平時の納税指導、コロナ禍には
支援金の申請指導に無償で尽力
これまで60年以上にわたって飛騨高山地域に根差し、地元の事業者を支えてきた山下英一税理士事務所。兄弟で所長、副所長を務める山下 英一先生と公平先生は口をそろえて「企業経営は事業を通して、地域の人々に奉仕することであり、ひいては売り上げを着実に伸ばし適正な納税義務の実現を心掛けることである」とし、「適正な納税義務の実現が地元への貢献につながる」と力を込めます。お二人に税理士としてのスタンスと今後の展望などを伺いました。
飛騨高山の幅広い業種の事業者を支える
観光地として有名な飛騨高山ですが、この地域の業種や顧問先の特徴などはありますでしょうか。
山下 英一所長(以下、英一先生) 飛騨高山地域は江戸時代の面影を残す古い町並みや白川郷の合掌造りの集落などが有名で、国内外から多くの人たちが訪れる人気観光地です。観光業に関連して飲食や小売業が盛んで、日本一の森林面積を誇る当市の利点を生かした高級木製家具の製造、農業、酒蔵などが有名です。
時代の変遷に呼応するように当事務所の顧問先も業種が多彩となりました。飛騨高山地域の事業者が95%以上を占めています。長い付き合いの企業も多く、今でこそ飛騨高山地域で不動産業・建築業、ホテル・宿泊施設経営、ウェルネス事業などを幅広く手掛けるお客様も、付き合い始めた当初は個人事業主でした。それが20年以上かけて白色申告、青色申告、法人成りとステップアップされ、私どももその都度支援して参りました。
コロナ禍の苦境に税理士としてできることを
コロナ禍では顧問先かどうかに関わらず、給付金や補助金の申請支援に奔走されたそうですね。
英一先生 周知の通り、コロナ禍には国の持続化給付金や雇用調整助成金の他、都道府県や市町村がさまざまな名目で一時支援金、給付金などを打ち出しました。これは経営の危機に陥っている事業者にとって救いの一手となりますが、実際はその種類の多さ、申請条件の複雑さなど、経営者一人で手続きを進めるには難解なものでした。
そこで私たちは企業会計の専門家としてコロナ禍にどのような貢献ができるのかと考えた結果、事務所総出で先ほど挙げた助成金や新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金など、多種多様な申請サポートを無償で引き受けることにしました。コロナ禍に入った2020年から新型コロナウイルス感染症が5類に移行した2023年5月までの間、本業の傍ら顧問先以外の事業者の申請サポートも含め1000件以上の案件を支援してきたことになります。
なぜ顧問先以外にも支援範囲を広げたのでしょうか。
英一先生 理由は単純なもので、顧問先の大半を占めている飛騨高山の事業者の経営不振が続けば、巡り巡って顧問先はもちろん、私どもの事務所経営も厳しくなるという意識があったからです。これは「地元が盛り上がらないと自分たちの事業に成長はない」という先代の父の教えでもあります。
山下 公平副所長(以下、公平先生) 税理士は地域の事業者あってこその存在であり、コロナ禍に苦しむ顧問先や地元事業者を手助けし、その経営を立て直すことが巡り巡って私たち会計事務所の存続につながります。そのため、コロナ関係支援金の申請サポートを無償でかつ顧問先以外の企業にも展開することが税務、会計に関する専門家にできる地域貢献として、この場面では極めて重要でした。
税理士の使命を常に意識した顧問先支援
地域の事業者の経営支援にあたって、どのようなことを大事にされていますか。
英一先生 顧問先には「まずは事業を成長させて売り上げを伸ばしていきましょう」と伝え、その経営を下支えするよう心掛けています。私たちの名刺の裏には税理士法第一条※の文言を印刷しています。これを読めば分かりますが、私たち税理士の使命は本来、適正な納税を実現することにあります。そして適正な納税義務の実現とは、究極的には余分な税金、すなわち、加算税、延滞税などを支払わないことであると考えています。経営支援で大切なことは、金融支援も含め、いかに適正・適法な決算書を作成するかということに尽きると考えています。
※税理士法第一条…税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする
公平先生 企業が成長していくには、経営者が地域貢献や社会貢献を考えていることも大事です。例えば、私が監査役を務めているある企業は、地元の小中学校に毎年100万円以上の寄付を行っています。これは節税や会社の利益を考えてというよりも、純粋に地域への貢献をしたいという考えから取り組まれているそうです。こうした地域貢献の姿勢は結果として同社の知名度や信用力の向上、ひいては取引増や雇用の確保にもつながっているのだと思います。私たちも事業者や住民の皆様への適正な税務支援を通じて、飛騨高山への貢献をなしていきたいと意識しています。
税務DXなどにも積極的に取り組む
税務支援に関連して最新の技術やシステムの導入を重視されています。特にペーパーレス化や税務DXの推進にはいち早く取り組んできたそうですね。
英一先生 私は父の事務所に加わった1980年代前半から「これからはコンピュータで税務にあたる時代が来る」と確信し、いち早くMJS最初期の製品である新財務計算システム「MSー1」やオンライン方式の端末機「MJS800」などを導入し、 業務効率化に取り組んできました。
2004年にはeーTax(国税電子申告・納税システム)が全国で始まったわけですが、その翌年、当事務所ではまず、個人の確定申告を全て電子申告に切り替えました。次に、11月決算法人から、MJSのシステムを活用し順次電子申告に切り替えていきました。1年後には全ての法人も電子申告で提出することとなりました。当時はまだ名古屋国税局管内でも電子申告の事例が少数でしたが、早期に電子申告に移行したことにより、かなりの業務の効率化ができたと思います。新しいシステムはとにかくまず試すよう心掛けており、MJSのクラウド型業務管理サービス「Edge Tracker」もリリース間もない頃から取り入れています。
新しい仕組みを取り入れようとすると「これまで通りでいい」「急に切り替えると混乱してしまう」といった声が上がるのですが、今まで手作業でやってきたことをシステムで自動化できるのですから、長い目で見れば確実に省力化、効率化につながります。導入の都度、「まずはやるだけやってみよう」と職員を説得してきた甲斐もあり、今では繁忙期でも残業する職員はほぼおらず、通年で完全週休2日を維持できています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
英一先生 まずは今現在、税務・経営支援を行っている顧問先をこれまで通りしっかりと支えていくことが第一。と同時に、持続可能な事務所経営のためには事業承継についてもそろそろ準備を始めたいと思っています。事業承継とは、事務所を地域に必要な「インフラ」として、いかに残していくかということだと思います。今後も地域に貢献できるよう、次世代を担う人材の育成にまい進していきたいと思っています。
公平先生 当事務所は職員に恵まれており、長く在籍されている方がほとんどです。新卒採用も毎年実施しており、業界未経験の若手の教育も徹底しています。今後も居心地が良く、成長し続けられる職場環境を提供していきたいと考えています。
これからのますますのご発展を期待しています。
History & Story税理士までのあゆみ
山下英一先生、公平先生
英一先生、公平先生のお父様は長らく税務署に勤めた後、高度経済成長の最中で高山市にぞくぞくと事業者が増えていく動向に着目し、「これから税務ニーズが広がる」と予見。1960年に市内で税理士として独立開業されたそうです。そして息子である英一先生と公平先生に「いずれ兄弟で税理士になってこの事務所を引っ張っていってほしい」と伝え、お二人は自然とその言葉を受け入れ、地元の事業者の税務と経営を支える役割を果たしていこうと税理士の道を歩んでいきました。英一先生は大学卒業後に24歳で、弟の公平先生は東京の会計事務所での実務経験を経て28歳でお父様の事務所に加わったそうです。現在では英一先生と公平先生の他、英一先生の長女である山下 慶子先生、そして川上 智史先生の計4人の税理士が中心となって地域の事業者や個人の税務・経営支援にあたっています。
山下英一税理士事務所
- 所在地/
- 岐阜県高山市下一之町27番地
- TEL/
- 0577-32-2680
- 設立/
- 1960年
- 職員数/
- 25名
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飛騨高山の伝統の祭りと老舗旅館、
絶品グルメ
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日本三大美祭の一つ、岐阜県高山市の「高山祭」は春の「山王祭」(日枝神社の例大祭)と秋の「八幡祭」の総称です。このうち八幡祭は旧高山城下町北半分の氏神様である櫻山八幡宮の例祭で、毎年10月9・10日に執り行われます。この祭りの目玉は、八幡宮の境内と表参道に引きそろえられる絢爛豪華(けんらんごうか)な屋台11台。午後に行われる「屋台曳き廻し」では、4台の屋台が八幡宮参道北の町内を順行します。また、裃姿(かみしもすがた)の警固(けいご)など伝統衣装を身にまとった数百名の「祭り行列」、獅子舞なども見ものです。夜には各屋台がそれぞれ約100個の提灯を灯す「宵祭」が行われ、例年20万人近くの観光客が訪れています。
祭りの華ともいえる「屋台」の起源は、1718年頃に遡るといわれます。櫻山八幡宮の谷田 吉暢宮司によると「氏子が住む各地域の中に、『組』(屋台組)と呼ばれる数軒の家同士のコミュニティがあり、先祖代々、互いに密な関係を持ちながら組の屋台を守り続けている」といいます。これらの屋台の中には、明治8年の大火で焼失した「失われた屋台」があり、同神社の氏子である山下 英一先生が属する組の屋台はまさにその一つ、「文政台」に当たります。現在、文政台の屋台組は志良車と呼ばれる台車を曳いて祭礼に参加していますが、文政台には燃えずに残された一部の部品(幕と車輪)が現存しており、毎年、「当番会所」という御神霊を招来・奉祀(ほうし)する場所に陳列されます。昭和に描かれた想像図では、文政台の屋根の造形は丸みを帯びた唐破風(からはふ)で、赤毛の猩々(しょうじょう)の人形が飾られています。「屋台」は屋台組の先祖代々の思いとともに、祭りのなかで受け継がれているのです。
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JR高山駅から車で約7分、市内随一の純和風旅館が飛騨亭花扇です。温かく重厚感のある館内は全てが畳敷きで、神代欅(じんだいけやき)※がいたるところに使われるなど、木のぬくもりに包まれた癒し空間となっています。天然温泉「神代の湯」はとろみのある美容液のような泉質が自慢で、飛騨高山の温泉旅館の中でも数少ない自家源泉です。食事は最高級の飛騨牛、山の幸、富山湾から直送の新鮮な海の幸を中心にした京風会席を堪能できます。また、花扇では昔ながらの旅館のおもてなしを大切にしており、お出迎えからお見送りまで、同じ仲居さんが担当してくれるのも魅力です。
※約1000~2000年もの間、腐らずに土や川の中に埋まって、地中の成分などの作用によって変色したケヤキのこと
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JAひだグループが運営する「飛騨牛焼肉 味蔵天国」では、JAひだ管内の肉牛畜産農家が育てた飛騨牛の中から、最も高級なA5等級のみを厳選し提供しています。定番人気の焼肉セット「味蔵盛り」は飛騨牛ロースカット・上カルビ・上ロース・角切り・スライス(2~3名分)で1万2078円(税込)。柔らかい肉質と口の中でとろける食感、脂身の甘さ、芳醇(ほうじゅん)な味わいを堪能できます。