志を同じくする二人で税理士法人を設立

お二人はもともと別々の会計事務所を経営されていたそうですが、どういったいきさつでこの税理士法人を設立するに至ったのでしょうか。

草野 恒史代表社員（以下、敬称略）　弥永先生とはもともと「青志会」という長崎の若手税理士の集まりで知己を得ていました。そして、青志会が主催するイベントなどで、弥永先生の誠実な人柄や仕事ぶりを目の当たりにするにつれて、この人となら一緒に素晴らしい事務所を作ることができるのではないかと思ったのです。

そう思われた背景にはどのような事情があったのでしょうか。

草野　年を重ねるにつれて、万が一、自分に何かあった時に、顧問先や職員を路頭に迷わせてしまうかもしれないと感じるようになったのが大きかったです。そして、思い立ったが吉日とばかりに弥永先生の事務所を訪ね、「一緒に税理士法人を設立しませんか」と口説き始めたのです。

弥永先生は当時、どのような状況だったのでしょうか。

弥永 努代表社員（以下、敬称略）　私は独立した時期が草野先生に比べてやや遅かったこともあり、当時は法人化のことなど全く念頭にありませんでした。青志会のメンバーや前職時代にお付き合いのあった皆さんから顧問先を紹介いただいたり、セミナー講師の仕事をご依頼いただいたりして、何とか事務所経営もやっていけそうだなと感じ始めていた矢先のことだったので、正直、少し驚きましたね。それに、もう少し自分の力でどこまでやれるのかチャレンジしてみたいという気持ちもありましたし、個人事務所ならではの自由さや気ままさもそれなりに気に入っていたところもあったので、最初のうちは少々戸惑いを感じていました。しかし、あらためて顧問先や職員の将来を考えるとそう悠長にしてはいられないと思うようになり、しばらくしてお話を受けることにしたのです。

実際に一緒に税理士法人を運営するにあたって、ご苦労はありませんでしたか。

草野　もともとお互いの性格や仕事ぶりを知った仲でしたし、最初から腹を割って話すことができたので、特に大きな問題はありませんでした。何より「全てはお客様のために」という理念が一致していたので、アッという間に信頼関係を築くことができたように思います。

法人化するにあたって、何かお二人の間で取り決めなどはあったのですか。

弥永　特にそういったものはありませんでした。もちろん、事務所ごとに実務の進め方などが異なる部分があったので、その調整にはそれなりの労力を要しましたが、何より草野先生が話したように理念が一致していましたし、もともと仲が良かったので、大した問題になりませんでした。ちなみに、従来の顧問先についてはもともとの事務所の職員などが担当するようにしています。

建物2階に設けられた執務室

お二人の場合、法人化は大きくプラスに働いたというわけですね。

草野　今のところメリットしか感じていないですね。例えば、複雑な案件が舞い込んできたとしても、税理士が二人いることで、存分に知恵を出し合うことができますから。ところがどういうわけか、私たちのように血縁関係のない税理士同士が法人を立ち上げるケースは、長崎県下ではまだ少ないようです。

弥永　仕事を一緒にやってみると、お互いの個性が初めて分かることなどもあって面白かったですね。草野先生は青志会ではとにかく精力的に企画を発案したり、推進したりしていたので、顧問先支援についてもグイグイ引っ張っていくのではないかと思っていたのですが、実際には事業内容などをかなり慎重に判断した上で背中を押すタイプでした。

草野　私自身がいろんな事業や企画で失敗を重ねてきたからか、顧問先の新規事業などについては実体験に基づいたアドバイスをしたり、細かく数字をチェックしたりする傾向があるのです。一方の弥永先生は顧問先を無条件に全力で支援するタイプなのですが、時折、顧問先の熱意に負けて、かなり厳しい内容の事業でもゴーサインを出しそうになるので、その時には私がブレーキをかけたりしています。

弥永　草野先生は顧問先のことを冷静に分析した上で、ブレーキをかけてくれるので非常に助かっています。また、時によっては草野先生と一緒にその案件のリスクを洗い出し、顧問先にフィードバックすることもあります。

コロナ禍や西九州新幹線の開業などで揺れる長崎経済

顧問先にはどのような特徴があるのでしょうか。

草野　当事務所の顧問先は、青志会のメンバーや顧問先からの紹介などをベースに増えており、業種に関しては他事務所に比べて介護・福祉関係が多いように思います。また、顧問先の所在地については長崎市の郊外が多く、最近では人口が増加し続けている大村市（長崎空港の所在地）などの顧問先が増えています。

弥永　私は中小企業診断士、弁護士、不動産業、社会保険労務士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、一級建築士、行政書士、税理士、マンション管理士からなる専門家集団「出島マイスターグループ」にも所属しているのですが、そのメンバーから顧問先を紹介いただくケースもあります。

最近の長崎の景況感はどうでしょうか。

草野　三菱重工が昨年、大型船の建造から実質的に撤退したこともあり、製造業を中心にダメージを受けている印象があります。他方、今年9月23日には西九州新幹線の一部（長崎駅～武雄温泉駅）が開業することになっており、この3月には長崎駅高架下に「長崎街道かもめ市場」という商業施設が誕生するなど、駅前を中心ににぎわいが生まれ始めています。

弥永　ただ、一昨年からのコロナ禍の影響は飲食店などに多大なダメージを及ぼしているようです。また、中国などからクルーズ船が来なくなったため、インバウンドで盛り上がっていた時期に比べると中心市街地の活気が失われたような印象を受けます。

ITを活用しながら若手の採用・育成にも注力

共に力を合わせて顧問先を支援している
草野 恒史先生（左）と弥永 努先生

草野先生はミロク会計人会連合会の情報ネットワーク委員会の委員としても活動されていますが、事務所経営においてもITなどのツールは積極的に活用されているのでしょうか。

草野　OCRレシート読み込み機能など、業務に役立ちそうなMJSの機能はすぐに採用するようにしています。また、朝礼の際にはMJSのオンラインセミナーの様子などを職員にも共有し、業務の効率化を推進しています。

弥永　私は自分でも税務会計業務のシステム操作などを行っているので、MJSのコールセンターにとても助けられています。特に繁忙期で遅くまで作業をしている時には、コールセンターが24時間対応であることが安心感につながっています。

昨今、職員を採用するのが難しくなってきているという話を耳にすることがありますが、そのあたりについていかがでしょうか。

草野　実際、長崎でも採用にはかなり苦労する状況が続いています。しかし、ありがたいことに今年は1名、初めて大卒を新卒採用することができました。

弥永　現在、当事務所の税理士は私と草野先生の二人だけですので、こうした若い世代の採用にも力を入れ、一人ひとりのスキルアップをサポートしていくことで、事務所のレベルを底上げしていきたいと考えています。

今後の展望についてお聞かせください。

草野　当初から「税理士という資格を通して、地域を元気にしたい」という思いを抱いてきましたが、これからもその気持ちを大切にしながら業務に励みたいと思います。また、そのためには足元をしっかりと固めることが重要なので、明るく活力のある職場づくりに努めたいと考えています。

弥永　草野先生と同じ気持ちです。顧問先の皆さんにも、職員の皆さんにも「この事務所を選んで良かった」と思っていただけるようにしていきたいですね。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。