CHANNEL WEB

顧問先紹介

2020年06月号

(株)ノラワークスジャパン

真冬の北海道帯広で無農薬栽培されたマンゴーという、これまでの常識をくつがえすブランド「白銀の太陽」で注目を集めている(株)ノラワークスジャパン。その挑戦の軌跡や思いについて、税理士法人共明会計の野田 和宏所長が同社の中川 裕之社長にインタビューしました。

宮崎のマンゴー農家との出会い

野田 和宏所長(以下、敬称略) まず、中川さんが真冬の北海道でマンゴー栽培に挑んだきっかけや経緯をあらためて伺いたいと思います。

中川 裕之社長(以下、敬称略) もともとは父が1975年に立ち上げた十勝産業(株)で貸倉庫事業や灯油販売事業などを営んでいたのですが、そのかたわら地元・帯広の町を活気づけようと全国の〝屋台村〟の先駆けとなった新名所「北の屋台」を手掛けたり、2009年秋に農林水産省の支援で全国8都市で始まった都市住民のための移動型マルシェイベント「マルシェ・ジャポン・キャラバン」に参加したりと、さまざまな事業にチャレンジしてきました。そんな中、10年4月に宮崎県日南市で開催された「マルシェ・ジャポン・キャラバンin日南」の懇親会でマンゴー生産農家の永倉 勲さんと出会ったのです。この出会いが「真冬のマンゴーづくり」のきっかけとなりました。

野田 永倉さんとはどんなお話をされたのですか。

中川 永倉さんは「真っ赤な完熟マンゴーをクリスマスの時期に売り出すのが夢なんだ」と力説してくれました。そして「そのためには6~7月にハウス内の気温を下げなければならず、宮崎ではコストがかかり過ぎて採算が合わない。でも夏も冷涼な北海道でなら、それができるはずだ」と話してくれたのですが、正直、当時の私は半信半疑でした。

 ところがその3日後、実際に永倉さんの農園を見学しに行った時のことです。北海道で生まれ育ったため、スーパーでしか果物を見たことがなかった私は、ハウス内にたわわに実る見事なマンゴーを目の当たりにして衝撃を受けました。そして「永倉さんの助けがあれば、北海道でもこの光景を実現できるに違いない」と確信し、新たな事業に乗り出す決意を固めたのです。

冬季のハウス周辺は一面銀世界

冬季のハウス周辺は一面銀世界

野田 周囲の賛同は得られましたか。

中川 方々に「冬の帯広に新たな名物を」と話してまわったものの、最初は誰も相手にしてくれませんでした。しかし01年にたくさんの飲食屋台が軒を連ねる「北の屋台」を構想した時も、最初は周囲の反応は「この寒い帯広で屋台なんて流行るはずがない」というものでしたが、フタを開けてみれば大好評で現在も人気スポットとして賑わっています。だから私は諦めずに準備を進めました。そしてある時、ベテラン生産者の永倉さんを宮崎から呼んで「いかにして北海道でマンゴーを育て、真冬の時期に実らせるか」を説明してもらったところ、「いけるかもしれない」と思う人がでてきて、最終的には11人から計550万円の出資を得て事業をスタートすることができたのです。その年の9月には、まだ木が1本もたっていない状況でブランド名「白銀の太陽」を商標登録し、永倉さんから譲り受けた10本の苗でマンゴー栽培を始めました。

1年半かけて栽培方法を確立

野田 栽培方法はどのように学んだのでしょうか。

中川 約1年半、宮崎に通って永倉さんの指導を受けたのですが、当初は現地の農業部会に馴染めず大変でした。宮崎では農家の人たちが何十年も試行錯誤と苦労を重ねてマンゴーの産地化、ブランド化に取り組んできたわけですから、突然、北海道からやってきた赤の他人をすんなりと受け入れられないのは当然です。でも永倉さんが味方になってくれましたし、毎月、勉強会や懇親会に出席して交流を重ねていくうちに、自分の思いや挑戦を農業部会の方々に理解してもらえるようになっていきました。そして翌年の夏には十勝に視察に来てもらい、いろいろとアドバイスを受けることもできました。こうした協力を得ながら、私は北海道でのマンゴー栽培の体制を整えていったのです。

野田 あらためて、中川さんが確立した生産体制について教えてください。

中川 真冬にマンゴーの実がなるよう、自然エネルギーの力によって外とハウス内の季節とを逆転させて栽培しています。具体的にいうと、まず冬には地元で湧出している温泉を活用して地中のパイプに温水を巡らせ、土を温めることで「マンゴーにとっての夏」の環境をつくり出します。といっても温泉熱を利用するのは主に夜間だけで、マイナス25度まで気温が下がっても、日中は太陽熱だけでハウス内を十分あたたかく保つことができます。一方で夏には、冬の間に積もった雪を融かした冷水によって地温を下げ、「マンゴーにとっての冬」の環境をつくり出します。こうすることで、11月後半から12月にマンゴーを完熟させられるのです。

ハウスは現在3棟

ハウスは現在3棟

真冬の北海道に真っ赤に実るその姿が話題に

真冬の北海道に真っ赤に実るその姿が話題に

“世界一のマンゴー”とも称されている「白銀の太陽」

“世界一のマンゴー”とも称されている「白銀の太陽」

温水・冷水を地中に循環させるための設備

温水・冷水を地中に循環させるための設備

ハウス内の様子

ハウス内の様子

ハウス内の様子

ハウス内の様子

十勝だからこそできる「白銀の太陽」

野田 「白銀の太陽」の味わいですが、非常に評判がいいですね。

中川 これまでに何度か試食会を実施し、地元の方や宮崎の農業部会のメンバーの皆さん、商工会議所の方たちも来てくれたのですが、「マンゴー特有のえぐみがなく、繊維質が繊細で舌触りがなめらか。甘みも実に濃厚」と皆さんから高評価をいただくことができました。また、沖縄産と宮崎産、海外産と食べ比べを行ったこともありましたが、多くの人が「『白銀の太陽』が一番おいしい」と太鼓判を押してくれました。

野田 生産に取り組み始めて2年目には三越伊勢丹で5万円以上の値がついたり、千疋屋との取引が始まったりと大いに注目を集め、多数メディアにも取り上げられました。なぜそれほどまでに高品質なものをつくれたのでしょうか。

出荷の際は気品ある化粧箱に詰めて

出荷の際は気品ある化粧箱に詰めて

中川 ひと言でいえば、北海道十勝の自然環境の賜物です。例えば宮崎のマンゴーの収穫時期はちょうど梅雨と重なるため果肉が湿気の影響を受けるし、害虫防除のための農薬も必要です。でも冬の北海道ではこうした心配とは一切無縁。果肉に余計なストレスがかからず、無農薬栽培なので、本来の果実の甘みが引き出され、繊維質も凝縮されるわけです。また、宮崎ではマンゴーの樹の背を高くしてたわわに実らせるのですが、私は成長を低木の状態にとどめる沖縄流で栽培を行っています。沖縄は台風の風によるマンゴーの樹木への影響を極力少なくするために枝を誘引し低木にしており、北海道の冬は日中の日照時間が短いため、全ての実に万遍なく日が当たるように沖縄流を採用することで、色彩が良く糖度が高くなるからです。

野田 なるほど、「白銀の太陽」は「北海道でできるはずがない」「マンゴーといえば夏」という常識を打ち破っただけでなく、「北海道十勝でつくるからこそ」の高付加価値を持ったオンリーワンブランドなのですね。

中川 ありがとうございます。まさにそうしたところが、この「白銀の太陽」最大の特徴であり、強みとなっていると自負しています。例えば伊勢丹本店のバイヤーの方から連絡をいただいた時も、ただ単に新奇性を強調したり高級路線で攻めるのではなく、「極寒地でいかにしてマンゴー栽培に取り組んでいるか、その現場を実際に見てもらい、『白銀の太陽』が実を結ぶまでのストーリーや価値を分かってもらった上で売ってほしい」と伝えたところ、すぐに現地に来てくれて、素晴らしい取引をすることができました。これからも「白銀の太陽」が持つブランドの価値を積極的に発信していきたいと思います。

野田 今後のさらなる躍進が楽しみです。引き続き地域のためにご尽力ください。

宮崎の農業部会のメンバーたちとともに

宮崎の農業部会のメンバーたちとともに

中川氏がマンゴー栽培を始めるきっかけとなった、宮崎の農業部会の永倉氏

中川氏がマンゴー栽培を始めるきっかけとなった、宮崎の農業部会の永倉氏

冬の間、木の皮を被せ断熱保存していた雪氷を活用

冬の間、木の皮を被せ断熱保存していた雪氷を活用

税理士法人共明会計

所長
野田 和宏
所在地
北海道帯広市 西5条南27丁目2番地6
TEL
0155-22-1314

株式会社ノラワークスジャパン

代表者
中川 裕之
設立
2011年
資本金
4210万円
事業内容
自然・再生エネルギー等を活用した農産物の生産・販売・栽培研究、新エネルギーの開発と研究
所在地
北海道帯広市西2条南10丁目10かじのビル
URL
https://nora-works-jp.shop-pro.jp/

▲ ページトップ