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事務所 訪問

2020年06月号

久保且佳税理士事務所 写真

事務所統合を経て規模拡大
新体制構築と業務品質向上に取り組む

十勝平野の中央部に位置する北海道帯広市の久保且佳税理士事務所。他事務所との統合を経て規模を拡大してから約1年半、所長の久保 且佳先生は所内のコミュニケーションや交流を活発化したり、ミロク会計人会の情報ネットワーク委員会で得た知見を基に業務効率化を図ったりと、新たな体制構築に奮闘中です。これまでの歩みと今後の展望を伺いました。  ※取材時期は、2020年1月です

2度にわたって事業の引き継ぎを経験

久保先生はこれまでに事務所の事業承継と他事務所との統合の両方を当事者として経験されました。まず、そのあたりの経緯や背景をお聞かせください。

久保 且佳所長(以下、敬称略) 私は東京の大学を卒業した後、故郷の帯広に帰ってきて5年ほどは地場の建設会社で働いたのですが、税理士資格は既に取得していたので「いつかは税理士として独立を」と考えていました。そんな中、勤め先の社長が後継者不在で困っている地元の会計事務所を紹介してくれたのです。その事務所に転職し、3年後には代表を引き継ぎました。会計事務所の事業承継といえば後継者が親族というパターンが多く、外部人材が引き継ぐ場合にはうまくマッチングできるかどうかが課題になりますが、その点に関しては紹介者の建設会社の社長が仲介役として間に立ってくれたおかげでスムーズに事が運びました。その後、徐々に職員を増やし、2006年には新しい社屋も建てることができました。

それから10数年後、再び別の事務所を統合する話が舞い込んできたのですね。

久保 18年にある老舗事務所から「所内に他に資格者がおらず、後継者のあてもないので、顧問先ともども引き受けてくれないか」と相談を受けたのがきっかけです。思いもよらない話でした。私自身は新社屋も建てたことだし、所員5名の規模でこのままやっていこうと考えていたところだったのですから。しかも、先方は所員7名と当方より多く、その全員が年上なのでかなり迷いました。それでも、規模拡大で新たなスタートが切れるめったにない機会だと思い、挑戦することを決意したのです。元の事務所に私のブレーンとしてしっかり脇を固めてくれている頼もしい若手がおり、「規模が拡大しても彼らが中心となって事務所を支えてくれるはずだ」という思いもありました。

新体制になっていかに一体感を醸成するか

統合後の事務所の体制や陣容を教えてください。

久保 職員は全部で14名、新たに加わった事務所は年齢層が高めだったので、結果として10代から70代まで全ての年代が揃いました。拠点は立地の良い先方の事務所に移したのですが、「2事務所とも同じスタートラインで心機一転、一体となってがんばろう」という意識を共有するため、そこにもともとあった古い機械や調度類は全て新しいものに入れ替えました。

職員の方たち同士のやりとりについては、どのような感じになっていますか。

久保 私たちは以前から事務所内での研修や朝礼などでさまざまなノウハウや顧問先支援の考え方、お互いの業務状況などを共有するよう努めてきたので、その延長線上で所内のコミュニケーションを密にしていきたいと考えています。3カ月に1回、全員の席替えを行っているのも、交流を活発化させるための工夫の一つです。

先方の事務所が長年お付き合いしてきた顧問先への対応はどのようにしていますか。

久保 自計化など新たなメリットを積極的にお伝えするとともに、急激な変化にならないよう、あくまでもこれまで通りの支援を基盤に置くよう心掛けています。昨年には、まず合併後の新代表である私の顔を覚えてもらう意味合いも込めて、顧問先向けに消費増税に関するセミナーを開いたりもしました。

ところで、久保先生はミロク会計人会の情報ネットワーク委員会に長らく参加してくださっていますね。所内での情報共有やコミュニケーション促進のためのIT活用についてはいかがですか。

久保 かれこれ約20年、情報ネットワーク委員会に参加してきました。全国各地の事務所の最新事例に触れたり、新しい技術を研究するといった機会が多かったおかげで、会議室に大きなモニターを設置してオンデマンド研修を行ったり、各自のデスクにデュアルモニターを設置したり、ペーパーレスを推進したり、といったことにいち早く取り組んできました。職員のスケジュール管理についても、「いつ誰がどこで何をやっているか」をシステム上で共有できる体制で長らくやってきたので、合併時に加わった職員にも、そのあたりを共有してもらうようにしています。

事務所統合の際に内装を一新したオフィス

事務所統合の際に内装を一新したオフィス

 ただ、まだ統合から1年半しか経っておらず、正直なところどうやって一体感を醸成していくかを試行錯誤している段階です。年齢層の高い職員が多くなった分、ITに関する知識やパソコン操作のスキルなども個人差があるので、無理のないよう徐々に進めています。

会計ソフトの活用など、業務上のシステムについてはどのように統合を図っていますか。

久保 当事務所では長らくMJSの会計ソフトを活用してきましたが、先方の事務所では他社製品を使っていました。これをMJSのソフトに一本化するため、約1年かけてすべてのデータの変換を進めてきました。この1月末には、給与支払報告書や法定調書、償却資産税の申告業務で全件の移行が完了しました。ちなみにこのデータ変換については、「ACELINK NX-Pro」の「他社データ取込」機能を存分に活用、当初はMJS札幌支社の方に支援していただき、その後、事務所内の若手担当者がスムーズに移行、作業を完了することができました。

帯広の産業と事業者を側面からサポート

ところで、ここ帯広市の昨今の景況感はいかがですか。

久保 帯広市では現在、十勝ならではの食と農林漁業を柱とした産業振興に力を入れており、十勝管内18町村とともに「フードバレーとかち」を旗印としたまちづくりを進めています。顧問先の中でも農業関係の法人が元気で、地場産業をしっかり支えてくれている印象です。もちろん、顧問先の業種は他にも地場の建設会社や病院、小売業者など様々で、20年以上にわたる長い付き合いの事業者もたくさんいます。

ご自身の経験をもとに事業承継案件等に精力的に<br>応じる久保 且佳先生

ご自身の経験をもとに事業承継案件等に精力的に応じる
久保 且佳先生

 また、帯広市の経営者の特徴として、横のつながりが強く、お互い元気に切磋琢磨しているということが挙げられます。私自身、以前は青年会議所で同年代の若手経営者たちと交流を重ねましたが、新たな特産品開発などに積極的に取り組む方が多く、現在では彼らが50~60代で商工会議所のリーダーになるなど、地域活性化やまちづくりの旗振り役として活躍しています。当事務所はこれからも、そうした取り組みを側面からサポートする役割を果たしていきたいと思います。

ここ最近、顧問先からの相談内容としては、どんなものが多くなっていますか。

久保 やはり事業承継や相続に関する相談が多いように思います。自分自身が事務所の事業承継と合併を乗り越えてきたので、この経験を大いに生かして、難しいポイントや注意点などをしっかりアドバイスするよう心掛けています。

最後に、今後の目標をお聞かせください。

久保 他事務所の事業を引き継いで職員も顧問先も大幅に増えてから1年半、引き続き全体的な業務効率化や顧問先支援の標準化を図っていきたいと考えています。また、東京の大学を卒業した息子が現在都内の監査法人に勤めており、公認会計士試験合格者です。これから先、東京で様々なネットワークを構築し、多くを学んでいくことと思います。いずれは何らかの形で協力し合って新たな展開も考えたいですね。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

 久保先生は高校時代はテニスに没頭し、インターハイにも出場されたそうです。その後、東京の大学に通いつつ、将来のことを考えて専門学校で税理士資格取得に向けて勉学に励みましたが、在学中に父上が急逝。それでも母上の配慮で東京にとどまって必死で勉強し、卒業後しばらくして資格を取得してから実家に戻られたといいます。  帯広では一般企業での勤務を経験した後、地元の会計事務所へ。3年後には同事務所の代表になりました。そして2018年、縁あって後継者不在の老舗事務所の事業を引き継いで統合し、現在のスタッフ14名体制の事務所となりました。

久保且佳税理士事務所

所在地
北海道帯広市西5条南13丁目20番地 STビル2階
TEL
0155-24-5572
設立
1989年
職員数
14名

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