしまう事例が多くなっています。

専門家の適切なアドバイスがあれば、そうしたことは防げるかもしれませんね。

櫻井 本当にそう思います。そこで、自分にできることとして、所内の一室を活用して大家さんになりたい人向けのセミナーを開催しようと、不動産業者や他の士業の方たちと話を進めているところです。大家さんもしくは大家さんになりたい人を対象としていますが、いろいろな事例を知っておけば騙される可能性も減ると思います。

気軽に何でも相談できる事務所を目指す

不動産投資・運営サポートに注力されている櫻井 健先生

不動産投資・運営サポートに注力されている櫻井 健先生

そうした取り組みに力を入れることで、新たな顧問先開拓にもつながりそうですね。

櫻井 おかげさまで、既存の顧問先からの紹介や金融機関からのお声がけで新規顧問先はこの10年、順調に増えてきました。営業活動も積極的に行っており、その際には"大家さん向け会計事務所"であることを強みの一つとしてアピールするようにしています。

顧問先の増加とともに、事務所運営や人材育成などの面でも工夫が必要になったことと思います。

櫻井 代表を引き継ごうと決意した後、複数の事務所を見学して回ったのですが、その際に得た業務効率化や最適化に関する知見を生かすよう心がけてきました。といっても決して大がかりな業務改革を行ったわけではありません。朝礼や日常的なコミュニケーションを通じてスタッフ同士で顧問先情報をしっかりと共有する、所内の資料管理・保管を仕組み化して検索のロスや紛失トラブルを防止するなど、ごく基本的で地道な工夫を積み重ねました。

 また人材面では、現在職員が6人おり、金融機関や証券会社など異業種経験者が多いので、業界の固定観念にとらわれず柔軟に顧問先の経営支援ができるようになっています。そして彼らをサポートするスタッフとして、常時パートを数名雇うようにしています。未経験者から入力業務の基本や税理士事務所の1年間の業務サイクルを覚えられるので、「いずれは企業の経理職を目指したい」「税務・会計業務を身につけたい」というやる気のある人材が集まっています。

最後にこれからの目標をお聞かせください。

櫻井 企画中の大家さんになりたい人向けのセミナーもその一環ですが、顧問先にたくさん来所してもらい、日常的に何でも気軽に相談できる事務所を目指しています。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

 櫻井先生は大学卒業後の入所時、事務所の後を継ぐことは真剣に考えていなかったといいます。大きく意識が変わったのは約10年前のこと。父上と業界の先行きについて議論を交わすなかで「経営支援やアドバイザリー業務といった付加価値を打ち 出していかねば、いずれ仕事がなくなってしまう」という危機感を共有し、代表となることを決意されました。 その後は大学院に通って勉学に励んで税理士資格 を取得。そのかたわら複数の事務所を見学して回っ たそうです。「その時に学んだ所内の管理体制などを現在の事務所経営に生かし、業務全体の効率 化や最適化を図っていきたい」と櫻井先生は話して います。

櫻井健税理士事務所

所在地
東京都墨田区両国4-38-16 両国櫻井ビル6階
TEL
03-3632-5123
設立
1958年
職員数
6名
URL
http://sakuraikaikei.net/

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