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事務所 訪問

2022年02月号

石黒達也税理士事務所 写真

コロナ不況が続く観光の島で
地域と顧問先、職員に寄り添った業務に邁進

観光産業がコロナ禍によって大きな影響を受けた石垣島(沖縄県石垣市)。果たして、その現状はどうなっているのでしょうか。 石黒達也税理士事務所の石黒 達也所長に、コロナ禍前後の石垣島の状況と同事務所の顧問先支援の内容や モットーについて伺いました。持続可能な事務所経営を見据えた取り組みを次々と実践されています。

「ちゅらさん」の放映で石垣島の経済が元気に

石黒先生は愛知県のご出身だそうですが、どのような経緯で石垣島に来られたのでしょうか。

石黒 達也所長(以下、敬称略) もともとは父が役員を務めていた繊維関係の会社を経て、母が所長を務めていた会計事務所で働いていたのですが、20数年前に自ら税理士資格を取得したのを機に、妻の実家がある石垣島に移住し、事務所を開業したのです。

奥様のご実家があったとはいえ、島での開業に不安はありませんでしたか。

石黒 母の顧問先は土地柄、トヨタ自動車関係の製造業が中心でしたが、私が勤務していた頃は製造拠点が少しずつ他地域や海外にシフトしていった時期であり、むしろ地元での開業に不安を感じていました。しかし、石垣島への移住、そして開業に不安がなかったかといえばそれは嘘になります。移住した当初の石垣島は今よりもはるかにのどかで、道路などのインフラも未整備なところが多々ありました。空港から市街地までの道路に信号が1つか2つくらいしかなかったほどで、ここで事務所を開業して仕事になるのだろうか、と思ったものです。

そういった状況からどのようにして顧問先を増やしていったのですか。

石黒 正直、最初の数年は苦労しました。ところが、NHKで連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001年)が放映されたのを機に、流れが大きく変わっていきました。ドラマの舞台となった小浜島(石垣島から高速船で25分)を目指す観光客が石垣島にドッと押し寄せ、それと同時に島内に宿泊施設や飲食店、小売店などが急増し、当事務所にも新規開業や税務会計に関する相談が次々と舞い込むようになったのです。

となると、当初から観光関連の顧問先が多かったのですね。

石黒 実はそうでもなくて、最初のうちは設備関係の事業者からの相談が多かったように思います。あと、ちょうどその頃はマンゴーの温室を新規開設する際に手厚い補助金が出ることもあって、農業生産法人の設立に関する相談も数多く寄せられていました。観光関連の顧問先が徐々に増えていったのは、その後しばらく経ってからのことです。さらに、近年は石垣島をはじめとした八重山諸島を訪れる外国人観光客が急増し、観光産業はコロナ禍が発生するまで右肩上がりで伸び続けていました。

そうした中で、ご自身でも5年前に体験型の牧場を立ち上げたそうですね。

石黒 もともと妻が動物好きだったこともあって、「んまんまぴぴじゃ」というふれあい牧場をオープンしました。今は3頭の馬(んま)と9頭のヤギ(ぴぴじゃ)、それからリクガメなどを飼育しており、妻は動物の世話に毎日かかりきりです。コロナ禍ということで、ふれあい体験は完全予約制にしていますが、状況が落ち着いたらあらためて島内外の人たちにお越しいただき、石垣島の自然の中で動物たちとふれあっていただきたいですね。また、アニマルセラピーなどの考え方も取り入れて、いずれは障がいのある子どもたちを受け入れるなど、福祉の拠点としても活用していきたいと考えています。

職員が楽しく働き地域に開かれた事務所

フリーアドレスのオフィス。この日は皆さんお揃いでスタッフミーティングを行っていました

フリーアドレスのオフィス。
この日は皆さんお揃いでスタッフミーティングを
行っていました

事務所経営に関してはどのような運営方針を掲げましたか。

石黒 一貫して女性にとって働きやすい職場環境づくりにこだわり続けてきました。沖縄の女性は家事だけでなく、地域の行事などに関わることも多いので、フレックスタイム制をいち早く導入した他、デスクもフリーアドレスとし、いつでも楽しく仕事に取り組めるような雰囲気づくりを心掛けました。おかげで、当事務所の離職率は非常に低く、勤続15年以上の職員が4人もいます。

職員の皆さんを大切にされていることがよく分かります。

石黒 所長という立場にある以上、私は職員とその家族の生活に責任を負っているので、常に生涯を共にするくらいの気持ちで向き合っています。ですから、職員を雇用し始めてからは自身の健康状態を第一に考え、大好きなお酒もやめましたし、食事も肉を摂らずに菜食中心にしています。

地域に対しては、税金に関する無料相談も実施されているそうですね。

石黒 税務相談は税理士にだけ許された業務であり、それをまっとうすることが地域のためになるという思いから、年中、無料相談に応じるようにしています。石垣島をはじめとした八重山諸島には税理士が少なく、税金に関する情報を得られる場所も限られているので、これからも積極的に無料相談を実施したり、情報発信に努めたりしていきたいと考えています。

ところで、石黒先生は数年前に税務会計システムをMJSに切り替えたそうですね。

石黒 懇意にしていた先生からの薦めもあり、MJSへの移行を決意しました。サポートセンターが24時間対応してくれましたし、MJSの社員の皆さんも柔軟に対応してくれたので、スムーズに移行することができました。

コロナ禍を契機に経営の効率化を推進する

コロナ禍は石垣島にどのような影響を及ぼしていますか。

石黒 観光客が全くいなくなってしまったので、観光関連の事業者は新型コロナウイルス関連融資や雇用調整助成金によって何とか持ちこたえている状況です。ただ、2022年から新型コロナウイルス関連融資の返済が予定通り始まると、多くの事業者は二重ローンに悩まされることになります。そこで当事務所では現在、経営者と面談を重ね、顧問先の経営体質の改善に努めているところです。とりわけ昨今はコロナ禍によって見通しが立ちづらい状況にあるので、キャッシュストックをいかに増やすかといったことに重きを置いたアドバイスをしています。

重要な経営判断を迫られるケースも多くなりそうですね、

石黒 コロナ禍を契機として、事業の統廃合が進む兆しがあらわれています。沖縄の事業者はリスクヘッジや節税対策の面から多角経営を展開する傾向があるのですが、コロナ禍でそうもいっていられなくなっており、選択と集中による統廃合を余儀なくされているのです。実際、ここ最近で立て続けに5、6件ほど同様の相談が寄せられました。

その際に注意すべきことはありますか。

石黒 事業の統廃合を後ろ向きに捉えるのではなく、経営の効率化を推進するきっかけと捉えることが肝要です。特に経営者が高齢になっている場合は、多角経営だと管理が行き届かなくなったり、決算が複雑になったりして、経営をコントロールできなくなりがちなので、統廃合によって効率化を図りながら事業をブラッシュアップしていくことを勧めるようにしています。

M&Aなども増加しているのではないでしょうか。

石黒 まさにその通りで、M&Aに関する相談も増えています。私としてはそう詳しくない分野だったのですが、今後、この種の案件が増えていくことを見越して、周囲の皆さんからアドバイスを頂戴したりしながら業務を推進しています。

地域の税務相談、事業者の経営支援など精力的に活動される石黒 達也先生

地域の税務相談、事業者の経営支援など精力的に
活動される石黒 達也先生

どういったタイプのM&Aが多いのでしょうか。

石黒 石垣島には東京資本の宿泊施設などが数多く存在しているのですが、それらを地元の事業者に売却するといったM&Aが目立ちます。宿泊施設に限らず、その他の観光関連の事業についても同様に地元に売却する動きが活発化していますね。

最後に今後の展望についてはいかがでしょうか。

石黒 私は2021年で60歳になりました。健康には引き続き配慮しているものの、これから先、少しずつ体力も衰えていくと思います。そこで、自分が65歳になる頃をメドに事務所を法人化し、持続可能な体制で顧問先を支援するとともに、職員たちの継続雇用を実現したいと思っています。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

愛知県のご出身で、母上は87歳にして現役の税理士だという石黒先生は、専修大学在学時に計修会(公認会計士試験研究室)に所属し、大学のサポートを受けながらまずは公認会計士を目指したといいます。ところが、大学4年生の時に膵臓炎を発症し、「長時間座って勉強することができなくなり、試験勉強を諦めた」そうです。その後、先生は故郷に戻り、父上が役員を務める繊維関係の会社に10年近く勤務。さらに父上が独立したのを機に、母上の会計事務所に入所し、実務経験を積んでいきました。そして、その間に大学院に進学して科目免除を受け、税理士資格を取得。2001年に奥様の出身地である石垣島で税理士登録を果たしたそうです。

石黒達也税理士事務所

所在地
沖縄県石垣市登野城62-4 プラステラス1F
TEL
0980-82-0038
設立
2001年
職員数
7名

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